ざわつく心とその行方 〜クラリスの支援〜
更新、お待たせ致しました〜!!
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「まあ、たくさんの人だわ」
少しうんざりとした風に、前に並んでいたご夫人がそっと息をつく。さーっ、と通り過ぎていった涼風が心地よい。
「やはり、受付で人員が足りていないようですね。いくら貴族の人口は限られているとはいえ、かなりの人が集まっているみたいだしな」
セドリックがそう呟く。その瞳は、冷静で騎士団長としてふさわしい威厳をたたえたものだった。
「そうですね。では、我が家から少し人を派遣しましょうか」
わたしも呟きで返すと、彼は少し驚いたように目をみはった。
「え? 人を派遣? しかし、そのようなことをして平気なのですか?」
「ああ、両親のことを懸念していらっしゃいますか? それでしたら、ご心配は不要ですわ。わたくし専属の部下を派遣致しますから」
「部下? ですが、今から人を呼ぶのは大変ですよ?」
どんどんと疑問を連ねていくセドリックに、面白くなってしまい、ふふっと微笑む。
「大丈夫です。数人でも、助かるはずですわ」
「は?」
わたしはそっ、と安心してもらうように微笑むと、近くに控えているはずの部下の名前を呼んだ。
「アレン」
名前を聞いたセドリックが何故か固まる。
わたしの正面にアレンが現れた。
「は、お呼びでしょうか? お嬢様」
「アレン、悪いのだけれどね、王宮の方に説明して、他の数人と受付に当たってもらえるかしら? わたくしの護衛も派遣して良いわ。少し手間取っているようなの」
「かしこまりました。では、私が護衛に残ります」
「あら、アレンも行ってほしかったのだけれど。でも、ありがとう」
「いえ。では、人当たりのいいルシャに行かせますね」
アレンの采配に、頷いて許可を与えた。それから、セドリックの方をみた。
「これで少しは進みが早くなると思います」
わたしが微笑むと、セドリックはあっけにとられた顔をしている。
「そ、そうですか。ありがとうございます」
「いえ。けれど、敬語に戻ってしまっていますよ」
くすっ、と笑いながら指摘すると、セドリックはそうだったと微笑む。それから、少し首を傾げてわたしに疑問を呈した。
「だが、人を派遣して良かったのですか? 国王陛下のお気に障るようなことには・・・」
言葉を濁した彼に、わたしは社交界の薔薇たる笑みで断言した。
「なりません。ご安心ください。わたくしは、単なる公爵令嬢とはいえ、国王陛下の親戚に当たります。少し位の我がままが許される位には、王太子殿下にはひどいことをされていますし」
わたしの言葉に、そうでしたね・・・とセドリックが遠い目をする。
「あれはひどかった」
「あら、でもセドリック様が助けてくださいましたわ。わたくしは随分と救われましたもの」
セドリックが優しい表情をわたしに向けた。良かった、と呟いた小さな声はぎりぎりわたしに届く。
「しかし、あれは本当は・・・」
セドリックが何か言いかけたとき、列から外れて所から、誰か王宮の使用人のお仕着せを着た女性が恭しく近づいてきた。
「ヴィシェロエ公爵令嬢、シューティエ公爵令息でいらっしゃいますね? お待たせ致しました。大変申し訳ございません。こちらへどうぞ」
「はい、そうですけれど。わたくしたちよりも先に並んでいる方は大勢いらっしゃいますから。先にお通ししてくださいませ」
にっこりと微笑み、社交界の薔薇にふさわしい立ち居振る舞いで促す。女官は、ぽっと頬を赤く染め、分かりました・・・と消え入りそうな声で頷いてくれた。
「ありがとう」
「いえ。こちらこそ、ありがとう存じます。ヴィシェロエ公爵令嬢、シューティエ公爵令息のお気遣いに心より、感謝致します」
女官は、そっと静かに礼をしてから、前に戻っていった。
その後ろ姿を見送っていると、セドリックがわたしに向き直った。何故か彼の銀色の瞳は、熱を孕んでいて、どこかうっとりとした輝きを放っているかのようにも見える。
彼が放つ色気に、わたしは不覚にもどきっ、としてしまった。
「やはり、貴女はお優しいかただ。本当に、誰にでも親切でいらっしゃる」
セドリックの声音は、至って真剣なもので、どくどくと鼓動の音がうるさくなる。頬が熱を持つ。
「そ、そうでしょうか。わたくしは、自分がするべきことをしているだけですわ。貴族として、人びとに尽くす。それが、責務でございますから」
できる限り、自然な様を装って微笑む。流石にこの状況で、譲らない人はそういないだろう。
「でも、簡単にできることではないですよ」
「そう、かしら。そういっていただけたら嬉しいですわ」
思わず、頬をほころばせる。冗談や世辞ぬきで、嬉しかった。気持ちが温かいもので満ちてゆく。
そうしている間にも、列は少しずつ進んでいた。遂に、わたしとセドリックの番になる。
「お待たせ致しました、お嬢様。そして、シューティエ公爵令息様」
わたしとセドリックの受付をしてくれているのは、わたしの直属の部下のような存在、ルシャだ。
柔らかいハシバミ色の髪の毛と、たれ目がちの優しげな若草色の瞳の彼女は、中身も優しく、人当たりも良い。そのため、アレンも彼女を派遣していた。
「そんなに待っていないわ、ルシャ。どうかしら? 皆さま、やはりご不満が?」
「いえ、それほどでも無かったように思います。ヴィシェロエ公爵家より、人員を派遣させておりますとお伝えしたら、皆さま、頬を緩めて入っていかれたように見受けられました」
ルシャの報告に、そっと息をつく。良かった。
「なるほど。ヴィシェロエ公爵家は、人の心を不思議と惹き付けてしまう魅力を持っている公爵家でしたね」
「まあ・・・。ご存知でしたか。我が家は主に、外交を担っておりますので」
にっこりと微笑み、セドリックの納得したような言葉に返す。その間にも、ルシャは王宮の人と協力して、受付を進めてくれていた。
「お待たせ致しました。お嬢様、シューティエ公爵令息様。どうぞ、中へお入りくださいませ」
「ありがとう、ルシャ」
「お気をつけて、行ってらっしゃいませ」
ルシャは、微笑みを浮かべて送り出してくれた。
「すごい・・・。もう受付は終わったのか?」
「我が家の使用人になる者は、すべからく、教育を施しておりますので」
「はあ・・・。すごいな。我が家も、武力は長けていると自負しているが・・・」
「シューティエ公爵家には、この国の防衛を担っていただいておりますから。それぞれの長短を合わせて、この国を支えていく」
前を向き、社交界の薔薇にふさわしい笑みをたたえながら、そっとささやく。
セドリックが隣で、目をみはったような気がした。
「そう、か。そうですね」
「ふふ、どうなさったのですか?」
「いえ・・・。私も、改めて覚悟を決めなければならないなと思いまして」
彼の決意の色に満ちた声に、わたしもそっとお腹に力を入れる。背筋は伸ばして、優雅に、魅力的に。人を惹き付けるように。
久しぶりに投稿するの、ドキドキですね笑
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他作品ではありますが、こちらも現在連載中です。よろしければ、そちらもご覧ください!
二度目の人生 〜失くした記憶と運命のキス(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾〜 タイトル変更しようか検討中ですが、よろしくお願いします。
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他の方で、ぽんと押したらそのページに飛ぶような、やり方をしたいのですが・・・
方法が分からない・・・ので、教えていただけると嬉しいです。




