33.1年半後が恐ろしいです!
アイリはレディーと思えないほどの、大あくびをしながら起き上がった。
隣でスヤスヤ寝ている母を起こさないように、ソロっとベットから降りる。
窓はまだ締め切ったままだった。
だが、この家はある意味便利だった。
窓等開けなくても、隙間風と陽ざし入り方で、だいたい窓を開けずとも天気がわかった。
(今日は曇りかな)
そう予想して、窓を開放する。
空は少しどんよりとした曇りの日だった。
(あたり~ここ最近は色々強烈なことが続いていたから、こんな日もありがたいな・・・)
そんなことを思いながら、今日の朝ごはんを収穫しに行く。
庭を出て、コッコに挨拶をすると、またしてもコッコが案内してくれた。
すると案の定産みたてホヤホヤの卵があった。
コッコにお礼を伝え、トマトとハーブの収穫を終え一旦家の中へ入った。
母はまだ寝ていた。
(昨日話疲れちゃったのかな?)
そう思いながら、さっそく朝食の準備をする。
アーモンドミルクに卵と甜菜糖を入れ、カピパンを浸す。
その間に、オリーブオイルでトマトを炒め野草とキノコを入れて水を入れる。
グツグツ煮込んで塩コショウで味を調えたら、トマトスープの完成。
そして、つけ起きしておいたカピパンをフライパンでジューっと焼く。
甘く香ばし匂いが、部屋中に広がった所で、ようやく母が起きてきた。
「うわぁ~いい匂いね、ママはやく食べたいな」
「先に、顔を洗ってきてよ」
「うん、わかったわ!食卓の準備はママに任せて!」
スイリそう伝えると、急いで顔を洗いに行き、早々に食器の準備を終わらせるのであった。
スイリにせかされるようにアイリは食卓に着いた。
「「いただきます~!」」
あのカピパンがアーモンドミルクと卵をたっぷり吸いこんで、フワっとなっていた。
カピパンの「カピ」のに文字が見当たらないぐらいの代物だ。
勿論味は申し分ない。寧ろアイリは前世で食べた牛乳のフレンチトーストより、こっちのフレンチトーストのほうがおいしいのではないかと思っていた。
ただ、少し後悔したこともあった、それは一晩漬けなかったことだった。
(これ、一晩漬けてたらもっとフワフワになっていたな・・・う~ん、もうちょっとフワフワ感が欲しかった)
食卓を預かる調理師としは、厳しめな視点になる。
「ちょっとフワフワ感足りないよね?」そう母に問いかけるも、
「そう??美味しい!美味しすぎる!!美味しい~」ばかりで、安定のちっとも参考にならない意見だった。
トマトスープはキノコの味がいいのか、出汁がきっちりでており満足のいく出来栄えであったので、
今日の総合評価は70点かなっと勝手に、自分の中で点数をつけるアイリであった。
こうして、二人は遅めの朝食を終え、休日のティータイムに突入した。
「本当アイリちゃん、料理の才能あるわ」
「普通でしょ、いやいや、本当よ!」
「料理・・・確かに面白いと思っているけれど、よくわからないよ・・・」
「ふふふ・・・元公爵令嬢のお墨付きだから本当よ。私これでも昔から食いしん坊だったのよ」
「・・・ママ、これでもって・・・今でも十分食いしん坊だから」
「そうかしら??」小首をかしげる動作だけは、本当公爵令嬢と聞いてしっくりする。
「・・・それは一旦おいといて、昨日の話で気になったことがあるの」
「何かしら?」
「変化の薬の話とかだけど。あの話からすると、ママあと1年半くらいで髪の色が金髪にもどっちゃわない?」
「そうよ」
「あと・・・アルって人をまだ待っているの?」
「そうよ。だって、アルは必ず迎えに来るって言ってたわ」
「ママ、私もこんなこと言いたくないんだけれど、もう7年も連絡ないんだよね?手紙一つすらないんだよね?という事は、もう・・・・」
「アイリちゃん、アルは絶対来るわ!絶対よ!彼、約束を破ったことないもの」
「ママ・・・・ごめん、泣かないで・・・わかったから」
アイリはそれ以上言えなかった。
母は悲しそうな顔で、号泣していた。
多分、心のどこかでわかっているのだろう・・・そんなことを思うと、とてもじゃないけれど、今後どうする計画なのとは、続きを聞くことはできなかった。
ただ、現実的にはあまりにも安易な考え方だと言わざるを得なかった。
例えアルって人が来たとしても、髪色を変えて3人でどうするのか?
どう考えても、3人でこの場所には住めないだろう・・・。
それに、そのアルって人はそもそも追われている身だ。
アルと一緒にずっと逃げる生活を送るつもりなのだろうか・・。
もっと言わせてお貰うと、アルのやってることは最悪だった。
だってそうだろう、母へは出来ない約束をした挙句、7年間音信不通。
誠実さの『せ』の字の欠片すらない。
もし、母を思っているならば、『新しい人を見つけてほしい』とか、『君がきらいになった』とか言うのが、去る者の愛情ではないだろうか?しかも、住んでいる場所がわかっているならば、なんとか連絡してくるとか方法があるだろう。
それを一切やらないなんてっと憤りしか感じない。
それか・・・天に召されている可能性とか・・・。
ともかく、今後どうするのか一切提示がないのが不安だ。
ここに居れるのは、男爵の関係者というポジションがあるからだ。
例えば、スイリもアイリの髪も突如変化したら、今まで一緒に働いていた人はどう思うだろう・・・。『騙された』と思うのではないだろうか?
そして、アイリについては特に、金髪でなくて男爵家の色でもない髪色になってしまったら、白い目で見られること間違いないだろう。
男爵家の実子のポジションで、そこに座り続けて6年後、実は男爵の子供ではありませんでしたっとなると、男爵夫人とメイド長は知っていても、屋敷の人達や外側の人たちからすると、嘘をついて居座ってた形になるからだ。
母は・・・そんな人々の感情を想像しているのだろうか?
兎に角、現実的に、残された期間は1年半。
準備するのにあまりにも短い期間だ。
ましてやアイリは、5歳。
この世間知らずな母を守るのにも限界がある。。。
(本当、どうすればいいのよ!神様~!!しかも、自分の父親が不誠実な人或いは、ケチな人ってどういうことですか?!)
心の底から、神に愚痴を呟くアイリであった。。。




