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ライラック  作者: さだ 藤
本編
12/27

聞いてないっつの!


 今日会ったばかりだというのに、すぐに懐いてしまい友達になった隆志とまたなと手を振り別れる。ついでに高野とも。


「あー、楽しかった」

「友達出来たしね」

「な!」


 めちゃくちゃいい奴とよくぞ出会えたものだと、今日ばかりは達哉を褒めたくなる。


「一気に二人は利久にとって快挙だよね」

「うっせ、コミュ強」

「何か言ってるよ、コミュ障くん」


 うぐぐとぐうの根しか出せない返しに、黙り込むけれど。

 一度流した達哉の言葉に、引っかかる。


「え、二人?」

「流石に可哀そすぎるよ、ソレ」


 ため息交じりに口を引きつらせる達哉の表情はレアではあるが、本気で思う。


「え、高野の事言ってる?」

「言うでしょ。そりゃあ」


「今日の待ち合わせだって、翔おいて一人で来るし」

「だって友達と話してたから」

「それならそれで、一言声かければいいでしょ」


 ため息つきつつ、お説教。

 そう言われるのも分からなくはないし、一度はそうしようかとも思ったけれど。


「ムリ。人が話してるところに割り込めねぇし」

「……だよね、ソレが出来たら利久じゃないよねぇ」


 散々俺の情けない所を知っている達哉には、情けない心情も素直に話せて。それをすんなり分かってくれる達哉には、何とも不名誉な認定をされている。


 ……事実だけど。


「でも流石に、放課後一緒に遊んだら友達でしょうが」

「……ま、あ?」


 躊躇いなく、晴れた顔で当たり前な事を言っているように言うけれど。俺は納得をしては頷けない。


「それも、数いるその他大勢の人数じゃないんだし」

「いやー、でも、」


 せめてと譲ったように見せるお前の一歩は、俺にとっての百歩分。


「いやいやいや、」

「いやいやいや、」


 同じ否定の言葉でも、意味が指すベクトルはあまりに違う。


 それだけで友達とか、無理無理と首を振る俺と、そんな訳ないでしょうと、それこそムリムリと否定して手を振る達哉。


「え、そこまで拗らせてる?」


 驚いた顔で思わずと向けられた達哉の言葉に、そっぽを向きつつ応えよう。


「いや元からこうだし」

「だって、かっちゃんとか」

「お前が間に入ったろ」

「え、そうだっけ?」


 本気で覚えてないと、豆鉄砲でも食らった顔をする達哉に。

 そうだよな、お前にとっては別に何でもない取るに足らない行為だもんなと。


 今日だけでも何度目かもわからない、このコミュ強めという思いを抱きつつ。達哉の思考の続きを読んで、先に名前を挙げていく。


「祐飛も、さっちゃんも」

「え、僕のせい? 過保護すぎましたか!」


 次々と上がった友達の名前に、原因を理解して嘆く達哉。

 きき手を額にあてて、反省ポーズすらしてくるけれど、その口端は上がってる。


「あちゃー、出来のいい幼馴染を持つと困りますね」

「どの口が言う、どの口が。その通りだけど」


 どこか楽しげに、笑いさえ混じっているその言葉には、残念ながら全くの異議がない。

 俺はすんなりと頷き、認めさせていただく。


「まぁ、ありがたいんですが」

「だよね! 僕と出会ったことに感謝してよね」

「本当に」


 言い切る俺に珍しく照れて笑った達哉に、俺の頬もなんだか熱が持っていくも。

 調子に乗って大層なことを言ってきた達哉に、あっという間に頬の熱は退く。


「じゃあ次にりみさんがシファン作ったら、全部僕のという事で!」

「……せめて半分」

「えー、四分の三!」

「半分!」

「なら、利久の分が四分の一でという事で」

「それじゃあ変わってねぇよ!」


 やんややんやと、母さんのまだ見ぬケーキをかけて達哉と言いあいながら家へと向かえば。どこまでも一緒に歩いてくる達哉に、わずかな違和感を覚えつつ話に盛り上がる。


 やがて達哉は玄関までも付いてきて、いや流石に?


「何か用か?」


 と口にした俺に、


「あれ? 聞いてない? 今日お泊りですけど?」

「……どこに?」

「どこって。利久の部屋」

「……誰が?」

「僕が」


 あっさりと寝耳に水な話を言ってくる達哉。

 

「は、あぁ?」

「りみさんに誘われて」

「聞いてないですけどっ!」


 きょとんとする達哉と、叫んだ俺。


 そんな風に玄関先で騒ぐ二人の帰りを今か今かと待ち構えた父が、前に言ってた通りに自分からアドレスを聞いて、達哉とアドレス交換をするのは別の話。


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