あなたはいない
暗がりの中を歩いていく
耳をすませても
足音は私だけのもの
今はひとつひとつきり
ゆっくりと踏みしめる石畳
うつろにかつりかつりと音を鳴らして
握りしめたカンテラの
歩みにあわせて揺れる明かりも
今はひとつひとつきり
ゆっくりと進んでいく
ぽつりとひとつ足元を照らしながら
あの時のように
吹く風が全てを撫でていくように
ふわりと私の髪を揺らして
さやさやと草木を揺らして……
同じようだけれど同じじゃない
違っているのは
隣にあなたはいないこと──
目をあげると
夜の空には月が青白く強く光る
遠く星達は煌めき
あの時のような満月の夜
足を止めてカンテラをおいて
見つめる目の前の湖面
想い出の場所
ふたりで見にきた時のように
暗い湖は満月の輝く光を受けて
風が波紋を奏でて
揺らめく湖の月光がまるで呼ぶように
長く伸びて
──この光の道を
歩いていければ
あなたの元に
たどりつけるのかな?
途切れ途切れの囁きに答える声はない
そっと抱きしめてくれた
あのぬくもりはもう今はない
あなたはいない
どこを見ても
あなたはいない
どうしていないの
ねぇ……どうして……
会いたいの
抱きしめて欲しいのに……
繰り返し繰り返し思う想いがこだまして
わかっていることなのに
それでも心は止めることが出来なくて
あふれそうになっていた涙がこぼれ落ちる
ふわりと髪が揺れる
さやさやと樹々が音をたてる
撫でていくような風がただ吹き抜けていた




