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帰ってきた日常

♢♢♢


 そうした日々をカントリーハウスで送りながら、わたしは穏やかな気持ちを蓄えていった。時折、セドリックが花束などを届けてくれる。そのプレゼントなども、心を穏やかにしていくのを手伝ってくれていた。


 いつも添えられているメッセージカードを、たまに取り出しては読み返す。


 そうすると、とても嬉しいことが書いてあり、ほっと気持ちが緩んでくれるのだ。



「こちらへいらしたばかりのお嬢様は、どこか気が張りつめているような雰囲気でしたが・・・。随分と柔らかくリラックスした表情をされるようになりましたね」


 そう言って、柔和な表情でお茶を淹れてくれているのは、ヴィクトリーだ。壁の傍に立っているアマンダも嬉しそうに頷いてくれていた。


「そう、かしら。けれど、確かにヴィクトリーの言う通りかも知れないわ。王都では、常に気を緩めてはいけないって思っていたもの」

「それはさぞかし、大変でしたでしょうね。お嬢様のことですから、殊更に完璧でいなければと思っていそうですし」


 アマンダの冷静な分析に、周りで控えてくれていた侍女たちだ。


「そう、ね。流石、アマンダ。わたくしのことがよく分かっているわね」


 ふふっ、と笑いながらそう言うと、そうでしょうかとアマンダは少し照れたように微笑んだ。


「でも、あと二日でお帰りだなんてお早いですね。あっという間でしたよ」


 そう言ってくれたのは、クリーヌ。わたしがあと二日で帰るとヴィクトリーが伝えたらしく、明日と明後日は用事があるからとわざわざ来てくれたのだ。


「ええ、楽しすぎてあっという間だったわ。クリーヌ先生にも来ていただいて・・・。本当に嬉しいわ、ありがとう」

「いいえ。お嬢様は何時迄経っても、わたくしたちの大切なお嬢様ですからね」

「ありがとう・・・!」


 感極まったわたしが瞳をうるうるさせていると、あらまあとアマンダが笑ってハンカチを出してくれた。


「また、王都にお戻りになっても、時々いらしてくださいね」

「ええ。まだ社交シーズンは続くから、もう少しあちらにいなければいけないけれど・・・。わたくしは本音を言えば、あちらの家よりもこちらの邸の方が好きなの。使用人たちはみんな優しくしてくれるから、王都の子たちも大好きよ。だけれど、あちらには社交界用のサロンしかないから・・・」


 ヴィクトリーが優しく微笑み、それでしたら、と言った。


「こちらのサロンから見えるお花をいくつか摘んで、時折送って差し上げます。楽しみにしていてくださいませ」

「あら、良いの? 嬉しい、ありがとう! 流石ヴィクトリーね」

「とんでもないことでございます」


 そんな実に穏やかで優雅な時間を過ごして、残り二日を楽しく過ごしたわたしは、タウンハウスへ戻ることになった。


♢♢♢


「では、お気をつけて行ってらっしゃいませ」


 使用人たちがそっと丁寧に頭を下げてくれる。その姿を嬉しく思いながら見た。


「ありがとう! 行ってくるわね! また、戻ってくるから!」

「お待ち致しております」


 ヴィクトリーの優しい声に押し出され、馬車が出発する。


(あぁ、終わってしまった)


 彼らの姿が見えなくなるまで、馬車から手を振っていたわたしは、見えなくなるとすぐに悲嘆のため息をついた。あまりの悲しさに、涙が出てきそうなほどだ。


 そんなこんなで、わたしは王都の邸に戻った。


「お帰りなさい! どうだったのかしら、カントリーハウスは?」


 戻ってきたわたしを真っ先に迎えてくれたのは、母だった。嬉しそうな表情で迎えてくれる母を見て、わたしも笑顔になる。


「ただ今帰りました。とても穏やかな日々を送れました。一生、あちらで暮らしたいほど」

「まあ。そう、ではもう少しあちらにいても良かったのよ」

「いえ、セドリック様からお手紙もいくつか届いておりましたし。流石に、帰ってこないわけには参りませんから」


 そう言うと、母は驚いたように目をみはった。


「あら、あちらにお手紙が? まあまあ、やるわね、シューティエ様も! 良かったじゃないの」

「———はい。あ、けれどわたくしは今暫くは社交は控えさせていただいても構いませんか?」

「ええ、もちろんよ。こちらの邸の警備ももっと万全なものにしたわ。邸にシューティエ様をお迎えする位が良いでしょう」

「ありがとうございます」


 なるほど、だから旅の途中でもかなりの護衛がぞろぞろとついていたのか。父母の思いやりにほっと心が温かくなる。


 母と一旦分かれ、自室に戻ると、清潔なままで整えられていた。


「まあ、綺麗なままね」


 ぽつりと呟くと、後ろでばたばたと足音がした。反射的に振り返ると、懐かしい侍女とメイドの顔がある。


「お嬢様! お帰りなさいませ!」

「みんな・・・。ただいま帰りました」

「お帰りなさいませっ! すぐに湯浴みになさいますか?」

「ええ。そうするわ」

「かしこまりました」


 いつになく、嬉しそうな表情を見ると、ああ帰ってきたのねという実感が湧いてきた。




皆さま、お待たせ致しました。

いつも読んでくださり、本当に感謝です。ありがとうございます。


次回の更新は、週の中盤あたりで出来そうな気もしますが・・・どうだろう。

日曜日までにはしたいなと思っております。また、覗いてくださると嬉しいです。

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