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ライラック  作者: さだ 藤
おまけ
16/27

ちなみに、

 一緒に昼飯食べないかと高野に誘われ、人がいないところでならと中庭で合意する。


 何なら食べながらも話してもいたけれど、食べ終わったパンの袋を折りたたんでからしばり。ここに来る途中で買った飲み物の、ストローを挿し口にセットしたところで、


「ちなみにさ」

「あ?」


 少し聞きづらそうに神妙な顔して切り出した高野に、ストローを口に含みつつ応えれば


「お前にやれとかじゃなくて、純粋な興味」

「おぅ」

「誰か身近で大怪我した奴でもいたのか?」

「……ハイジャンで?」


 前置き付けて聞いてくる高野に、前の様な嫌な思いを感じることはなく。

 ただ言葉の意味を考えて、抱いた疑問を問いかける。


「あぁ」

「いや、いない。だから余計不思議がられて。ムリになった」

「他の競技でも?」

「いない」


「プロのドキュメンタリーとか」

「いや、特に」


「普通に事故にあった人」

「ないな」


 ……それにこれは、


「……怪我に対する、恐怖ではないと思う」


 あれやこれやと、達哉にも聞かれた事のある説を否定していくけれど。

 人が変わればアプローチも変わる。俺の言葉にさらに思考を巡らせる高野。


 その内成長期だからかなぁと体を基点とした平衡さやリズム感にシフトしていった達哉と違い、高野は内面視線でものを言ってきた。


「じゃあ、何かホラー映画」

「ホラーねぇ」


 映画は興味もないしなぁ……。

 てか、


「何でホラー?」

「怖いといえばホラーだろ」

「もはや関係ないような、」

「どっから分かるか分かんないだろうが」

「まぁ?」


 問いかけに答えながら飲んでいた飲み物が空になり、ぷらぷらとストローを咥えて遊ぶ。


「正攻法のたっちゃんでさえ分かんないなら、なおさら」


 その言葉には変な納得感すらある。


 確かに。


「利久にとっての怖い物ってなんだ?」


 怖い物ねぇ……、言われてすぐには出てくるものは何もなく。

 頭を空にしてから考えを巡らせれば、ふいに浮かんだのは、


「ある意味、お前ら」

「俺ら?」

「お前と達哉」

「が、何で?」

「コミュ強すぎてある意味怖い」


 意味が分からないと、眉を寄せる高野にタイミングよく離れた二階の窓から、かかる声。

 それに何てことなく軽く手を振り、よー! と大きな声で応える高野。


 そんな高野にすぐ言わせてもらう。


「ほら、そういうとこ」

「どういう所よ」

「物怖じせず人と関わり合えるところ」

「普通じゃねぇ?」

「俺には無理」


 即座に否定する俺に、少しの付き合いで理解を示した高野は確かにと頷くから。


「お前らと違って俺は繊細なんだよ」

「豆腐メンタルってやつか?」

「わりと?」


 俺の返事に何やら悩み始めた高野は、少し時間をおいて口を開いた。


「……もしかしてさ、走る前に頑張れとか言われた?」

「あ、? そりゃあ……」


 部活動だし、当たり前だろう。

 何回も言われた言葉だと高野の意図が分からずに、頷けば


「プレッシャーだったり、」


 ………。


「……確かに」


 向けられた言葉を飲み込んでみれば、否定することはできなくて。


 え、何でと思いつつ。

 判明した原因に、意図せず二人言葉が被る。 


「「それか」」


 目を見開きどこかすっきりした様子の高野と、反対にもやもやとしたものが残る俺。


「……神田にはほっとけって言っとく」

「さんきゅう」


 慰めめいた言葉を向けられ、へこむ気持ちに沈んだままありがたさも感じて言うけれど。

 一転。


「その方が自分から言い出すって」


 笑いながら続けられた言葉に、一気に気持ちが乱高下。


「おまっ、」


 言い留まる俺を尻目に笑い始めた高野はしばらく止まらなかった。


 こ、の、や、ろ、お


 それに俺はむくれるより仕方がない。

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