ククアヴィダ楽団 結成!!
♢♢♢
「ただいま。十三時からクリーヌ先生がいらっしゃるわよね? それまでに、少し防音室に入っておきたいわ」
そういいながら、玄関に入り、いつもよりも何故か嬉しげな表情をしたヴィクトリーに帽子と本を渡した。
「ええ、ええ、お帰りなさいませ。クリーヌが参りましたよ。防音室へはまだ、入っておりませんけれど」
その声に、はっとして振り返った。死角になっていたところに、クリーヌがいた。
特徴的な、心が落ち着く声。夫に似た、柔和な眼差しと微笑み。金色の髪の毛に、そっと細められた淡い若草色の瞳。
「————っ、クリーヌ先生」
「お久しぶりですね、クラリス様」
「クリーヌ先生、お久しぶりでございますわ。本当に・・・」
思わず感激してしまい、涙がこぼれてきそうになるわたしを、まあまあ! と嬉しそうに見つめた後。
「昔の口調で結構です。堅苦しいのは苦手ですからね」
「クリーヌ先生! お久しぶりね」
「ええ、本当に。主人とも、昨日久しぶりに会ったそうですね」
「ええ、ヴィクトリーとも全く会えていなかったのよ」
わたしの報告に、彼女はそうですか、そうですかと納得した声を零す。
「早速、防音室に参りますか?」
「ええ! もちろん!」
♢♢♢
「あら、相変わらず、お嬢様はファロネ、お上手ですね」
一通り、懐かしい防音室で弾いてみせると、クリーヌは嬉しそうに笑った。
「懐かしいです。クラリス様がこんなに大きゅうなられて、しかもこんなにお上手にファロネをお弾きになるなんて・・・。わたくしは本当に嬉しい限りですよ」
「クリーヌ先生・・・。嬉しいわ、そんな風に言ってもらえて」
「ええ、ええ。ファロネはクラリス様のお得意の楽器でしたからね」
わたしは、大きく頷いた。
「そうだった・・・。最近は全く弾く機会がなくなってしまって。すごく寂しかったの」
「そうでしたか。また、思い出して弾いていただけて、楽器たちも喜んでいると思いますわ」
クリーヌが目尻を和らげ、そっと微笑んでくれた。そのことがとても嬉しくて、わたしも微笑むと、クリーヌに提案した。
「クリーヌ先生、合奏したいわ。確か、アマンダも楽器が弾けたはずだし、ヴィクトリーは弾けるでしょう? あとは、料理長もハーモニカをたしなんでいたはずよ」
「ヴィクトリーはそうですけれど、アマンダとダーロンもでしたか。それでは呼びましょう。楽しそうですわね」
ころころと明るく笑って快諾してくれるクリーヌが大好きだ。
「え? 合奏ですか? ええ、喜んで! わたくしは、フィトールを弾けます」と、アマンダ。
「合奏? お嬢様がよろしいのでしたら、わたくしも喜んで。そう大したものでもありませんが、アンジェロが好きですね」と柔和な笑みのヴィクトリー。
「合奏!? わ、私がですか?! しがない料理長ですが、良ければもちろん、参加させてください。ああ、もちろん、ハーモニカでお願いします」と驚いた様子の料理長、ダーロン。
こうして、四人が快諾してくれたおかげで、わたしたちは一時、ククアヴィダ楽団を結成した。
「何の曲がよろしいかしらね?」
「お嬢様の一番お得意な曲が良いんじゃないですか?」
「わたくしたちは、お嬢様に合わせますからね」
「じ、自信はありませんが、私も」
そう四人に振られ、そっと考えてみる。
クリーヌとよく練習したのは、ファロネの夜に、だ。だけれど、それだとファロネ専用の曲なので、他の楽器との合奏にはふさわしくない。ならば、————
「月夜の精霊、なんてどうかしら?」
わたしの提案に、皆は顔を見合わせると、笑顔で頷いてくれた。
月夜の精霊ならば、良く合奏に用いられる曲だし、易しすぎず、難しすぎない曲でもあるため、ぴったりだろうと思ったのだ。
「良いんじゃないでしょうか? 流石、クラリス様、いいセンスをお持ちですね」
クリーヌが朗らかに笑ってくれる。ヴィクトリーたちもうんうん、と頷いてくれているのがまた、こそばゆい。
すると、そっ、とダーロンが手をあげた。
「あの、他の使用人たちにもお披露目をしたらどうでしょうか? せっかくですし、ククアヴィダ楽団の初公演といきませんか?」
わたしは思わず笑ってしまった。確かに、良いかも知れない。
「良いわね! 他の皆が仕事がひと段落したら、談話室に集まるように言っておいてくれないかしら、ヴィクトリー」
「かしこまりました」
執事の本業なので、ヴィクトリーにお願いし、彼が部屋を出て行くのを見送りながらわたしは皆に微笑みかけた。
「少し、練習しましょう!」
「「はいっ!」」
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明日は更新できるか分からないです。。。もう一つの作品を更新したいなと思っていまして・・・。
土曜日には、更新しますねっ!(しなかったらすみません・・・・・・・・・)




