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59.徹底抗戦いたします!

海風に吹かれて、花飾りを着けた金髪の髪が太陽光のようにキラキラと輝く。

大きく見開かれた瞳の色は、深い緑色だった。


その事実に、二重に驚く。

母から本当の髪色は聞いていたが、瞳はお祖父ちゃん似の水色だったはず・・・。

(一体どういうこと?)


「あら〜イリースちゃん、瞳の色変えられちゃったのね」

背後から呑気そうな声がきこえる。

「ママを知っているんですか?」

「そうねぇ・・・知っていることは知っているわよ。イリースちゃんは、私の事知らないだろうけれどね」

男性はウィンクをした。

「知っている事、全部教えてください!」

「嫌よ。あっ、でも私の名前は教えてあげるわ黒月(クロヅキ)月よ」

「貴方の名前じゃなくて・・・」

「何故対価無しに話せというのかしら?それに、こんなに面白いエンターテイメント、お金を積まれたとしても嫌よ」

黒月はアイリの願いをバッサリ切る。

これで話は終わりだと、まるでドラマの続きを見るように視線を階下へ移す。


アイリとて、状況は勿論気になる。

だが、傍観していたところで、この事態が好転するわけでもないことは、わかりきっていた。

何も動かなかったら、ここまで自身付いてきた意味が全く無い。脳味噌をフル回転させ策を考える。


黒月は、考え込んでいるアイリから完全に視線を外し、階下の状況を眺める。

面白そうなことが起こりそうな予感に、気持ちが沸き立つ。


現場では、大人しく歩いていたイリースが突如暴れ出した。

そして、隣りにいた白髪男性の腕に、カブリと噛みつく。

その拍子に、白髪男性はよろめき叫ぶ。

その声に吊られ、周りの兵士達の視線が、一瞬白髪男性に集中した。

その一瞬の隙をつき、ロイとシーナ公爵は赤いカーペット前に躍り出た。

二人ともイリースを背に、剣を構える。

二人が躍り出た事に気付いた兵士達が、一斉に周りを取り取り囲む。

明らかに多勢に無勢。

周りの野次馬含め、一瞬でつくと思われた勝敗。

だが、予想外に接戦していた。


カキン、カキンと金属音が鳴り響く中、観戦している黒月の袖を、アイリはクイッと引っ張った。

「黒月さん、もっと面白いイベント見てみたくないですか?」

「あらあら!今より面白くなるのかしら」

「私に力を貸してくれたら、絶対貴方は最高のショーを見ることができますよ」

「もし、私が満足しなかったらどうするつもり?」

「その時は、コレを担保にしてください」

アイリはそう言うと、首に下げていた指輪を、取り出しテーブルの上に置く。

「黒月さんの事だから、これが普通の指輪出ない事わかりますよね?」

「あら、随分買い被られた者ね。フフフ、内容次第で力を貸してあげてもいいわよ」


漸く引き出したチャンスを無駄にするもんかと、アイリは思いついた作戦を、誰にも聞こえ無いようにと黒月の耳元で話す。

ドキドキしながら、返事を待つ。

黒月は、聞き終えると弾んだ声音で面白そうと言うと、さっとアイリとタキを連れ出したのだった。


時間が10分、20分と立つごとに、戦況の均衡が崩されていく。

二人とも武術に秀でていたが、明らかに数に押されていた。

敗戦の色が濃ゆくなる中、ついにシーナ公爵の剣が弾き飛ばされる。至る部分負傷しており、立っているのが精一杯の有り様。

ロイからも隠しきれない疲労感が漂っていた。


二人の戦いを一歩離れたところから、高みの見物をする白髪男性が、その状況になり遂に口を開いた。

「これはこれは、シーナ公爵。こんな所でお会いするとは」

「・・・」

「今見て分かる通り、結婚式をしているんですよ。邪魔されるなんて、随分無粋な事をされますね」

「何を言っている。ココに居るのは、我が娘イリースだ。パルプ公爵、貴様になど渡さん」

パルプ公爵は、にやりと笑みを深める。

