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ライラック  作者: さだ 藤
本編
6/27

いとも簡単に

翔......かける


 なんやかんやと、俺とも話はしたものの終始母に取られていた気さえする達哉の訪問は、


「これ今ハマってる飴なの。良かったら食べてみて」

「わー、こんなに良いんですか?」

「布教よ、布教。みっちゃんにも美味しかったら会いに来てって、伝えてね」

「承りました」

「久しぶりにみっちゃんにも会いたいわ」


 そろそろお暇します、お邪魔しましたー。という達哉に、あ、そういえばちょっと待って! と言った母から始まったそのやり取りは玄関で繰り広げられた後、母と達哉両者共に名残惜し気に終わりを迎え。


「またきてね」

「必ず」

「利久抜きでもよ」


 本当に、と念を押していう母と本当に、と返す達哉のあまりの名残惜し気な様子に思わず口を挟んだ。


「もういっそ、メッセージ交換すればいいじゃん」


 一瞬動きが止まった二人は、やぁね、ほんととそれぞれ携帯を取り出して。

 あっという間にアドレスを交換してしまった。


「マジか」


 息子があっけにとられている内に、またねと別れた母は背を向け。これまた、またーと玄関をでる達哉に、俺はこぼすしかなかったけれど。


 一度しまった玄関が再び開いて、帰るよ、と告げてくる達哉におぅ、と返事をしながら俺も外へ出た。


++++


 当たり前に達哉を見送りに外へ出て、肩を並べ道を歩く。


「久しぶりのりみさんのシフォン、ほんとに美味しかった」

「お前が好きだろって、抹茶にしてた」

「ホワイトチョコも合ってたし」

「それは俺がお願いした」

「やりますねぇ」

「だろう? 黒糖は母さんが言ったけど」

「天才すぎ」

「マジでソレ」


 やんややんやと、食べたケーキの感想で盛り上がりつつ、角を曲がり進んでく。


「で? 学校生活はいかがですか?」

「…………」

「人見知りめ」

「うっせ」


 気心知れた友であるからして、俺の悩みなんてお見通しである。

 ソツなくこなせるお前とは違うんだよ、不貞腐れて前に向けていた視線を逸らした先に


「あ、」

「うん?」


 先ほどは違い、通じない言葉に達哉がどうしたと俺に顔を向けてきたから、視線であいつ、と目に入った人物をさして。


「クラスメイト」


 と思わずもらした訳を言う。


「おー、男前だ」

「まさしく。クラスの人気者」

「おっと、利久の苦手なタイプかな」


 好きかって言いあう俺らに、不意にこちらをみた高野と視線がかち合った。

 高野はにかっと笑うと、こちらに向かって歩いてくるではないか。


「爽やかだねぇ」

「スルーでいいのに」


 ひゅーと何やら楽し気に笑う達哉と、いっそ来るなと眉を寄せる俺。


「よっ」

「どうも、」


 気軽に手を上げ、話しかけてこれるのは尊敬にも値するけれど。

 対する俺は、こんな陽気なやつとは目も合わせられずに下を見る。

 そんな俺に構わず高野は達哉にも声をかけ、


「お友達?」

「小中の友達でして。所謂幼馴染ってやつです」


 にこにこと、それを受けた達哉は躊躇いなく言葉を交わし始めた。


 何校? やらおー、そこ友達いる。

 お名前は? マジっすか! と何やら盛り上がり始める二人は、ひとしきり話し終えてからの自己紹介。


 ……からの、


「苗字じゃなくて、名前で呼んで」

「じゃあ翔。これからよろしく」

「おー! こちらこそ」

「僕の事も達哉で。たっちゃんとかでもいいよ」

「じゃあたっちゃん」


 一足飛びの友達ムーブ。

 高野なんかは今にも肩を組みそうな程の距離感で、達哉も達哉で楽しげだ。


 何故か想定外の盛り上がりを繰り広げられ、いつ終わるのかとすら不貞腐れながら横で佇んでいた俺は、驚きすら感じてしまう。


 学校ですらなく、ただの道端で。

 数分前まで俺にとってのクラスメイトは、瞬く間に親友とも言える幼馴染の友人になっている。


 数分前まで見知らぬ人が名前で呼ぶほどの関係になった達哉に対して、片や同じ学校で、同じクラス。そこそこの時間を同じ場所で過ごしている筈の俺は未だ高野呼び。


 友達ではないのだから、当たり前と言えば当たり前ではあるけれど。

 クラスメイトではある俺よりはるかに先に、名前呼びとは。


 このコミ強共め


 内心恨めしく思いながら会話の終わりを待てば、じゃあまたな、またねと挨拶を交わし、高野は俺にも学校でと笑いかけて去っていく。


 何となく視線でその背中を追えば、


「あー、安心した」

「何が?」

「いい奴いるじゃん」


 やけに晴れた笑顔の達哉が、笑って言うけれど。


「別に高野は友達じゃないけどな」


 ジト目を隠しもせずあえて言わせてもらえば、あらあらと達哉は目を瞬き


「片思いかぁ」

「誰がだ」


 とぼけた言葉に即座に突っ込むけれど、達哉は俺を置いてそっかそっかと頷いた。


 じゃあまたと駅まで見送った達哉と別れ、ついでにコンビニに寄って行こうとぶらぶら歩く。


 歩きながら久しぶりに会えた親友を思えば、自動的にさっき会った高野の姿も思い出し。


 そういやあいつ、家この辺か?


 些細な疑問が浮かぶも、コンビニに足を踏み入れれば外とは別世界めいた涼しさを感じ。

 さして思い入れのない疑問はすぐに頭から消えていく。


みっちゃん......達哉の母

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