43.生姜湯は我が家の暖房です!
休暇二日目の朝、二人はなかなかベットから降りれずにいた。
初冬の寒さは、容赦なくボロ小屋を襲った。
以前に比べ、四方からの風は防げるようになったが、真上からの冷気と隙間風によって、室内と室外ほぼ変わらない温度であった。
会話しようとすると、すぐに真っ白な吐息が出てくる有様だった。
防寒対策としてレンガ造りの暖炉も完成させたが、それは真っ黒玉ねぎと同様オブジェと化していた。
森に行けば枝はあるが、女二人では薪まで十分に用意できなかったため、それを使うのは真冬の寒い時期だけと決めていたのだった。
今かけている布団も、真綿や羽毛が入っているものではなく、単純に布を何重にも重ねたものだった。
唯々重い物だった。
敷布団に至っては、寒さ対策のために貰ってきた藁を敷き詰めてその上にシーツをひいているものだった。
だが二人にとっては、この場所が唯一の温かさを得られる場所であった。
だから、二人共起き上がりたくなかった。
無かったのだが、二人の腹時計は既に限界を迎え、さっきからグーグーなり始めていた。
「・・・起きたくないよ」
「じゃぁ、ママとじゃんけんして負けた方が朝食作るのはどうかしら?」
「・・・そこは、ママが朝ごはん用意するから、そろそろおきましょう?じゃないの?」
「えー、アイリちゃんが用意してくれたものの方が美味しいんだもの」
首を45度の角度でちょっと傾け、笑顔でウィンクしてくる。
アイドル顔負けの母がいた。
そして、その可愛すぎる母の笑顔に、降参したアイリが朝食を作るというやり取りが常態化していたのだった。
冬場採れるものと言ったら、コッコのたまご位だった。
アイリは、持っている全衣服を着込み、家の扉を開ける。
早速乾燥した冷たい風が、布団で温まっていた体温を全部持っていってしまった。
空を見上げると、お腹が鳴りやまないだけあって太陽は大分上の位置まで昇っていた。
そそくさと、コッコの小屋までいくと、コッコはグル~っと朝の挨拶をしてきた。
その鳴き声から《起きるの遅すぎるでしょ!》っとなんとなく読み取れるのは気のせいだと思いつつ、コッコの後をつけ卵を頂き、早々に家の中に入った。
手を洗いさっそく調理を開始する。
今朝のメニューは卵サンドもどきと野菜スープ。
卵が一つしかないのでフライパンでスクランブルエッグを作る。
シオーナと胡椒でシンプルに味付けをし、作りだめしたマヨネーズを絡めた。
それをパンの実クッキー薄切りバージョンの上へ載せて挟み込んだ。
それと同時進行で、隣のコンロで玉ねぎを飴色になるまで炒め、保存してあったキノコや山菜を加え水を注いでグツグツと煮込んだ。
スープからいい匂いが立ち込めてくる。
身体が温まるように、山で収穫したショウガと蜂蜜で生姜湯を作った。
その間母はというと、アイリの傍で調理の邪魔にならないようにジッとしていた。
という体で火の傍で温まっていた。
部屋のどこへいても寒いため、自然と体が温もりを求めてしまうのだった。
本当はアイリにくっついていたいのだが、そうするとアイリから調理の邪魔だと邪険に扱われてしまうため、致し方なく大人しく立っていたのだった。
そして、一品完成するごとにそそくさとテーブルの上へ運ぶという自身の役割は果たすのであった。
セッティングし終わったテーブルに二人は座り、二人は遅い朝食をとった。
薄切りにしたパンの実はサクサクした触感で、そこにフワフワした卵が絶妙にマッチしていた。
これはこれでありだなと思うアイリ。
スープも玉ねぎの甘さはもちろんの事、山の恵みが凝縮されており、キノコが特にいい味を醸し出していた。冷えた体がもっと欲しいと騒ぎ出す。
そして、とどめは生姜湯。
これを飲むと、体の芯からポカポカしはじめてきた。
実は、この生姜湯は前世の聞きかじった知識だけで作っており、作り方も入れるものもあっているかよくわからなかった。
だけど前世では体が温まると聞いたことがあったため、どうしても飲んでみたくなった。
あばよくは、美味しかったらいいなという期待を込めた作った見たのだった。
けれど、そんな期待はあっけなく打ち砕かれ、味も匂いもザ・生姜だった。
一番最初に生姜湯を飲んだ時はゴホゴホとむせた。
だが、そのまま捨てるのがもったいなさ過ぎて、根性で飲み切った。
すると、体の芯からポカポカになりはじめ、これは体を温める効果があると確信したのであった。
それから、アイリは生姜湯を改良しようと、アーモンドミルクとブレンドしたり、干し果物と混ぜたりしてみた。
だが、どの組み合わせもいまいちだった。
最後に希少な蜂蜜をほんの少し入れたところ、ようやく飲める代物になったのであった。
こうして改良に改良を重ねた生姜湯は母にも好評だった。
思い返せば体が温まるからッという理由で、何も言わずに生姜オンリーの生姜湯を出した。
母はアイリちゃんの作ったものなら全部美味しいと思い込んでいるのだろう、湯の中にデンと浮かんでいた生姜を見ても動じずごくりと飲んだ。
そのあと、目を丸くし盛大に噎せていた。
暫く警戒されてしまって、試作品飲んでもらえなくて、一人で消化したのは懐かしい思い出。
生姜湯から立ち込める湯気を見ながら、物思いにふけるアイリであった。
こんな感じで、遅めの朝食をとり家事を二人で行って、服の作成やちょっとお散歩にでかけたりと
まったり休暇を楽しんでいる二人であった。
そして、休暇4日目を迎えた。
スイリは、コッコの早朝目覚まし時計が鳴る前に目を覚ました。
今日は、ついに男爵夫妻はお城へと到着する日だった。
スイリは自分たちの運命をこの一日へと託していたのだった・・・・。




