ふれられたくない
残念ながら待ち遠しかった休日は早々に幕を閉じ、週が明けた月曜日。
今日も一人電車に揺られ、見るともなしに流れる景色を視界に収めながら、学校へと進んでいく。
教室につけば大半のクラスメイトが既に登校していたけれど、特に親しい奴のいない教室で交わす挨拶なんて俺にはなくて。
止められる事も、なおかつ声をかけられることもなく。
まっすぐと自分の席へと向かい、腰をおろして外を見る。
例え親友にこのクラスの友達ができようと、イコールそれは俺の友達とはならなくて。
クラスメイトに友達の友達、ポジションの奴ができたというだけだった。
そしてその当事者はカースト上位に位置していて、今も友達に囲まれ何やら笑っている。
半端につながりができたせいか、今日はやけにその声が響いて聞こえ。
一人教室の片隅で窓の外を見ている自分との違いが、勝手に明確に突き付けられる。
その目立つ場所は羨ましくはないけれど、その明るさを少しは見習うべきかと思いながら、目を閉じて。
担任が来るのを待った。
+++
帰りのホームルームも終わり散り散りになるクラスメイトを横目に、今日も無難に一日を終えたと、出していた荷物を鞄にしまい込んでいると
「はぎわらー」
「…………」
ふいに呼びかけられ、何の用だとただ視線だけを返す。
なんだか今日は返事をするのも億劫だ。
朝から一方的に浴びてしまった明るさに、一人勝手に体力すら削られている事を自覚する。
「おっと、お疲れか」
そんな俺の対応にもにこにこと笑顔を浮かべ、柔らかく返す高野は凄いが、
「……そんなとこ」
「俺お前に質問あるんだけど」
「何?」
「お前、陸上部入んねぇの?」
軽く聞かれた一言は、俺には重くて。
「何で」
何でそう思った、何でそんな事聞いてくる、
不意に向けられた言葉に勝手に心がざわめく。
俺にとっては触れられたくない話題だから。
そっけなさを装っても、自然と含む棘。自覚して、高野から視線を逸らして席を立つ。
「神田の呼び出しってそういう事だろ」
言われてみれば、度々と神田から呼ばれている橋渡しに使われているのは高野かと、納得もするけれど。
返したい言葉はない。
だけど、これ以上変に構われたくはなくて歪な口を開き
「入らない」
きっぱりと、強めにそれだけを言い放ち、高野に背を向けて俺は教室を出て行った。




