裂かれる絆 ― 裏切りの影
「裂かれる絆 ― 裏切りの影」では、王子とリィアナの愛に女神の影が差し込みます。裏切りなのか、それとも操られているだけなのか――真実を見極める戦いが始まります。
夜の王都は不気味な静けさに包まれていた。
第二十一王子アレクシオン――俺は、城の一室でリィアナと向かい合っていた。
彼女は不安げな瞳で俺を見つめる。
「アレク……噂を聞いたわ。私が、女神に操られているって」
「気にするな。そんなもの、ただのデマだ」
俺は強く否定した。だが、心の奥底では妙な違和感を拭えなかった。
――あの日、女神官が口にした言葉。「リィアナは女神の器」
それが脳裏でこだまする。
リィアナが俺に近づく。
「信じて……私は、あなたの妻になると誓ったの」
その声は震えていた。俺は彼女を抱き寄せ、震えを静めようとした。
だがその時。
窓の外から赤い光が差し込んだ。
次の瞬間、部屋の空気が凍りつき、低い囁きが響いた。
――「お前はまだ知らない。すべては女神の掌の上」
俺は即座に剣を抜いた。
窓から現れたのは、漆黒の外套を纏った影。仮面を被り、その顔は見えない。
「誰だ!」
「裏切り者に名を明かす必要はない。王子よ、お前の許嫁はすでに“女神の眷属”だ」
影の声が突き刺さる。俺は怒りで剣を振り下ろそうとしたが、その瞬間――リィアナが俺の腕を掴んだ。
「待って!」
彼女の瞳が、見慣れぬ金色に輝いていた。
「リィアナ……?」
俺の背筋が冷たくなる。
影は嗤った。
「見ろ、これが真実だ。お前の最愛の許嫁は、すでに女神に選ばれた器。心も、体も」
リィアナは必死に首を振る。
「違う! 私は……私はアレクのものよ! でも、体が勝手に……!」
涙を流しながら、彼女は女神の力に抗っていた。
俺はその姿に胸が裂かれる思いだった。
彼女を信じたい。だが、この光景はまぎれもない“裏切り”のように見える。
影が低く囁く。
「さあ、選べ。愛か、王国か。お前が彼女を斬れば、王国は救われるだろう」
リィアナが泣き叫ぶ。
「お願い……信じて! 私を……斬らないで!」
剣を握る俺の手は震えていた。
かつてモテなかった前世の俺が、ようやく掴んだたった一人の愛。
しかし今、その絆は女神の罠によって切り裂かれようとしている。
――裂かれる絆。
裏切りの影。
その夜、俺たちの関係は取り返しのつかない深い亀裂を刻まれることになった。
次回も楽しみに




