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異世界転生したら第21王子だったけど、許嫁も侍女も姫も俺に夢中で嫉妬の嵐 モテすぎて部屋に引きこもってます  作者: マーたん


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潜入任務

前回までの王子は?

― 潜入任務:冒険者パーティーに潜り込む


夜明け前の霧が立ちこめるルストリア

王城を離れた俺――第21王子レオンは、身分を偽り「レオン・アーク」として冒険者ギルドの扉を叩いた。

目的はただ一つ。

王国を揺るがす密売組織《黒蛇こくじゃ》の動きを探るため、彼らに接触しているという冒険者パーティーに潜入することだった。


ギルドのカウンターには、鋭い目をした受付嬢が立っていた。

「……職業は?」

「剣士。前衛希望だ」

「ふぅん、腕は立つようね。……あんた、どこかで――」

受付嬢の目が細くなったが、俺は笑って肩をすくめた。

「ただの流れの剣士さ」

そう言って見せた剣の柄には、かつて王族しか知らぬ紋章が刻まれていた。

だが、彼女はそれを見抜くことなく書類を差し出した。


――潜入成功だ。


ギルドの片隅で俺を待っていたのは、四人の冒険者。

リーダーの戦士ガルド、弓使いのニナ、魔法士のトール、そして獣人族の少女リィナ。

いずれも歴戦の強者だが、どこかに“裏”を抱えている気配がした。


「新入りか。名前は?」

「レオンだ」

「ふん、軽そうな奴だな。まあいい、命は自分で守れ」

ガルドがそう吐き捨て、パーティーは初任務へ向かった。


目的地は《死の谷》と呼ばれる魔獣地帯。

本来は低ランク冒険者には許可されぬ危険区域だ。

だが《黒蛇》の密売ルートがそこにあると聞き、俺は内心の緊張を隠して剣を握り締めた。


森を抜ける途中、ニナが俺に近づいた。

「ねぇ……あんた、ただの剣士じゃないでしょ?」

「どういう意味だ?」

「歩き方。足音を消してる。訓練された兵士のそれよ」

……やはり鋭い。

「昔、傭兵団にいたんだ」

「ふぅん、そう……」

ニナは意味深な笑みを残し、弓を構えて先へ進んだ。


夜、焚き火の前でリィナが歌を口ずさんでいた。

それは、王都の古い子守唄――俺の母がよく口にしていた歌だった。

思わず手が止まる。

「その歌……どこで?」

「え? 小さいころ、奴隷市で聞いたの。変かな?」

俺の胸に、冷たい衝撃が走った。

――奴隷市、そして子守唄。

まさか彼女が、《黒蛇》の人身売買の生き残りか?


