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番外編 8:クラリス視点

にゃああっ、すみません!

一週間も遅れてしまった……。

待ってくださった方、本当にありがとうございます!!!

「クラリス、ただいま」


 今日も今日とて格好いいセドリックが帰ってきた。わたしは大きなお腹を抱えて、よいしょとお出迎え。


「お帰りなさいませ! セドリック」

「ああ、ただいま。そう言えば、先週話していたローズマリーのことだけれど」

「何か、分かったのですか?」


 少し緊張で、表情がこわばる。もし、ローズマリーに何か悪いことがあったらどうしよう。


 そんなわたしの不安を見抜いたのか、セドリックが朗らかに笑った。


「レオンとお見合いをしたそうだよ。今は婚約を前提にした交流をしているそうだ」

「まぁ! レオン・フィストロイ様ですか!?」

「ああ。彼との顔合わせでどうやら話が弾んだようで、二人とも婚約をしたいと言っているそうだ」


 良かった、とわたしはほっと一息ついた。


「レオン・フィストロイ様は、セドリックの部下なのですよね?」

「まあそう言うことになるな」

「どのような方なのでしょうか?」


 わたしが妹を心配していることが伝わったのだろう、セドリックはそれはまた夕食の場でとわたしを嗜めた。ついつい気持ちが逸ってしまっているわたしを宥めてくれたのだろうと思うと、申し訳なさが募る。本当に、セドリックにはお世話になってばかりだ。


「すみません……。バート、夕餉の支度をしてちょうだい」

「かしこまりました」


 いつぞやのお茶利きの際に、美味しいお茶を淹れることができるゴッドハンドを持っているという噂が広められた老執事がしわを刻んで微笑む。


「それでは即刻、ご用意致します」

「よろしくね。セドリック、わたくしは先に食堂にいっておりますね」

「ああ。すぐに向かう」


 わたしの額にキスを落としたセドリックは、柔らかな微笑みを浮かべつつ、着替えに自室に向かった。その後ろ姿を少しだけ見送ってから、わたしも食堂に向かった。


♢♢♢


 メインの子羊のローストがお腹におさまった頃。セドリックが話を切り出した。


「レオンのことだが」


 セドリックと夕餉に夢中になっていたわたしは、はっと居住まいを正した。


「はい」

「彼は先日も聞いたと思うが、隣国の侯爵令息という身分を持っている。しかも、近頃そのご実家が偉業を成し遂げたかなにかで公爵家になるようだ」

「まあ! そんなことがありますのね……。この国ではかなり難しいことではありませんか?」


 クラーツ王国では身分はかなり重んじられる。もちろん、学園など勉学といった目的がある場合はその限りではないが、それでもかなり身分は大切なものとして扱われるものだ。だが、その中でも公爵家と侯爵家以下の家の間には大きな隔たりがある。公爵家は王家の遠縁といった存在なので、王位継承権を持つ人も公爵家には存在するからだ。


 だから、侯爵家が公爵家に昇格するというのはかなり異例のことのはずだと思うのだけれど……とわたしは首を傾げた。


「ああ、我が国ではそうだな。しかし、隣国では実力主義らしい。家督を継ぐのは必ずしも、長子である必要は無いそうだ。性別も関係ないらしい」

「そんなことがあるのですね!? わたくしも、次期王妃として色々学んできたつもりではありましたけれど、そのようなこと初めて聞きましたわ」

「最近取り入れた文化というのもあるだろうね。ここ百年ほどでそういう革新をしようとしてきた人たちがいたそうだから」

「そうなのですね。クラーツ王国ではあまりそういう文化は取り入れられませんね。貴族たちの権威が揺らげば、王政も危うくなるからでしょうけれど」


 後半はポツリと呟くと、セドリックはそうだね、と苦笑した。


「身分というのは時に厄介なものだし、しがらみも多くなる。だが、時にして役に立つものでもあるから」

「そうですわね。でも、身分が悪用されないことを祈るばかりですわ」

「私もだよ。……ああ、話がだいぶずれてしまった。レオンのことだよね、彼はとても真面目な隊員だよ。周りの奴らからの評判も良いし、面倒見も良い。まだ若いから、落ち着きが無いのではという指摘もあるかもしれないが、レオンは不思議な落ち着きを持った奴でね。話し方から見ると、少しちゃらけた男に見えるかもしれないが、かなり客観的に周りを見ている節があるよ」


 セドリックの話し振りをみると、かなりレオンを信頼しているようだった。珍しく熱弁している。


(この様子なら、ローズマリーが嫁いでも大丈夫そうね)


「それなら心配ありませんわね。ローズマリーもレオン様もお互いを気に入っているとのことでしたし、上手くいくでしょう」

「ああ。それから、義兄上に頼んでローズマリーもこちらにたまには来るよう、伝言しておいたよ」

「ありがとうございます。何から何まで頼んでしまって済みません」


 わたしがそう言って謝ると、セドリックは微笑んだ。


「気にしないでほしい。それに、クラリスの頼みだから。頼ってもらえて本当に嬉しいよ。愛してる」


 急な愛の言葉に、微かに熱を持つ頬。わたしは微笑みを浮かべて、言葉を返した。


「わたくしもですわ……セドリック」


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