学校の友達 side高野
雅也......まさや
田辺......たなべ
珍しく、学校の廊下で知らない奴と笑って話している利久を見て。
相手と別れた所に、思わず声をかけてしまう。
「利久」
「何?」
「さっきの誰?」
俺の問いかけに、何だと何だときょとんとした顔をする利久。
「さっきの? 話してたやつ?」
「そう」
「雅也」
「友達?」
「うん」
まさかなという思いを孕ませ流れるように続けた問いかけに、やけにあっさりと友達と認めた利久。
思わず驚いて目を見開いてしまう。
「なんだよ、友達つくれんのかよ」
「……失礼な」
むっと、機嫌悪く顔を崩すけれど。
入学してからしばらく友達いなかったとほざいたのは誰だと思いつつ、流石に口にはしない。
そんな風に驚く俺に、明かした種はなんて事はない。
「雅也は元からの友達」
「前からって事か?」
「同じ中学でそっから」
なるほどね。
「お前が話してるとこ初めて見たけど」
「向こうは特進だから。あんま会わないんだよ」
「へぇ。他に同じとこから来た奴いねぇの?」
「……いる」
不意に気が向いて、軽く聞いてみればだんまりこきつつ利久ははく。
「お?」
「同じクラスの田辺」
「えっ、」
やけに身近な所にいた名前に思わず声を出してしまった。
けれど、言われてみれば積極的に話している様子はないものの、体育やらでペアの時とか、利久が孤立していた様子がなかったのはそういう事かと納得する。
「それでもクラスメイト止まり?」
「友達とは言えないな。何なら二、三年は同じクラスだったけど」
利久の言葉には嫌味は入っていなくて。
それはただ段階を踏まないと友達だと判定できないタイプだからと、理解しつつも。
きっぱりと向けられたその言葉にまた驚いてしまう。
利久は利久で、それなのに友達じゃないのかと驚く俺を
だからお前らコミュ強とは違うんだ!
とでも言いたげな文句を孕んだジト目で見やってくるけれど。
「あ――、ソレで」
そんな利久からの視線を受けつつ、視線を斜め上へと向け思考して。
俺は一人納得して頷いた。
「何?」
「いいや、何でも」
あの時俺が、興味本位で利久をつついて怒らせた時。
高野
うん?
萩原に陸上の話はダメなんだよ
ダメって?
教室から出て行く利久を見送る俺に、思わずと言った風に声をかけてきたのは田辺だったかと。
今になって理解する。
あの時は訳も分からずただ言葉を聞き返した俺に、田辺は苦笑いで言いよどみ、教室の外から俺を呼ぶ友達の声に、そのまま口を閉ざして背を向けられたけれど。
同じクラスだったのなら、多少なりとも事情めいた事を知っていたのかと。
その上での、そっとしとけという忠告だったのかと。
田辺の優しさを感じた。
「お前、本当にコミュ障なのな」
「ほっとけ!」
「よし、友達になりに行くか!」
「は、あ?」
いい奴だと田辺を進める俺に、頑なではあるもののちょろさも持ち合わせる利久は、いきなり何! と文句を言いつつも。腕を肩に回して歩き出せば足を止めずに共に進んでくれる。
そんなこんなで、利久にクラスの友達がもう一人出来るまであと五分。
経緯を聞いた達哉が、
え、まだ友達じゃなかったの?
え、クラス一緒なのに?
同じ中学出身とかアドバンテージじゃん
と呆れた様子で利久に苦言を呈するのは、また後の事。




