美しい空と穏やかな心
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「おはようございます」
朝、起きていくと、優しい笑みを浮かべた使用人たちが迎えてくれた。
領地は、王都よりも少し寒い。こちらの方が、一歩早く冬に入っているようだった。
「寒いわね・・・。皆は平気?」
「わたくしたちは平気でございます。お嬢様の方が心配ですわ。わたくしたちは、こちらで慣れておりますからね」
いつも、まるで第二の母のように接してくれる、優しい侍女のアマンダ。微笑みは、さながら聖母のように慈愛に満ちている。
「そう・・・。わたくしも大丈夫よ。ショール、出しておいてくれたでしょう?」
「ええ、お使いになってくださっているようで、よろしゅうございました」
柔らかくそういうと、さあ食堂へおいでなさいませと導いてくれる。周りの侍女たちも、嬉しさが隠せないようで笑みを浮かべっぱなしだ。
「お嬢様とお会いするのは本当に久方ぶりのことですから」
「ええ、本当に。お嬢様にお会いできて、皆嬉しいんですよ」
侍女やメイドが満面の笑みで教えてくれた。
「そうよね。わたくしが王妃教育とかで忙しくしていたから・・・」
そう呟くと、アマンダが優しい笑顔でわたしに向かっていった。
「お嬢様。確かに、お嬢様は王妃教育でこちらに来られなかった時期がありました。けれど、その分、お嬢様の所作はとても洗練されて、更に素敵な女性になったと思いますよ。複雑な思いを抱かれるお気持ちも、とても良く分かりますけれど、そこはプラスの面を見ましょう?」
アマンダの言葉に、わたしは思わず口元をほころばせた。
「アマンダらしいわ。そうね、ありがとう」
「いいえ。あ、今日はクリーヌさんがいらっしゃるそうですよ」
「クリーヌ先生、いらしてくださるのね! 嬉しいわ。ヴィクトリーが提案してくれたの」
「そうでしたか。クリーヌさんも、お嬢様とお会いになるのは久しぶりですから、きっと喜ぶでしょうね」
アマンダが微笑む。わたしも、ええそうだと嬉しいわと笑った。
「おはようございます、お嬢様」
今日も今日とて、びしっと執事の服を着こなし、一筋の乱れも無く整えられたシルバーヘアに光を反射させながら、柔和な笑みを浮かべたヴィクトリーが挨拶をしてくれた。わたしも、微笑み、おはようと返す。
「今日は、クリーヌ先生がきてくださるのよね?」
「はい。クリーヌは、十三時頃、参ります」
「そうなのね。心待ちにしているわ」
そういうと、とびっきりの笑顔を浮かべる。その反応に、周りの使用人たちがほっとしたのが分かった。
「それはようございました。さあ、お嬢様。クリーヌに元気な姿を見せて上げてくださいませ、まずは朝食を召し上がりましょう」
「ええ、そうね。ありがとう」
「お嬢様は、サンドイッチがお好きでしたよね?」
そう話しかけてきたのは、清潔なシェフの格好をしている、料理長だった。
「ええ! 良く覚えていたわね!」
「はは、お嬢様のことでしたら、何でも。ここは領地の邸ですし、そう堅苦しいのはお好きではないかと思って、サンドイッチをつくらせてもらいました。お嬢様のお好きなフルーツサンドもありますよ」
「まあ、ほんとう!? 嬉しいわ、ありがとう!」
「喜んでいただけて良かったです。ここでは、いっときマナーなどは忘れてお召し上がりくださいね」
そう茶目っ気たっぷりに言われ、わたしは声を上げて笑ってしまった。周りの人たちも笑っているのを聞いて、ああここは温かいわ、と心がみたされていくのが分かった。
♢♢♢
料理長のサンドイッチはとても美味しくて、懐かしくて、本当に嬉しくて、涙が出そうになるほどだった。
美味しい、美味しいと何度も呟きながら食べるわたしを見て、料理長やヴィクトリー、アマンダを初めとする使用人たちは温かく見守ってくれた。優しい笑みを浮かべて、さりげなく水を注ぎ、カーテンを開けて日差しを取り入れてくれたりしながら。
そうして朝食をミルクティーでしめたわたしは、一度散歩に出かけることにした。
このカントリーハウスは、領地の中心街である街からは、少し離れた場所にある。
自然がすぐ近くにあるため、散歩にはうってつけの場所だ。
「お嬢様、わたくしがお伴致します」
ヴィクトリーがそういってくれたけれど、丁重に断り、一人で出てきた。それでも、護衛はついてきてくれているだろうけれど。
そう思うと、ふふっと思わず笑みがこぼれる。
(ああ、わたしはなんて愛されているのかしら)
そう思うと、幸せが満ちあふれてくる。心が豊かになる。
いつもならば、空を見上げても、ああ青いわと思うだけだ。しかし、心が満ちて、豊かになるだけで違う。
(今日も青くって、綺麗な空ね。けれど、昨日とはまた違う景色を見せてくれる。ああ、なんてありがたくって美しいのかしら)
そうぼんやりと空を眺めるだけで、半日を過ごしてしまった。
空の下、木陰があるベンチに腰掛け、持ってきていた本を読む。木陰が上手い具合に日の光を遮ってくれて、読みやすかった。
気づけば、もう十二時近くだった。
「大変。クリーヌ先生が十三時にはいらっしゃると言っていたわね。急いで戻らないと」
一人呟き、本を丁寧に閉じると、邸に帰った。
いつも読んでくださる皆さま! 待っていてくださる皆さま!! 本当にありがとうございます!!!!
感謝しかありませんっ!
明日は更新できるか微妙です。。。
木曜日は必ずしたい・・・!できるか分かりませんが、待っていてくださると嬉しいし、ありがたいし、ありがとうございますっ!笑笑笑




