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ライラック  作者: さだ 藤
本編
2/27

友は友、俺は俺

利久......りく

達哉......たつや


 教師からの呼び出しを面倒がりながらもやり過ごし、家へと帰る。


 友達がいるわけでもなく部活に入ってるわけでもない俺は、入って二か月そこそこ通っている学校よりも、当たり前に家の方が落ち着く場所であるからして。

 まっすぐと家路につくのは自然なことで。


 学校を出て駅への道を進み朝は出てきた改札に入り、どこか少しだけ色づいていく景色が朝とは反対方面へと進み、電車に揺られること数駅。

 自宅の最寄り駅で降れば家はもうすぐだ。


 馴染んだ道を辿り、カギを回し玄関を開けるだけで気は緩まり。

 皮靴を脱いで、ネクタイを緩め外せば、自然と息も出る。

 そのままリビングへと向かいごろんとソファに顔から突っ込めば、誰のものではなくこっちのもの。 


 つかれたー


「んー」


 目をつむったままぐりぐりとソファに頭をこすりつけ、位置が決まればいう事もない。


 そんな息子に「あっきれたー」とそのままストレートに声を出したのは母。


「今日仕事休み?」

「そうよー、利久は毎日休み?」

「学校は頑張ってる」

「えらい、えらい」


 どこか投げやりにすら感じるものの、努力は買ってくれているのかお茶のむ? と聞いてくれるのはありがたい。


「のむー」

「たっちゃんと約束とかないの?」


 ……。

 俺と違ってそつなく友達をつくれる友人の名を出されても、黙り込むしか俺には選択肢がない訳で。

 そんな息子の性格も生まれてこの方知っていて、小中と友人の性格もご存じな母はため息再び。


「今度ケーキ作るから、食べに来てって言っといて」


 はい、どうぞ。と氷入りの手厚いお茶をソファ前のローテーブルに置き、理由がなければ動き出せない息子の手助けさえしてくれる。


 なんとも偉大な母である。 


 だがしかし、それはそれこれはこれ。


「達哉こなくても母さんのケーキ食べたい」


 欲望のままにわがまま言えば、わがまま言ったのはこっちなのに嬉しそうに笑って。

 えぇー? とこぼしながらも満更でもないように、むっふーと口をにまにまさせているのが分かる。


「何がいい?」

「……バナナ。チョコ入れたやつ」

「ホワイト? ブラック?」

「…………」


 悩ましい。

 何ならバナナを即決しただけでも褒めてほしいくらいに、悩ましい。


 一人うんうん新たな悩みを抱え始めた息子を置いて、キッチンへと戻った母はがさごそと棚を開き、材料のストックを確認していく。


「あっ、ストロベリーもあるし、アーモンドもあった」

「…………」


 選択肢がますます広がり、なんとも贅沢な事だけれど悩みを増やすことをやめてほしいと思った今この頃。


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