「・・・何を勘違いされているのですか?ここに居るのは、貴方のお嬢様ではなく、平民のスイリと呼ばれる者です」

「貴様・・・!」

「言い掛かりもよしてくださいよ。顔はそっくりですが、貴方が昔送ってくれた、釣り書とは瞳の色が違いますよ」

「娘に何をした!」

「ほら、スイリ早く此方に来なさい。シーナ公爵に色々ご迷惑がかかってもいいのですか?」

「!!」


イリースは、その言葉につられ前に一歩踏み出そうとする。

公爵が血塗れの手でイリースの腕をぎゅっと掴んだ。

「おいっ、ロイ!イリースを連れて逃げろ。私の事は、構わず行け!」

「お父様!!」

「最後に父親らしい事をさせてくれ・・・お前ももうわかるだろ?幸せになれよ・・・。ロイとっとと行け、命令だ!」


公爵はロイから視線を外すこと無く言い放つ。


ロイは普段はカチッとしていないが、公爵領きっての戦闘能力と忠誠心の持ち主。

主の命令は絶対だ。

そう、『主を見捨てろ』という命令も例外はない。


振り絞るように「命に変えても、この先ずっとイリース様をお守りいたします」と背中越しに伝える。

感傷を押さえ、冷静な頭で、脱出経路を目算する。


そして、兵士の位置が僅かにズレが生じている部分を見逃さなかった。

左手に剣を構え、右手に足枷を嵌められているイリースを抱きかかえ、一目散に群衆の中に飛び込んだ。

突如やってきた強面剣士に、予想通り群衆は混乱し始める。

さらに兵士の配置が狂い、ロイとイリースはその包囲網から抜け出す。


公爵は、懐から短剣を取り出し、二人の跡を追おうとする兵士の前に立ちはだかる。

海風で白銀の髪は靡き、格好は至るところから流血していた。

それにも関わらず、その雰囲気からは優雅さと気迫が漂っていた。


野次馬も思わず息を呑む。


そんな時、突然女性達の大絶叫が聞こえてきた。

「そこに居るのは、誘拐犯の男よ!捕まえて!!その白髪の髪の男が黒幕よ。私達を奴隷にして攫っていくつもりよ!!」


そうは聞いても、相手は明らかに貴族。

下手に逆らえない。

人攫いは重罪であり、例え他国の貴族でも許されない事だ。

だが、貴族の報復を考えると、誰もが勇気をだして捕まえようとしなかった。

そんな中、一人の男性は、その声に反応した。

港の男衆のまとめ役、ダナンだ。

彼の妻は、一週間前から行方不明となっていた。

連日連夜探し回るも、手懸りは何もなく、今日も港へ探しに来ていた。

正確にいうと、港の海岸沿いに打ち上がってないかどうか・・・。

ここの港町では、足を滑らせて人が居なくなるということが日常的に発生していた。

ここ数年結構な数の女性達が行方不明となっていた。


「ユリ!お、お前・・・!!」

「ダナン!!」

お互い抱きしめ合う。

そして、ダナンはユリの足枷に気付いた。

怒りに任せて、ブチッと手でちぎる。

野次馬の中に、他にも妻や子供が囚われられている人がいた。

同じ様にブチ切れて、手で鎖をぶった切る。


その勢いで、あるものは手近にあった木材を手に取り、またあるものは、長袖のシャツをたくし上げ、あるものは気合でシャツボタンを弾き飛ばしす。


「「海男舐めんなよ!」」


誰かの掛け声とともに、公爵達の戦闘に乱入しはじめた。

怒り狂っている大勢の海男達は、素手で構わず剣などへし折り、樽を投げ飛ばしたりなど豪快に暴れた。 


波止場はすでに大乱闘。


何やら面白い事になったと、更に人が集まってくる。

そして、港周辺の酒場もここぞとばかりに商売をし始める。

そのうち、〈白髪貴族VS平民〉の賭博まではじまり昼間から酒場は大盛りあがり。


その様子を一人優雅に、テラスの上から面白そうに眺める男性がいた。

「フフフ、お代はきちっといただいたわよ」

男性は満足げに、冷めきったお茶をゴクリと飲んだのだった。

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