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ライラック  作者: さだ 藤
本編
8/27

ふれられたくない


 残念ながら待ち遠しかった休日は早々に幕を閉じ、週が明けた月曜日。

今日も一人電車に揺られ、見るともなしに流れる景色を視界に収めながら、学校へと進んでいく。


 教室につけば大半のクラスメイトが既に登校していたけれど、特に親しい奴のいない教室で交わす挨拶なんて俺にはなくて。

 止められる事も、なおかつ声をかけられることもなく。

 まっすぐと自分の席へと向かい、腰をおろして外を見る。


 例え親友にこのクラスの友達ができようと、イコールそれは俺の友達とはならなくて。

 クラスメイトに友達の友達、ポジションの奴ができたというだけだった。


 そしてその当事者はカースト上位に位置していて、今も友達に囲まれ何やら笑っている。


 半端につながりができたせいか、今日はやけにその声が響いて聞こえ。

 一人教室の片隅で窓の外を見ている自分との違いが、勝手に明確に突き付けられる。


 その目立つ場所は羨ましくはないけれど、その明るさを少しは見習うべきかと思いながら、目を閉じて。

 担任が来るのを待った。 


+++


 帰りのホームルームも終わり散り散りになるクラスメイトを横目に、今日も無難に一日を終えたと、出していた荷物を鞄にしまい込んでいると


「はぎわらー」

「…………」


 ふいに呼びかけられ、何の用だとただ視線だけを返す。

 なんだか今日は返事をするのも億劫だ。


 朝から一方的に浴びてしまった明るさに、一人勝手に体力すら削られている事を自覚する。


「おっと、お疲れか」


 そんな俺の対応にもにこにこと笑顔を浮かべ、柔らかく返す高野は凄いが、


「……そんなとこ」

「俺お前に質問あるんだけど」

「何?」

「お前、陸上部入んねぇの?」


 軽く聞かれた一言は、俺には重くて。


「何で」


 何でそう思った、何でそんな事聞いてくる、


 不意に向けられた言葉に勝手に心がざわめく。

 俺にとっては触れられたくない話題だから。


 そっけなさを装っても、自然と含む棘。自覚して、高野から視線を逸らして席を立つ。


「神田の呼び出しってそういう事だろ」


 言われてみれば、度々と神田から呼ばれている橋渡しに使われているのは高野かと、納得もするけれど。


 返したい言葉はない。


 だけど、これ以上変に構われたくはなくて歪な口を開き


「入らない」


 きっぱりと、強めにそれだけを言い放ち、高野に背を向けて俺は教室を出て行った。


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