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36.ゼラチンの実の価値が凄すぎます!

スイリは暫くすると、アイリの元へ帰ってきた。

目元が少し赤くなっていたが、それを隠すかのようにふわりと笑うスイリ。

アイリはそれに気づかないふりをして、スイリを出迎えた。


「ママおかえり」

「アイリちゃん、私さっきゼラチンの実を沢山みつけたわ。ほら見て」

スイリは、腰にぶら下げていた袋をアイリに見せる。

袋の中には、赤くてコロンと丸いゼラチンの実がギュウギュウに押し込まれた。

「ママ・・・これはいくらなんでもとり過ぎじゃない?」

「フフフ、なっていたの全部とってきちゃったわ」

「ええっ!!」

「根っこもついでに、抜いてきちゃった」てへっと可愛く笑う。

「な・・なんで、もう収穫できなくなっちゃうじゃない!これでスイーツ作れなくなるよ!」

食への執念が強いアイリは猛抗議した。

すると、スイリは突然真面目な顔になった。

「アイリちゃん、これは通常ならここにあるはずのない植物なの。このゼラチンの実はシーナ領の特産品になることは、前に話したと思うけど、貴重な物だから国に流通管理されているものなのよ。過去にはこれを巡って、近隣諸国と争いが起きたこともあったわ。だけど、今はこれがシーナ領だけに取れることによって、争いが無くなり平和が保たれているのよ」

「どういうこと?たかだか植物の実でしょ?」

「そう、たかが植物の実が戦争の火種に成りうるのよ。その話は今は一旦おいておくわ。そして、この実の存在自体一般的にあまりしられていないの。超高級食材に部類されるから、平民は、どのような物なのか普通は知りようが無いものなのよ」

「えっ・・・でもサラさんは知ってたよ」

「そう、それがおかしいのよ。上級貴族や商人、植物学者ぐらいしかしらないはずのこの実の存在を、何故一般人のはずのサラさんが知っているのかしら・・・とにかくアイリちゃん、サラさんには気を付けなさい」

「えっ・・・」

「そして、この実がここに生えてしまった理由は、私の推測が正しければ、この箱の中身の影響だとおもうわ」

スイリはそこまで伝えると、小箱を取り出した。

泥を払っただろう小箱は何年も土の中に埋まっていたとは思えないほど、異様にキレイだった。

少し土汚れの跡があるくらいで、湿気や虫に侵食されておらず、作られた当時の材質のまま時を止めてその場に存在しているという感じであった。


間近で見せられたアイリは、ようやくその異質さに気づく。

知らぬ間に、手が震えた。

それに気づいたスイリはそっとアイリの手を取り、耳元で囁いた。

「大丈夫、これは変な物じゃないの。ただ、ここではあけれないから一旦家に戻りましょう」


こうして二人は大量の収穫物と捉えた獲物をもって家路へ向かった。


この時点で、お昼ご飯の時間はとっくに過ぎ去っていた。

二人の腹時計は反響するかの如く、ぐぅ~ぐぅ~と鳴り響く。

普段であれば、この時点で二人は食事をとるのだが、水辺の傍以外で安易に火を使う事はためらわれた。

そこで、道中スイリの知識をフル活用し、令嬢にはあるまじき食べ歩きを敢行することにしたのだった。

名付けて、《スイリ&アイリの生食野草の食べ歩き紀行》だ。

勿論、対象は生食可能な野草となるため、味は考慮しない・・・いや出来ない。

とにかくお腹いっぱいになればいいというコンセプトの元、二人は文字通りお腹が満たされるまで食べ続けた。

草や葉を千切りながら口に入れるその姿は、さながら野生の草食動物に似ていたとか、にていなかったとか・・・。

そんなことをしつつ、無事に満腹になった所で登場したのは、野イチゴだった。

これを見つけた時の二人の様は、もう察して有り余るものだった。


こうして歩き続け、家に着いた頃には時刻は既におやつの時間を回ってた。

家に付くと、まずは大量の野草類と獲物を下し、アイリは先に体を洗いに行った。

その間、スイリは採取してきた野草を仕分けした。

そして、ガサゴソ音のする桶の蓋をとり上から覗いた。

急に眩しくなったからなのか、生きのいいザリガニが鋏を構えて、威嚇体制をしてくる。

それを見ながら、スイリはわざとザリガニにツンツン攻撃をしかけた。


「早く食べたいわ、これ美味しいのよね!アイリちゃんならきっと上手に料理してくれるはずよね。本当楽しみだわ」と暢気に独り言をいっていた。


アイリは産まれてこのかた、ザリガニを食したことがないという事実を、すっかり忘れているスイリであった。


そんなことをしていると入浴室から声が聞こえてきた。

「ママ~今日石鹸の葉使っていい?」

「いいわよ。あ、ママがとってあげるから待って!」そう言うと立ち上がり、入浴室へと向かったのであった。


その場に残されたのは・・・虎視眈々と脱走を企てる赤いやつらだったのだった。

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