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29.ママの出自は・・・!

翌朝、お天気は快晴で気持ちのいい朝だった。

コッコも張り切って、朝の訪れを告げ、スイリも「アイリちゃん行ってくるわね」っと声をかけるも

微動だにせず、爆睡するアイリ。

昨日の夜更かしが効いているのか、ちっとも起きる気配はない。

だが、それに不満の声を上げたものがいた。


アイリの腹時計だ。


腹時計は、朝は遠慮がちに『ぐぅ~』っと鳴らしたのだが、自分の所有者は起きてくれなかった。

太陽が真上に来ても、まだ寝ている。

次こそはと意気込んで、『ぐぅ~』っと盛大に響き渡らせてみせた。

すると、「何事?!」とアイリが叫びながら起きた。

腹時計は、ようやく気付いてくれたことに満足したとばかりに『ぐぅ~』と鳴らすのであった。


「私の腹時計・・・主張激しすぎない?」そんなことを思うアイリであった。


とはいえ、朝ごはん抜きで、すでに昼間になっていた。

食卓には手を付けなかった朝食が置いてあった。

それをさっと食べ終わると、コッコのもとへ向かった。


「コッコおはよう~」と声をかけると、コッコは視線を空に向けた。

そして、ようやく起きてきたアイリをジッと見る。

コッコの言いたいことが伝わってきくる。

「・・・うん、そうだね、『こんにちは』の間違いだったね」

自身の言いたいことが伝わったからか、満足そうに首を縦に振るコッコであった。

「コッコ、ママの秘密を聞いたんだけどさ、なんだか切なかったな・・・・」

コッコにそう話しかけた。


実は、昨日の質問タイムで非常に気になる事があった。

だが、想像するとどうしても、センシティブな内容になってしまうため、それを聞いていいのか、母が傷つくのではないかと・・・起きた時から、答えの出ない迷路に迷い込んでいる状態であった。


そうこうしているうちに、あたりがオレンジ色に染まりだした。


干してあった、野草類を取り込み、コッコにお休みの挨拶をして部屋へ戻った。

(気を取り直して、夕食をつくっちゃおう!)

入浴を済ませて、夕食作りに取り掛かった。

昨夜の母の様子思い出し、今宵はちょっと驚くような料理にしてみようと張り切るアイリであった。


まずは、パンの実クッキーを細かく砕いた。

そしてオリーブオイルと混ぜ合わせ、淵のあるお皿の底に敷き詰める。

そこまでできたら、今度は、庭でもいできたトマトをざく切りにし、野草やキノコと混ぜ合わせ、敷き詰めたお皿の上へ乗せる。

アーモンドミルクと卵、塩コショウを混ぜ合わせたものを、敷き詰めたお皿の上へかけ、温めておいたオーブンへ入れた。

オーブンで焼きあげている間、上のコンロで今度はキノコをさっと炒める。

味付けはニンニクと塩。

今日のご飯は、トマトキッシュとキノコ炒めだ。


オーブンからいい匂いが漂ってきたタイミングで、母が帰ってきた。

「ただいま~アイリちゃん!」

「おかえり、ママ」

「なんだか、とってもいい匂いするわね~」

「ふふふ、きっと驚くと思うから楽しみにしててね」

そうアイリが声をかけると、母は一目散に入浴しにいったのであった。


母が離籍している間に、オーブンの中を確認する。

予想通り、キッシュ表面にいい感じの焼き色がついていた。

火を止めて持ち上げようにも、5歳児にとっては料理の入ったお皿は重かった。

そして、重ねた布で持ち上げようとするも、熱かった。

格闘しているうちに、母がいつの間にか後ろからさっと持ち上げてくれたのだった。

そして、炒めたキノコの横にドンと置いてくれたのだった。

「アイリちゃん、ママ料理は作れないけれど、運ぶのと食べるのには自信があるの!」と何故か謎の宣言をしてくるのであった。

そのやり取りを経てようやく二人は夕食を取り始めた。

初めて作ったトマトキッシュは、口に入れると熱々で焼けどしそうになる。

だけど、その熱で野草とトマトそれにアーモンドミルクの独特な風味が絡み合い非常に香ばしい出来栄えだった。

キノコ炒めも、キノコのうま味がギュッと凝縮されており、食が進む味であった。

あまりのおいしさに、二人は夕食談義に花が咲くのであった。

そうこう話をしているうちに、明日の話に及んだ。

「そうそう、アイリちゃん、明日ポールさん午前中は予定があるから、午後から来ますって言ってたわ」

「そうなんだ~わかった!逆に今日ゆっくりお話しできるからよかったかもね」

そうアイリが返すと、母はそれもそうねと笑うのであった。


夕食を食べ終わると、昨夜の続き前に、アイリはカモミールティ-を入れた。

「あれ?今日はミントティじゃないのね?」とスイリは言う。

「昨日と違う方が味偏があるかなって」とアイリは返した。

だが、カモミールティに変えたのは、アイリなりの心遣いであった。

ストレスがかかるときは、このお茶がいいのだ。

そう・・・前世でよく飲んでたカモミールティ、その効能をよくわかっているアイリであった。


母がゴクゴクと飲んだのを見計らって、アイリは勇気を振り絞って口を開いた。

「昨日の話を聞いてて、おばあちゃんとおじいちゃん、そして、お兄ちゃんは髪の色金髪だったのに、なんでママだけ銀髪なんだろうって思ってたの・・・」

スイリはうんうんと聞く。

「もしかして・・・・ママは私と同じ立場の愛人の娘とかなのかな。でも、おばあちゃんはママに優しかったって言うし、おばあちゃんが無くなったのはママの出産とも言ってたから・・・実は、おばあちゃんは、愛人がいてその娘ってことかなって思って・・・だけど、おじいちゃんはおばあちゃんが大好きだったから、愛人の子でも受け入れたけれど、そのおばあちゃんが無くなったから、ママ興味が無くなったってことなのかと思っちゃったんだけど・・・そうなの?」

そう伝えると、思わず俯いてしまった。

(やっぱり、聞くべきことじゃなかったかな)

緊張で握りしめた拳の中に手汗がでる。


すると頭上から、母の笑い声が聞こえた。

その声には憂いなど一切なかった。

アイリはそろりそろりと顔を上げ、母をみる。

母は開口一番、「あの二人のラブラブぶりをみてたら、そんな考え浮かばないわよ!それに、それは絶対にありえないわ。アイリちゃん、すごい推理してたのね~」と朗らかに笑う。

寧ろお腹を抱えて爆笑していた。

あまりにも笑うので、アイリはちょっとムッとする。

「だけど、髪の色がママだけ違うじゃない!」

「それはね、これから話すことと関係してくるのよ」


そういうと、スイリは昨夜の続きをはじめるのであった。

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