side 高野
学校でいつも見せるどこかやる気のなさそうな様子はどこへやら、良く笑い良くしゃべる萩原の姿に俺は驚きすら感じた。
「あいつ、あんなに喋んの?」
「人見知りなの、優しくしてあげて」
俺の疑問にたっちゃんは、まるで萩原の保護者めいた返しをしてくるけれど。
今日まで会った事も、話した事もなく。知り合ったばかりの隆志と仲良さげに笑う姿に、ショックさえ受けてしまう。
「どっちがクラスメイトなのか、分かんなくなるんだけど」
「それはそう」
愚痴めいた言葉を吐けば、あー、おかしいとたっちゃんに笑われて。慣れれば懐いてくるから気長に待っててと、ばしばし肩を叩いて慰めてくるが。
ふいに俺の方を向くと、真顔に戻りふいと視線を逸らす萩原を見て零す。
「え、俺なんかした?」
「さぁ? なんかした覚えある?」
「ないけど、……いや、ある?」
「うん?」
自問自答めいた言葉は、たっちゃんも聞いていて。さらった記憶に覚えはないけれど様子のおかしかった事はあると思い出し、言葉を濁せば首を傾げて促してくる。
「陸上部の顧問が萩原の事呼び出すから、陸上部入んねぇのと、聞いた事はある」
それを聞いたたっちゃんはあちゃーと言い、苦笑いを浮かべると一人納得して頷いた。
「あー……それだねぇ」
「それか」
「うん」
はっきりと肯定されたそれに、訳がわからずともあの時の萩原の表情と、今のたっちゃんの反応に失敗した事を理解する。
「今の利久に陸上の話題はタブーなんだよ。利久に関係ない対象だったら大丈夫なんだけどね」
「あいつ早いな、とか。陸上部入ってるとかはいんだけど」
「現にほら、隆志に砲丸投げの事嬉々として聞いたりしてる」
「どういうラインだよって感じなんですが、」
「なんとも難しい年頃でして」
「でも僕から言うのは違うから、気になるなら利久から直接聞いて」
至極真っ当な、ある種の対処法すら教えてくれたたっちゃんの言葉を、ありがたく聞いておく。
「分かった、ありがとう」
「こちらこそ。面倒な幼馴染でごめんね」
「いやいや、友達ですから」
「……うん、そうダネ」
「……あれ?」
さっきまでの滑らかさはどこへやら、急に片言で視線を逸らすたっちゃんに、違和感を覚えて。
何なら、今日集合場所まで先に行かれた事を思い出し過った考えを口にする。
「もしかして友達だと思われてない?」
「片思いかも」
「マジか……」
あっけにとられるとはこういう事かと、高野は思った。




