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ざわつく心とその行方 〜一生の愛を、あなたに〜

♢♢♢


「もう、大丈夫だろうか?」


 わたしの前に座った彼が、そっと尋ねてくれる。


 今は、セドリックが手配してくれた馬車の中だ。彼の上着は、まだかけられたまま。ドレスだけでは心許なくて、そっと前をかきあわせる。


「はい・・・。みっともないところをお見せしました・・・」

「いや、そんなことは無い。貴女は気丈に振る舞っていた。怖かっただろうに、よく頑張ったな」


 その褒め言葉に、また涙がこぼれそうになる。だが、ぐっと堪えた。


「————その、何かされていないか?」

「大丈夫です」


 端的に答えたわたしに、ほっとしたように息をはいたセドリック。


 その優しさに、申し訳ない気持ちになる。わたしがもっと、周りを警戒していれば。


「どうしてここが?」

「ああ、アレン殿から聞いた」

「アレン、から?」


 彼は、使用人という立場なので、流石に会場には入れないから、使用人の控え室で待っておいてと頼んだはずだ。


「ああ。不審な荷馬車がある、と伝えてくれてな。それで、化粧室の中にメイドに入ってもらったんだが、誰もいないと言われた。そこで、おかしいと言うことに気づき、すぐにアレン殿と連携を取って、騎士団で追ったんだ」

「そうでしたか・・・。ありがとう存じました。ご迷惑をおかけしてしまって・・・」

「いや、とんでもない。それよりも、貴女が無事で良かった」


 セドリックはそう微笑んでくれる。わたしは、ありがとうともう一度頭を下げ、お礼を告げたのだった。


「これから、王都に戻る。すぐにヴィシェロエ公爵家へ送るが、それで構わないだろうか?」

「はい、もちろんです。お願い致します」


 頭を下げ、お願いすると、セドリックが身じろぎした。


「そう何度も頭を下げられると、何だか悪いことをしているみたいで気がひける・・・」

「えっ、すみません!」


 焦って顔を上げると、少し決まりが悪そうなセドリックがいた。


 その表情に、思わず吹き出してしまう。


「でも、本当にありがとうございます。わたし、助けられなかったら、隣国の平民に嫁がなければいけないところでした」


 少し、お茶目に軽く言ってみせると、セドリックが眉を寄せた。


「本当に、許せない。アメリア・マルダン。彼女は、公爵令嬢を誘拐した罪などで、投獄されることになった」


 セドリックの思ったよりも、低い声にびくっとする。


 彼は、そこまで言うと、俯いた。そして、わたしに懇願するように言う。


「貴女も! どうか、そんな自分のことを軽く言わないでほしい。貴女がもしそうなっていたら、俺は一生自分を許せない」


 その言葉に、はっとした。


 口調に滲む真剣さや、声音から、自分がどれだけ彼を心配させてしまったのかを知る。


「———ごめんなさい。わたし、わたし、これからは気をつけます」


 わたしの謝罪に、セドリックはびくっと顔を上げた。何故か、彼が傷ついてしまったかのような顔になっている。


「そう、言わせたかったわけでは・・・! すまない、だが、知っておいてほしい。俺が、どれほど貴女を愛しているかを」


 その言葉に、思わずどきっとする。それと同時に、驚愕した。


「それ、本気だった、んですか?」

「は?」


 セドリックの目が少し剣呑なものになった気がしたが、なぜだろうか。


「本気じゃなかったら、言わないでしょう」

「え、あの。わたくしを助けるために、わざと演技をしてくださっていたのかも知れないではないですか・・・」

「そんなわけないだろう」


 はあっ、とセドリックはため息をついた。


「貴女は、俺がそんな男だと思っていたんですね」

「えっ、あの」

「俺は、演技なんかで愛していると気軽に言いません。貴女だから、言うんです。ずっと前から、好きでした」

「えっ、その」

「これからも、一生貴女を愛し続けると誓います」


 唐突な愛の告白に、どきどきと先ほどまでとは違う心臓の高鳴りを覚える。


 は、はっ、はぅっ、と意味を成さない言葉が口からこぼれ、頬が火照っていく。両手で頬を押さえるわたしを見て、彼はそっと目尻を下げ、柔らかな視線を注いだ。


「俺のことは、嫌いだろうか?」

「えっ!? いえ、そんなことは、むしろ!」

「むしろ?」


 彼の嬉しそうな表情に、しまった口が滑ってしまったと気づく。


 だが、気づいたところでもう遅い。


 彼の目は嬉しそうに細められているのだから。


「す、好きですよ」


 わたしの告白に、彼はわたしをぎゅっと抱きしめた。


「ありがとう」

「へ・・・?」


「貴女は、押し付けられていると感じているのではないかと、ずっと不安だったんだ」


 その言葉に、思わず驚く。まさか、彼がそんな風に感じていたなんて。


「ち、違います。わたしは、多分ですけれど、最初から貴方のことを好ましく思っていました・・・よ」


 ようやく言えた自分の気持ちに、わたしは頬をほころばせた。


 きっと、今抱きしめてくれている彼も、同じような顔をしている。


 見れないのに、何故かそう確信を抱くわたしだった。



———ざわつく心とその行方———    Fin

本編はまだまだ、続きます!!


何だかようやく思いが通じあった二人に、ほっとしてます。。。

皆さまに見守っていただけて、本当に嬉しいです。ありがとうございます!

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