翌朝、谷に入ると魔獣の群れが待っていた。

腐肉を纏う狼たち、飛び交う黒翼のコウモリ。

仲間たちは次々に剣と魔法を放ち、血飛沫が舞う。

俺も剣を抜き放ち、斬撃を放った瞬間――

魔獣の背に、黒蛇の紋章が浮かび上がった。


「……やはりここにいたか」


叫ぶガルド。

「レオン! お前、知ってたのか!」

「話はあとだ! 今は生き延びろ!」

剣と魔力が交錯する中、地の底から不気味な笑い声が響いた。

「ようこそ、《黒蛇》の巣へ……王子レオン」


その名を呼ぶ声に、仲間たちが凍りついた。

――潜入は、すでに見抜かれていたのだ。


― 裏切りの刃、燃える死の谷


谷を包む炎の柱が、夜空を赤く染めた。

焦げた草の匂い、焼ける血の香り、耳の奥を震わせる魔獣の断末魔。

剣を握る手が熱い。

それでも、俺――レオンは前へ出た。


「全員、退避だ! 谷が崩れる!」

叫んだ瞬間、背後で悲鳴が上がる。

振り返ると、ガルドが胸を押さえて崩れ落ちた。

胸には――黒い刃。


「が、ガルドッ!」

ニナが駆け寄る。しかしその背後に、冷たい光が走った。

トールの魔導杖だ。

「悪いな、ニナ。俺たち、最初から《黒蛇》の依頼で動いてたんだよ」


その言葉に、空気が一変した。

ニナの表情から血の気が引き、リィナが恐怖に震える。

トールの口元に浮かんだのは、狂気の笑みだった。


「王子がギルドに潜り込んだと聞いてな……報酬は金貨十万枚と昇格だ。なぁ、簡単な仕事だろ?」

「裏切り者……!」

俺は剣を構えた。

「お前たちはただの駒にすぎない。《黒蛇》はそんな甘い相手じゃない」


だがトールは耳を貸さず、魔法陣を展開した。

地面に光が走り、無数の黒蛇が這い出してくる。

魔力の気配が重なり、谷が揺れた。


「リィナ、下がれ!」

「でも、あなた一人じゃ――!」

「いいから行け!」

怒鳴り声と同時に、俺は地面を蹴った。

トールの杖を切り払い、胸に一撃を叩き込む。

だがその瞬間、黒蛇が足元に絡みついた。


「ぐっ……!」

「ハハハッ、王子様もここで終わりか!」

トールの嘲笑が響く。


――その時。


光の刃が夜を裂いた。

燃え立つ炎の中から現れたのは、ニナだった。

「誰が……誰が仲間を売るものか!」

弓から放たれた光矢が、トールの胸を貫く。

炎に包まれ、彼は崩れ落ちた。


静寂。

燃え残った木々の間で、リィナが震える声で言った。

「……まだ、終わってない」

その目は涙に濡れていたが、奥に強い光を宿していた。


谷の中央、崩れた岩の奥で、黒い石碑が姿を現す。

そこには古い呪文が刻まれていた。

――《再生の儀》

それは死者を蘇らせる禁呪。


「これが、《黒蛇》の狙い……」

俺は石碑に近づこうとした。

だが、足元から再び闇が蠢いた。


「ようやく会えたな、王子」

闇の中から現れたのは、フードを被った女。

その手には血に濡れた短剣、背後には燃え落ちる魔獣の死骸。

――彼女の目は、かつて俺を導いた「女神リシェル」と同じ色をしていた。


「まさか……お前が、《黒蛇》の首領なのか?」

女は微笑む。

「首領? いいえ、私はただ“選ばれた者”よ。

あなたの運命を――もう一度、焼き直す者。」


そう言って、彼女は手を差し伸べた。

「来なさい、レオン。あなたの国も、愛も、すべてはこの谷の炎に還る」


谷の風が唸りを上げる。

俺は剣を握り直した。

――逃げられない。

ここが、運命の分岐点だ。


― 炎に囚われた女神


燃え盛る谷の奥、炎の壁を背に女神リシェルは静かに佇んでいた。

その姿は神々しくも、どこか人のように儚かった。

黒衣の裾が風に舞い、燃え尽きた魔獣の亡骸が灰となって散る。


「リシェル……お前は一体、何者なんだ」

俺――レオンの声は、熱と恐怖に震えていた。

幼いころ、夢の中で出会った“女神”。

戦のたびに導いてくれた存在。

しかし今、彼女の手は血に染まり、背後には“黒蛇”の旗が立っている。


「私は……かつて、この世界の“守護者”だった」

リシェルは呟いた。

「だが人は祈りを忘れ、神々を追放した。

あなたの先祖もその一人。

だから私は呪ったのよ――王家の血を、永遠の試練に閉じ込めて。」


「試練……それがこの“ループ”か?」

「ええ。あなたたちは、何度も生まれ、何度も滅びた。

覚えていないだけ。けれど魂は知っている。

――同じ過ちを、繰り返していることを。」


リシェルの瞳が紅く光る。

その光に映った瞬間、俺の頭の中に無数の記憶が流れ込んできた。

戦火の中で倒れる兵、裏切られる仲間、焼け落ちる王都。

そして何度も――リシェルの手に斬られる自分の姿。


「俺を……殺してきたのか……?」

「あなたが選んだ道の果てに、いつもそうなった。

私は“定め”を見届ける者だった。

けれど今回は――違う。」


リシェルは涙を一筋こぼした。

「あなたは、私を憎んでいい。

でも、私もまた……この永遠の鎖に囚われているの。」


その時、地の底から低い唸りが響いた。

崩れた岩の隙間から、巨大な黒い手が現れる。

漆黒の鎧を纏った魔神――“契約の影”が、再びこの世に蘇ろうとしていた。


「来たか……」

リシェルが顔を歪める。

「これは、私が作った呪いの具現。私の罪。」


「なら、共に倒す!」

俺は剣を構えた。

リシェルは一瞬、驚いたように目を見開いた。

「あなたはまだ、私を信じるの?」

「信じるさ。たとえお前が神でも、敵でも――この炎の中で涙を流す“人”なら。」


リシェルの頬を熱風が撫で、彼女は小さく笑った。

「……やはり、あなたは何度生まれ変わっても、そう言うのね。」


黒い魔神が咆哮し、谷の地形が崩壊する。

俺とリシェルは同時に跳び、剣と魔法の光が交錯した。

刃が闇を裂き、炎が世界を焼く。


「レオン、最後の力を貸すわ!」

リシェルが両手を掲げる。

彼女の体が光の粒となり、俺の剣に宿った。

――女神の魂が、ひとつになった。


「これが俺たちの、終わりの戦いだッ!」

剣を振り抜く。

黒い巨体が裂け、闇が爆ぜた。

大地が割れ、空が白く光る。


そして――

リシェルの声が、遠くで響いた。


「ありがとう……やっと、終わらせることができた。」


光が世界を包み、谷の炎は静かに消えた。

風が戻り、夜空には満天の星が瞬いていた。


俺は剣を突き立て、膝をつく。

そして見上げた空に、ひとつだけ残った光――

それが、リシェルの魂の輝きだった。

次回も楽しみに

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