番外編 3 :ローズマリー視点
短いです。
「殿下、わたくし、ここに来るのがとっても楽しいですわ!」
メイドと騎士がそれぞれ二人ずつ。その部屋は、応接室であり、丁寧にいけられた花が豪華に飾ってある。小さいけれど、豪奢なシャンデリア付きだ。本来ならば、貴賓などをもてなすために使われる部屋。
そこには、王太子と社交界の美姫姉妹の一人であるローズマリーがいた。
ローズマリーは、にっこりとぶりっ子の振りをして、王太子に甘えた。
「僕もだよ、ローズマリー。愛しのローズマリー」
そう言って、ローズマリーは隣に座るように指示される。
はぁい、と甘えた声を出して、おとなしく座ると、王太子が距離をつめてきた。うえ、気持ち悪いという気持ちを呑み込んで、にっこりと愛想のいい笑顔を浮かべる。
しれっと腰に手を回そうとした王太子の手をぴしゃっとたたき、
「あら、殿下。わたくし、姉のことを傷つけたくありませんの・・・! お許しくださいませ」
少し潤んだおめめで見上げれば、王太子はでれでれと鼻の下を伸ばし、頷いた。
「明日が、本番だね。ローズマリー」
「ええ。楽しみですわ。貴方とお姉様が婚約破棄してくださるのが」
「ははっ、可愛いことを言ってくれるね、ローズマリー」
ローズマリーは、儚げな笑顔を浮かべてみせた。
そもそもだが、ローズマリーは全て嘘は言っていない。ここにきて、王城のシェフがつくってくれたデザートを食べるのは大好きだし、姉のことを傷つけたくないというのも真実。そして、王太子と姉が婚約破棄をしてくれるのもとっても楽しみだ。楽しみすぎて、神様に全身全霊のお礼を申し上げたいくらいに。
にこにこと、嬉しげに微笑むローズマリーがまさかそのようなことを考えているとも思わず、王太子はでれでれとしていたのだった。
♢♢♢
「あなたとの婚約を破棄させていただく。クラリス・ファルーネ・ヴィシェロエ公爵令嬢」
ローズマリーが王太子を呼んできて、王太子が宣言すると、姉はえっとショックを受けているのが分かった。
その顔を見て、ものすごく申し訳なくなる。ごめんなさい、お姉様。けれど大丈夫。この後、もっと素敵でお姉様のことを愛して、守り抜いてくれる人が現れるから。
だから、今だけお姉様を傷つけることを許してください。お願いします。
ローズマリーは、演技ではなく、本当に泣いてしまうのをとめられないまま、姉の幸せを祈った。




