串焼きなるもの
わーい、久しぶり(?)の投稿です!
「こちらが、串焼きですよ」
「串焼き?初めて聞きましたわ。どのようにして食べるのか、教えてくださいますか?」
一本、串焼きなるものを受け取り、セドリックを見上げる。
セドリックは、柔らかく微笑んで、はいと頷いてくれた。
「ああ、でもここでは零してしまいますね。どこか、座れるところを探しましょう」
と、そのときに、アレンがひそひそとわたしに耳打ちした。
その情報に、流石アレンねと頬をほころばせながらも、セドリックのエスコートしてくれていた腕を軽くつつく。令嬢らしからぬ行動だったせいか、セドリックはやや顔をしかめており、少し焦ってしまった。
その拍子に、つるるっとお肉に絡められていたタレが滑り、わたしの可愛らしいワンピースにつき————そうになるところを、アレンがさっとハンカチでそれを防いでくれる。またもや、アレンに助けてもらったわたしは、ふふっと笑ってしまった。
「ありがとう、アレン。流石ね」
うふふ、と笑いながらも、アレンを褒める。褒められた張本人は、いつもの笑顔を崩すことなく礼をした。
「とんでもございません。使用人として当然のことをしたまででございますので」
「あら、そう?」
ふふっ、とまたもや顔をほころばせつつ、アレンにお礼を伝える。それからわたしは、セドリックに向き直った。
「シューティエ様。串焼きを食べられるところをあらかじめ、アレンが探しておいてくれたようですわ」
わたしが淑女らしい笑顔で伝えると、セドリックもいつもの笑顔を浮かべた。
「そうですか。では、ありがたくそこでいただきましょうか?アレン殿、ありがとうございます」
「いえ、主のためにしたことですから当然です」
「アレン殿のような忠義ものに仕えられている公爵閣下はやはり、素敵なおかたのようだ。これからも、ぜひお話させていただきたいのですが」
セドリックのなぜだか自嘲めいた呟きに、わたしは首を傾げつつも答えを返した。
「あら、お父様でしたらシューティエ様のこと、既にお気に入りのようですけれど?———あっ、お気に入りというのはふさわしい表現ではありませんでしたわ。申し訳ありません」
わたしがそういうと、セドリックは目を見開いた。それから、ふんわりと微笑みをつくる。
「そうでしょうか。そういっていただけると嬉しいですね」
「少なくとも、わたくしはシューティエ様のことを頼りに思っていますわ」
にっこりと笑って正直な思いを伝える。セドリックは、目を大きく見開いて、それからははっと破顔した。
「そうですか・・・。嬉しいです。どうしよう、俺めっちゃ嬉しいです」
その声は、嬉しさで飽和しており、本当に嬉しく思ってくれているのだなと分かる。また、普段の一人称は『私』だからか、急に『俺』と使われ、心臓が大きく跳ね上がった。
頬が熱くなっていくのを誤摩化すように、少し俯く。
「あ、すみません!串焼き、食べましょうか」
先ほどまでの緩んだ顔とは違い、いつもの余裕がある笑顔に戻っていることを何故か悔しいと思いながら、はいとおとなしく頷いた。
「あ、アレンが良い場所を探してくれていたみたいなんです。そこへよろしければ、参りませんか・・・?」
セドリックは、「なるほど、さっきのはソレか・・・」
「?すみません、なんておっしゃいましたか?」
「いえ、何でもありません。では、ありがたくそこへ行かせてほしいです」
アレンが心得たように、先頭に出る。わたしとセドリックはついていった。そこは、パラソルがいくつか広げられており、人びとの憩いの場となっているようだ。
そこを、わたしたちについてきてくれていた護衛集団が綺麗に消毒してくれていた。
「ありがとう・・・。こんな消毒なんてしなくても良かったのに・・・」
「旦那様のご命令ですから。さあ、どうぞお座りください」
「ありがとう」
そっとアレンが引いてくれた椅子に腰掛ける。セドリックの方も、別の護衛が椅子を引いていた。
「では、いただきましょうか。これは貴族令嬢にはやや難易度の高い食べ物かもしれませんが・・・」
やや逡巡したようにそういいながらも、セドリックがぱくりと串焼きにかぶりつく。
「えっ・・・」
「こうやっていただきます。平民たちの間では普通ですね」
「そ、そうなのですか」
なるほど、平民たちにカトラリーをそろえる余裕があるとも限らない。それならば、何やら硬い植物でつくられた串でひと纏めにし、かぶりついてしまった方が良いようだ。確かに、衛生面でも、それほどカトラリーに劣るとも思われないわ、とわたしは一人で納得し、思いきってかぶりつく。
「んっ・・・!」
肉は、あらかじめ柔らかくしてあったのか、それともタレにつけ込んでおくなどをしたのかは分からないが、思ったよりも柔らかかった。ほろりと崩れるまではいかないものの、噛み切れないという硬さでは決してない。
そして、タレの味が絶品だった。ガーリックがいれてあるのか、またそこが美味しい。
「ふっ、お気に召したようですね」
セドリックの柔らかい微笑みとともに、見られていたのだと気づき、恥ずかしくなる。
「とっても美味しいですわ。貴族が食べるものにはない美味しさがありますね」
「ええ、そうですね。これが好きだから、とわざわざ毎週お忍びできている貴人もいるくらいですから」
「まあ・・・」
公爵家出身の彼が、貴人と言うくらいなのだから、身分は王族に近い人だろう。そう簡単にお忍びはできるものではないはずだが、その貴人はかなり下町がお気に召しているらしい。
話を聞きながら、食べるのを再開する。わたしが全て食べ終えたのを確認すると、串をわたしから受け取る。
「あっ、ありがとう存じます」
「美味しかったですか?」
「はい!とっても、美味しかったですわ。ありがとう存じます、教えていただいて」
「いえ。僕も例の貴人から教えていただいたんですよ」
「そうでしたか」
なるほどね、と頷きつつわたしとセドリックは、また歩き始めた。ちなみに、串はしばらく歩いたら、捨てる場所があるらしい。
「あと、町と言えば・・・。そうだな、最近流行っているのはアクセサリーだそうですが、いってみますか?お店」
「いってみたいです!」
ちなみに、『例の貴人』も後々登場してもらいたいな、という気持ちがあるので。。。
お楽しみにしていてください!(登場しなかったらゴメンなさい・・・!!)
いつも、ありがとうございます。
他にも作品を投稿しておりますので、よろしければそちらもご覧ください!
作者が喜びまくります笑




