ちなみに、2
「うわ、だっせ」
一しきり笑い終えた高野は黙りこみ、零した言葉は自分のものだ。
馬鹿馬鹿しくて、こんな事達哉ですら思いつかなかっただろう。
てか、誰にも言いたくないし知られたくない。
ただのプレッシャーに負けたのかという事実に。
部活始めてから散々言われて来ていて、人にも言ってた今更な言葉だったのに。
取り立てて特別な意味もない、軽い言葉だったはずなのに。
特別な、大きな大会何てものではない学校の部活中の練習場で、急に飛べなくなったのは。
頑張れっていう言葉を向けられての、プレッシャー?
なかなかに衝撃を受けつつ、何とか立ち直ってきたと思えたころに浮かぶのは達哉の顔。
原因が知られれば笑われるだろうと、簡単に予想が出来て。
「達哉には内緒で……」
と、口止めをしようとすれば既に高野は携帯片手にメッセージを開いてる。
その画面は、達哉との個人トーク画面で。
「おい、ちょっと待て!」
「えー、どうしよっかなぁ」
余裕綽々優位に立った高野の悪魔にも見えるその笑顔に、顔はひきつり。
「……何が、欲しんだよ」
いやいやと、交換条件をだす俺に満更でもなく笑う高野。
ぱっと見いつもの爽やかな笑顔にさえ見えるけれど、その内側は黒く見えて仕方がない。
「そうだなぁ」
「…………」
何が出るのかと、唇をぎゅっと噛みしめ沙汰を待つ。
「俺達、友達だよな」
「そうデスネ」
弱みを握られた俺に、否定の選択肢はない。
「なら、翔って呼んで」
「へ?」
「かっちゃんでもいいけど」
「いやいや、」
高校生になってそれはない。
本人からの希望をもとに、たっちゃん呼びしてる高野にいう事ではないけれど。
分かったと、頷き了承した俺にどこかわくわくとした顔を向けてくる高野。
「……翔」
「おう」
本人が喜んでいるのだからこれでいい。
口止め料の対価がこんなもので済んだ事に、安堵の息を吐く。
後日ちょっと、は待ったとやけに爽やかな笑顔を向けられることも知らずに。




