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異世界転生したら第21王子だったけど、許嫁も侍女も姫も俺に夢中で嫉妬の嵐 モテすぎて部屋に引きこもってます  作者: マーたん


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未来が見える少女

未来を見る力を持つ少女。しかし、その力ゆえに売られ、商品として扱われてしまいます。彼女が選び取った先は、本当に救いか、それとも新たな苦難の始まりなのか――。

市の片隅にて


 夕暮れの市はざわめいていた。荷馬車が軋み、商人の声が飛び交い、干された肉や布切れが並ぶ。

 その人混みの片隅に、ひとりの少女が立たされていた。


 年は十にも満たぬほど。髪はぼさぼさで、痩せた手足は縄で縛られている。だが瞳だけは異様な光を宿していた。琥珀色のその瞳は、人々の顔を見渡すたびに微かに震える。――彼女は未来を視ることができた。


 買い手が近づくたびに、彼女の視界には断片が差し込む。

 ある男の手に渡れば、彼女は馬車にくくられ、遠い北の鉱山で命を落とす。

 別の女に買われれば、館の奥で鎖につながれ、飢えに苦しむ未来が見える。

 どの未来も惨く、救いはなかった。


 「ほら見てみろ、この娘は“当てられる”ぞ!」

 売り主の男が笑いながら声を張り上げた。

 「客の顔を見るだけで明日の天気を言い当て、馬の具合も当てやがる。神のお告げ持ちだ! さぁ、誰が買う!」


 人々のざわめきが広がる。迷信深い者は興味を示し、理知的な者は顔をしかめた。

 少女は目を閉じ、ただ心を無にした。視たくなくても、未来の破片は勝手に脳裏へ押し寄せる。


 ――そのとき、一人の若い騎士が人混みをかき分けて現れた。

 鋼の鎧は煤け、剣の柄には無数の傷。戦いに身を置いてきた者の匂いがした。


 彼が近づいた瞬間、少女の瞳はまた揺れた。

 未来が見える。彼に買われれば――暗闇の中で剣を振るう自分の姿。その傍らには、血に濡れた彼の影。

 その結末が生なのか死なのか、まだ輪郭はぼやけている。けれど、ただひとつ確かに感じた。

 ――「生き延びる可能性」が、そこにあった。


 少女の喉からかすれた声が漏れた。

 「……この人……」


 騎士は足を止め、彼女を見下ろした。その瞳には同情ではなく、試すような冷たさが宿っている。

 売り主がにやりと笑った。

 「おや、お嬢ちゃんが自ら選んだぞ。運命の導きってやつだな」


 少女の未来は、この瞬間に決まろうとしていた。


第一節 運命の市場


 夏の陽光が砂塵に揺らめき、露店の屋根布が赤や青にきらめいていた。

 その片隅に、鉄の枠で囲まれた一角がある。そこには「不思議な力を持つ娘」と看板が掲げられ、群衆の好奇の視線が注がれていた。


 縄で繋がれた少女はまだ十三ほど。灰色の瞳は異様に澄み、見る者を不安にさせる。彼女は――未来を見る力を持っていた。

 「おい、次はこの小娘だ。明日の災厄を当てられるって話だぞ!」

 売り主が声を張ると、ざわめきが広がる。


 そのとき、市場全体が不意に静まり返った。

 群衆がざわめきの源を振り返る。そこに歩み入ったのは、第二十一代王子、アレクシオンだった。


 長衣は深紅に金糸を走らせ、肩には王家の象徴である黒鷲の紋章が輝いている。若き王子はまだ十九歳。だが彼が立つだけで、空気が一瞬で張り詰める。


 売り主が慌ててひざまずき、声を震わせた。

 「お、おお……第二十一代王子様! これはただの娘でございます。殿下のお耳に入れるほどの者では――」


 「黙れ」

 王子の声は冷たく澄み、市場の喧騒を一瞬で呑み込んだ。

 彼は群衆をかき分け、少女の前に立つ。


 少女はその瞳を見た瞬間、未来を視てしまった。

 ――炎に包まれる王都。倒れ伏す兵。

 そして、血に濡れた王冠を戴く彼の姿。


 少女は恐怖に喉を震わせた。

 「……あなたは、血に飲まれる……」


 周囲はざわめく。「呪いだ」「不敬だ」と囁きが飛ぶ。

 だが王子は笑わなかった。冷笑も、怒りも浮かべなかった。

 ただ静かに、その小さな身体を見下ろした。


 「血に飲まれるなら、なおさら必要だ。未来を視る者が」


 王子は懐から金の印章を取り出し、売り主に突きつけた。

 「この娘は私が買う。値は問わぬ。だが一度でも手出しをすれば、王家への反逆と見なす」


 売り主は蒼ざめてうなずき、慌てて縄を解いた。

 解放された少女の手首には赤い痕が残っていた。その手を王子は自らの外套で包み込み、低く囁いた。


 「名は?」

 「……リィナ」

 「よい名だ。リィナ。今日からお前は、第二十一代王子アレクシオンの庇護下に入る」


 群衆は息を呑んだ。

 少女の未来は、この瞬間大きく変わった。



第二節 揺らぐ未来


 その夜、王子の馬車で王宮へと向かう途中。

 リィナは窓の外を見ながら、再び未来を視た。


 ――王宮の暗い回廊。囁きあう貴族たち。毒を注ぐ杯。

 そして王子が倒れる姿。


 「……殿下、私は災いを呼びます」

 リィナは涙をこらえて言った。

 「どうして私を買ったのですか」


 王子はしばし黙し、夜空を見上げて答えた。

 「第二十一代王子など、名ばかりの重荷だ。周囲は私を駒としか思わぬ。だが……お前の目には、真実が映っている」

 「真実は血を流します」

 「ならば、その血を無駄にせぬために使おう」


 リィナは彼の横顔を見つめた。

 その瞳には恐怖も迷いもなかった。あるのはただ、王子として生きる覚悟。

 ――もしかしたら、この人なら。

 未来を変えられるのかもしれない。

「21代目の王子」という新しい要素を取り入れ、物語を再構築しました。彼が少女を買うことで、単なる「商品」であった彼女の運命は大きく変わります。

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