聞いてないっつの!
今日会ったばかりだというのに、すぐに懐いてしまい友達になった隆志とまたなと手を振り別れる。ついでに高野とも。
「あー、楽しかった」
「友達出来たしね」
「な!」
めちゃくちゃいい奴とよくぞ出会えたものだと、今日ばかりは達哉を褒めたくなる。
「一気に二人は利久にとって快挙だよね」
「うっせ、コミュ強」
「何か言ってるよ、コミュ障くん」
うぐぐとぐうの根しか出せない返しに、黙り込むけれど。
一度流した達哉の言葉に、引っかかる。
「え、二人?」
「流石に可哀そすぎるよ、ソレ」
ため息交じりに口を引きつらせる達哉の表情はレアではあるが、本気で思う。
「え、高野の事言ってる?」
「言うでしょ。そりゃあ」
「今日の待ち合わせだって、翔おいて一人で来るし」
「だって友達と話してたから」
「それならそれで、一言声かければいいでしょ」
ため息つきつつ、お説教。
そう言われるのも分からなくはないし、一度はそうしようかとも思ったけれど。
「ムリ。人が話してるところに割り込めねぇし」
「……だよね、ソレが出来たら利久じゃないよねぇ」
散々俺の情けない所を知っている達哉には、情けない心情も素直に話せて。それをすんなり分かってくれる達哉には、何とも不名誉な認定をされている。
……事実だけど。
「でも流石に、放課後一緒に遊んだら友達でしょうが」
「……ま、あ?」
躊躇いなく、晴れた顔で当たり前な事を言っているように言うけれど。俺は納得をしては頷けない。
「それも、数いるその他大勢の人数じゃないんだし」
「いやー、でも、」
せめてと譲ったように見せるお前の一歩は、俺にとっての百歩分。
「いやいやいや、」
「いやいやいや、」
同じ否定の言葉でも、意味が指すベクトルはあまりに違う。
それだけで友達とか、無理無理と首を振る俺と、そんな訳ないでしょうと、それこそムリムリと否定して手を振る達哉。
「え、そこまで拗らせてる?」
驚いた顔で思わずと向けられた達哉の言葉に、そっぽを向きつつ応えよう。
「いや元からこうだし」
「だって、かっちゃんとか」
「お前が間に入ったろ」
「え、そうだっけ?」
本気で覚えてないと、豆鉄砲でも食らった顔をする達哉に。
そうだよな、お前にとっては別に何でもない取るに足らない行為だもんなと。
今日だけでも何度目かもわからない、このコミュ強めという思いを抱きつつ。達哉の思考の続きを読んで、先に名前を挙げていく。
「祐飛も、さっちゃんも」
「え、僕のせい? 過保護すぎましたか!」
次々と上がった友達の名前に、原因を理解して嘆く達哉。
きき手を額にあてて、反省ポーズすらしてくるけれど、その口端は上がってる。
「あちゃー、出来のいい幼馴染を持つと困りますね」
「どの口が言う、どの口が。その通りだけど」
どこか楽しげに、笑いさえ混じっているその言葉には、残念ながら全くの異議がない。
俺はすんなりと頷き、認めさせていただく。
「まぁ、ありがたいんですが」
「だよね! 僕と出会ったことに感謝してよね」
「本当に」
言い切る俺に珍しく照れて笑った達哉に、俺の頬もなんだか熱が持っていくも。
調子に乗って大層なことを言ってきた達哉に、あっという間に頬の熱は退く。
「じゃあ次にりみさんがシファン作ったら、全部僕のという事で!」
「……せめて半分」
「えー、四分の三!」
「半分!」
「なら、利久の分が四分の一でという事で」
「それじゃあ変わってねぇよ!」
やんややんやと、母さんのまだ見ぬケーキをかけて達哉と言いあいながら家へと向かえば。どこまでも一緒に歩いてくる達哉に、わずかな違和感を覚えつつ話に盛り上がる。
やがて達哉は玄関までも付いてきて、いや流石に?
「何か用か?」
と口にした俺に、
「あれ? 聞いてない? 今日お泊りですけど?」
「……どこに?」
「どこって。利久の部屋」
「……誰が?」
「僕が」
あっさりと寝耳に水な話を言ってくる達哉。
「は、あぁ?」
「りみさんに誘われて」
「聞いてないですけどっ!」
きょとんとする達哉と、叫んだ俺。
そんな風に玄関先で騒ぐ二人の帰りを今か今かと待ち構えた父が、前に言ってた通りに自分からアドレスを聞いて、達哉とアドレス交換をするのは別の話。




