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57.不本意な乗船です!

倉庫周りは舗装なんてされて無いただの地面。

あんなに強引に引っ張るように連れていけば、自ずと跡がのこる。

それさえ残っていれば簡単に行き先がわかる事を知っていたタキは、アイリが落ち着いてからその事を教えた。


「お前に協力してやるよ。この辺は俺のほうが詳しいからついてこい」

「でも・・・」

「ただ、ヨルは置いていく」

「ヤダ!僕も行く!!」


自分だけ置いていかれるのが不満なヨルは、抗議する。

だが、タキは譲らない。

そこで、ヨルに別の用事を貸すことを思いついた。


「このままその服を持って追いかけられないだろ?それ今夜の貴重な換金源だぞ。ヨルは、俺達の基地にこれを運んで他の者に取られないように見張っておいてくれ、お前にしか出来ない」


それを言われて、確かにこの荷物は持っていけないなと思ったヨルは、不承不承1人で基地に戻ることにした。


「早く帰ってきてね」そうタキに向けて言い放つと、その場を去っていった。


タキとアイリは、鎖の跡を追って進む。

時折、海風でかき消されかけている部分もあったが、なんとかレンガ造りの一軒の建物にたどり着いた。


「ここで跡が消えている」

「本当ね・・・ここはどういう場所?」

「乗船所だ。ほら、ここは裏口だが表の方を見てみろよ」


タキに言われて、アイリは指差しされた方向を見る。

ひっそりと静まりかえっている裏通りとは対象的に目の前には、開放的な海が広がっていた。

桟橋に羅列するように、船が何艘も停泊している。

看板からは、威勢のよい掛け声が聞こえ、大勢の人が忙しなく行ったり来たりしていた。


「裏と表ではずいぶん雰囲気が違うのね」

アイリがポツリと呟く。

「当たり前だろ、ここはマム領屈指の港。ザード国との貿易も盛んだし賑やかなんだよ」

「そうなんだ・・・」


タキは平民というわりにキチンと教育を受けてきたのか、さらりと事情を説明する。


「で、この建物に侵入したいんだけど、表面から行けばいいってこと?」

「客としてか?」

「うん!」

「俺達みたいなこども、ましてや孤児が入れるわけ無いだろ。入口で追い返されるのが関の山だ」

少し呆れた様子でタキは告げる。

そして、少し考えた後にアイリについてこいとその場を離れた。

アイリは、タキのあとをついていくと、地面に板が敷いてある場所についた。

蓋を取ると悪臭が漂う。

そこは明らかに下水溝。

思わず、顔を背ける。

タキは布切れを取り出し、慣れた手つきで自身の鼻と口を覆う。

アイリもハンカチでその真似をした。

すると若干だが悪臭が緩和された。


「ここを通れば、あの建物の地下につく」

そう言うと、下水溝の中に降りた。

アイリもそれに続いておりる。


中は下水が通る溝があり、溝の横に少し段差があった。

辛うじて子供が通れる幅と高さだった。

途中何本もの分岐点があったが、そこを慣れた感じでタキは歩いていく。


悪臭漂うため、二人は会話をせずに黙々と進んだ。

目的地についたのか、タキは急に止まった。

アイリの方を向き、人差し指を立て、口元に持っていき静かにとジェスチャーを送ってくる。

アイリもコクコクと頷いた。

一枚の板越に頭上の気配を探る。

足音が遠ざかり、タキは板をソロリソロリと持ち上げた。

周辺に人が居ないことを確認してから、まずは自身が飛び出し、アイリを頭上へと引っ張った。


建物内部に潜入することができた。


あとは、囚われている母を助け出すだけ。


そう思ってると、隣の部屋からガシャガシャという鎖の音が聞こえてきた。

廊下に人が居ないことを確認し、ゆっくりと音の聞こえる方へ移動する。


そこには、幼い子から成人女性まで、鎖に繋がれ牢に入れられていた。


驚くタキとアイリ。


首元には番号が着けられ、口枷を嵌められている。

髪色こそバラバラだが、よく見ると、金色の珍しい瞳と水色の瞳の持ち主ばかりだった。


母もこの中にいるかもと、銀色の髪を探すがいない。

どのような事情で、ここに囚われているのか知らない。

だが、現世の感覚を持ち合わせているアイリは、〈人身売買〉

の四文字がとっさに脳裏に浮かぶ。

それとともに嫌悪感でいっぱいになる。

助けてあげたいと思うも、今は母の事で手一杯。


罪悪感に駆られる。


そんなアイリの葛藤をタキは見透かしたのか、強くアイリの手を引っぱった。

そのまま、その場を後にする。

握られた手からは、まるで、この人達を見捨てるのは、自分がアイリを無理に連れ去ったからだと思わせるような・・・

そんな気持ちが伝わってきた。


アイリは小声で「ありがとう」と呟いたのだった。


二人は足音を立てないように、ゆっくりと移動する。

その後も色々部屋はあったが、順々に部屋を開けてみるが、中々目的の母がいる部屋にたどり着けない。

やがて地下室にある最期の扉の前に来た。

牢屋以外には鍵がかかっていなかったのに、この部屋だけ施錠がされていた。


扉に耳をあてると、金属のガチャガチャした音が聞こえる。


アイリの直感が、これは母だと告げていた。

だが、肝心の部屋の鍵がない。

どうしようと思っていると、上階から足音が聞こえてきた。


(わぁ、どうしよう!!)

パニックになりかけているアイリを引きずり、タキはとっさに隣の部屋に飛び込む。

目についた高そうな衣装箪笥に取り敢えず身を潜める。

息を殺しながら、人が通り過ぎ去るのを待っていると、突如浮遊感が二人を襲う。

声を思わず出しかけてしまいそうになるも、これまたタキが口を押さえてくれた。


「あれ?この箪笥なんか重くねぇ??」

「そうか?お貴族様の持ち物だろ、俺達みたいな下々のものと違ってたっぷり色々入ってんだろう」

「そうか?」

運びての1人が、少しバランスを崩す。

「おっと、危ない下の引き出し少しあいちまった」

「すげぇ〜お前の言う通り中身ぎっしりだな」

「だろ。さぁ、さっさと船に積み込もうぜ、これ終えれば今日の仕事終わりだ」


豪華な箪笥と共に、二人は知らず知らずの内に、乗船する羽目になってしまったのであった。

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