友
この前出会って友達になった隆志とも、メッセージのやり取りをするようになって。何だかこの頃楽しいと思う日々。
相変わらず教室で話す友達はいないけれど、新しく出来た友達に心は浮つき。
窓から入って来る風に、心地よさを感じて頬杖ついて目を閉じる。
「利久」
……う、ん?
「…………」
かけられる覚えのない名前呼びに、自然と眉を寄せながら閉じてた目を開けてそちらを見やれば、そこには高野が立っていて。
思わず視線だけ向けて黙り込む。
え、名前で呼ぶような関係でしたっけ、と俺にとっては当然の疑問を抱きつつ。
そういえば高野自身には友達判定されていたっけと、ある日を思う。
具体的には放課後遊びに行くと、知らされた日。
そこから、よくよく思えば遊んだ日にも呼ばれていたっけと思い出しつつ。
隆志への返事と混ざっていたかと、完全に思い出す。
否定するのも今更かと、腑に落ちない気持ちを抱え黙り込む俺に構わず高野は口を開き、
「ちょっといいか」
外へと誘ってきた。
移動するのは億劫なものの、こんな人のいるところで人気者と話したい気持ちは俺にはない。
どこまで行くのかという文句は内にとどめて、表面上は素直に付いていく。
階段を下りて中庭に着くと高野はやっと止まって、
「俺は気になったらすぐに行動したい性分だから聞くんだけど」
背を向けていた俺に向き直り、話を切り出した。
「陸上部入んないのか?」
「またその話か」
わざわざここまで連れてきて、向けてくるのはソレかと。
前にされた質問に、苛立ちを自覚しつつ前と同じ答えを返す。
「入らない」
「何で」
「そっちこそ」
何でそこまでこだわるのか分からないと、顔を背け。話はそれだけかと立ち去ろうとすれば、伸ばされた手に腕を掴まれて止められる。
「待てよ、話はまだ終わってないだろ」
「終わった」
「何でかの答えを聞いてない」
「何でもだっつの」
重ねられた質問に、最早何を言われているのかも分からなくなりそうで。
何で何でという言葉に、お前こそ何でとパニック状態にすらなりそうだ。
そんな俺の答えるものかという態度に、高野は一息溜めて。
核心の一言を向けてきた。
「飛ばないのか」
――ごちゃごちゃ、ごちゃ、
「うっせーな!! お前には関係ないだろっ!」
掴まれていた高野の手を振り払い、がつんと顔を見て言ってしまった、ら。
高野は目を見開き驚いた顔をしていて、そんな高野に俺は我に返る。
あ、――。
やってしまった。
自分の事なのに、大声を出した自分自身に驚いてしまうと同時に。
そのまま見つめていた高野の顔が苦さの混じった、でもどこか傷ついたような悲しささえもある何とも複雑な顔に変わっていくのを見届けてしまった。
そんな風に戸惑っている俺に、高野は一度視線をさげ一呼吸。
まっすぐと俺の顔を見つめなおし、眉を下げたまま笑う。
「わりぃ」
高野の性格上、それだけで終わると思った。
人との距離感を間違えない奴、というのが高野の印象だったから。
そして苦い顔のまま背を向けて、友達のところにでも戻るのだろうとすら予想してしまう。
でも、それで終わりじゃなかった。
「でも」
やけにはっきりとした声の大きさで言葉を置き、しっかりとした目線を俺に向けたまま。
高野は予想外の事に爽やかに笑って口を開く。
「好きだから」
……?
は、あ?
愛の告白ですか? 告げる相手間違ってますよ、お前に恋する女子ならいくらでもクラスどころか学校全体にいるだろうと本っ気で理解できずに、これ以上なく目を見開きぽかんと大口開けたタイミングで続きを言ってくれやがる。
「お前の高跳び」
……わざと溜めたなこいつ。
俺の何とも間抜けな表情を見届けてからのソレに、意趣返しかとすら思う。
いや、によによさせ始めた口を軽く握った片手で隠し、俺から視線をそらしたので確定だろう。
コイツ。




