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贈り物と手紙

♢♢♢


 セドリックが贈ってくれたという贈り物は、絵だった。


「こちらになります」


 ヴィクトリーがわたしの部屋に運び込まれた荷物を、開けるように指示する。使用人たちが丁寧に開けてくれた。


 現れたのは、額縁付きの絵画。


 小さいけれど、淡い色遣いで丁寧に描かれた、紫色のスイートピーという花。透明感があり、されど、どこか芯を感じさせる絵だった。


 それには、手紙も添えられていた。


『お久しぶりです。

カントリーハウスでのご静養はいかがお過ごしでしょうか。

こちらでは、色々と社交の場に招かれるため、忙しく過ごしています。

貴女と想いが通じたということが、とてつもなく嬉しいです。

どうか、また次会う日には、元気なお姿が見れますように      』



 わたしは、その場で軽々しく開いたことを後悔した。恥ずかしくて、仕方なかったからだ。


「ゔ、ヴィクトリー。少し、一人にして・・・」

「おやおや。かしこまりました」


 執事が先に届いた手紙などは、チェックするはずなので、もう読まれているだろう。けれど、耐えられなかった。


 全員が出て行き、ぱたんと静かに扉がしまったのを確認して、ひゃああっとしゃがみ込んだ。


「は、は、恥ずかしい・・・!」


 呟き、手紙を抱え込んで俯く。誰もいないのは分かっていたけれど、どうしても恥ずかしかった。


(そうだった・・・。わたし、彼に————っ!)


 この前の馬車でのやり取りを思い出し、完全に赤面する。


 なぜなら、—————。


(好き、って言ったのよね、わたし・・・!)


 一旦落ち着こう! と深呼吸する。それでも、恥ずかしすぎて潤んだ瞳はそのままだし、手は羞恥と言い表せない感情で、震えている。


 もう一度、最初から読み返した。


「うっ、はっ・・・!」


 一人で悶え、悶えきったところで気持ちを落ち着かせた。


 手紙はそっ、と自分の机にしまい、しっかりと鍵をかけた。流石に使用人たちに開けられるとは思わないけれど、念のため。それに、彼の手紙を誰かに見られたくはなかったからだ。


 それよりも、とわたしは右往左往した。


(ヴィクトリーには、手紙を読まれたのよね・・・。どうしよう、彼にす、す、好きって伝えてしまったこと、ばれてるわ、どうしよう!)


 うー、と悩んでいると、ちょうど扉がノックされた。


「誰かしら?」


 せめて声だけでも毅然とした態度を示す。恐らく、わたしが動揺しているのは、バレバレだろうけれど。


「ヴィクトリーでございます。そろそろ、落ち着かれましたか? お嬢様」


 その言葉で、わたしがそわそわとし、顔を赤くしていたことがばれていたと悟った。また、赤くなりそうだったけれど、澄まし顔で微笑んでみせた。


「もう入って良いわよ」

「かしこまりました。失礼致しますね」


 ヴィクトリーは、入ってくるとニッコリと笑い、


「若い方はよろしいですね」


 と平然と言ってのけた。


「んもうっ! 早く、この絵を飾って頂戴」

「かしこまりました。お前たち、この絵を飾りなさい」


 その言葉に、ぞろぞろと複数人の使用人たちが入ってくる。


 ヴィクトリーは指示をてきぱき、と下すと、わたしに向かって微笑みかけた。


「お嬢様、今からここは作業致しますから、サロンに向かれたら如何でしょう。それとも、防音室に向かわれますか?」

「防音室・・・。懐かしいわね。タウンハウスにもあるのだけれど、やはり備えている楽器が少ないの」

「左様でございましたか。それでしたら、防音室に? 全て、調律してございますが」


 わたしは少し考えると、首を振った。サロンで休もう。今日は、長旅など色々あって疲れがたまっている。


「サロンへ行くわ。防音室は、明日行こうかしら」

「かしこまりました。では、明日久しぶりにクリーヌに会われては如何ですか。呼びますが?」


 懐かしい名前ね、と思わず顔をほころばせる。クリーヌとは、わたしに音楽のいろはを教えてくれた、偉大な音楽の先生だ。また、ヴィクトリーの妻でもある。


「そうね。久しぶりに会いたいわ。クリーヌ先生の都合が合えば、ぜひお会いしたいわと伝えて」

「かしこまりました。クリーヌも喜ぶでしょう」


 ヴィクトリーは嬉しそうに目を細めると、わたしをサロンに案内し、自ら紅茶を入れてくれた。その夜は、セドリックが贈ってくれた絵が見守ってくれている気がして、ぐっすりと眠れたのだった。

呼んでくださる皆さまに、本当に感謝です!

いつも、ありがとうございますっ!!

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