達哉呼びの世界線 side高野
「あ、俺飲みもん買ってくる」
「はぁ?」
「いってらー」
若干疲れた、座りたい
ぶつぶつ言っていたから三人分の空きがあるベンチを探して少し歩き、萩原を挟んで三人ようやく腰をおろしたと思った瞬間に、立ち上がったのはダレていた本人。
それもやけに元気というか、威勢よく声を放って俺らを顧みるまでもなく行った。
「ここに来る途中に自販機ありましたけどー」
「それもそこそこの数ねぇ」
「片手以上はあった」
文句めいた言葉に、萩原の幼馴染である達哉は笑う。
「利久は欲求に素直なんだよ」
「それですむのか」
「すみますねぇ。可愛いでしょ」
男相手にどうかと思うけれど、まぁ。
「可愛いな」
「ちゃんと座りはしたから」
「一瞬な」
「そう。一瞬」
こらえきれないと笑いだす様に、慣れてんだろうなと感じて
「単細胞」
思った言葉をもらしておくと、ぶっふーと肩を揺らして笑う。
「でもそこがいいよねぇ」
「なるほど? そういうご趣味ですか」
「若干?」
俺の問いかけにぷくぷくと笑いながら、浮かぶ涙を片手でぬぐってすらいる。
「え、笑い上戸?」
「どちらかと言えばだけど、こんなに面白いのは利久だけだよ」
「まぁ、確かに」
そこだけははっきりと同意できるかな。
でもそんな萩原の友達だというのだから。コイツもなかなかの者ではないかと思う訳で。
そんな風に静寂はなく、話しているとあっという間に感じる時間内。
「あ、帰ってきた」
向かった方向とは逆の、座っている方向の後ろを向いて言う達哉に、俺も振り返れば手に一つだけ持って帰ってきた萩原が見え。
「よっと」
低いベンチをまたぎ、一人分は確かに空いていた――当の本人が一瞬は座ったものだから。
俺と達哉の間に入りまるで何事もなかったかのように、缶を開け飲むさまを見て。
達哉に視線を送れば向こうもこれですよ、という意思を込めた頷きを返してくる。
「じゃぁ俺達も、」
「飲み物買ってくるわ」
一気に二人立ち上がったものだから、寂しくなったのか。
えーと零す萩原に先に行動したのはお前だろ、と返せばおとなしく見送ってくれた。
「独占欲、あっちゃったりする?」
「それも若干?」
肩を並べ、近くの自販でいいかと歩き出し。
感じた気持ちを軽く聞いてみれば、間もなく笑って返してくる達哉。
思わず俺も肩を揺らして笑った。
面白ろい奴ら。




