24.無いなら作ればいいのです!
朝起きると、すでに母の姿はなかった。
太陽もいつも起きる時間より大分高い位置にあった。
良く寝たなっとアイリは起き上がる。
テーブルにはいつも通り、丸々一個のトマトとカピパン。
顔を洗いテーブルに着くと早速朝食を食べた。
食べ終わると昨晩の事を思い出していた。
あのゼラチンの実を凝視後、母は「ちょっと疲れちゃったから、明日食べるね」っと言って話を切り上げてしまった。
初のまともなデザートなのにだ!
あの向日葵のタネで感動していたのにだ!
あの食いしん坊母が食べなかった・・・アイリにとって衝撃的な事態だった。
色々聞きだしたいことが山の様にあったが、アイリも終日の森散策で疲れ果てていた。
追及する気力なく、今日帰ってきたらそれとなく話を聞いてみようと思うのだった。
(さて、今日は何をしようかな・・・)
鼻歌を歌いながら、今日の予定を考える。
実は、昨日サラからトムじい腰痛のため、明日明後日はお手伝い不要と伝え聞いたのだった。
(読み書きの練習でもいいし、庭の手入れでもいいな・・・でもやっぱり、昨日とってきた野草で保存食作りにしよう)
アイリはウキウキとしならがら、サラに教えてもらったやり方を思い返しながら、保存食を作ることにした。
まずは、調味料づくりからだ。
籠のなかから大量の甜菜を取り出す。
使う部分は白い株っぽい部分だけということなので、包丁で根と葉の部分を切り落とす。
株もどきの部分は、煮えやすくするため、みじん切りにして、すべて鍋の中に放り込んだ。
水を注いで柄杓でかき混ぜながらじっくりと煮ていく。
早速あたりに甘ったるい香りが漂ってきた。
(うゎ~いい匂い・・・味見したいな、でも我慢我慢)
しばらくたつと鍋の中は茶色のドロドロっとした液体に代わっていった。
そこで、ちらっと舐めてみた。
蜂蜜とは異なり、コクのある独特の味であったが、熱すぎてもはや味を楽しむより、甘さしか感じない。
(やっぱり、冷めてから味見すればよかった・・・)
初砂糖だというのに、少しがっかりするアイリ。
甜菜を煮詰めるのに時間がかかりそうなので、その間にもうひと作業を行うことにした。
コンロの下に備え付けているオーブンを使って、パンの実を焼くことにしたのだった。
このパンの実をカチカチに焼き上げるのだ。
「カッチカチやで~」思わず某芸人のコントをちょっと呟いてしまう。
パンの実は、ビスケット上にカチカチに焼き上げると、半年くらい持つ保存食になるとのことだった。
あと何回か森に入ってこの実をとってくれば、冬にカピパン配給が無くても、主食事情は安泰だろう。そう思うと、思わず顔がに焼けてしまう。
オーブンに詰めれるだけ詰め焼く。
それを何回か繰り返した。
パンのみが焼きあがる頃、ちょうど甜菜糖も完成した。
お昼時という事もあり、さっそく作ったパンの実ビスケット上に、出来立てホヤホヤの甜菜糖を振りかけた。
更にトマトとミントの葉を庭から収穫してくる。
トマトとシオーナとバジルと混ぜ合わせ、サラダを作ると最後にミントにお湯を注ぎミントティを作るのであった。
「完璧な昼食じゃない?!」誰もいないので、食卓をみて一人で自画自賛する。
まずは一口、パンの実クッキー砂糖掛けから。
甜菜糖の独特の風味が、味無しパンの実にパンチを加えていた。
更にトマトとシオーナの融合が素晴らしかった。
トマトの酸味に、シオーナの塩っ気感とシャキシャキ触感、バジルの風味もいい感じに食欲をそそってくれていた。
そこへ、口の中を一層する爽やかなミントティ。
「やっぱり完璧だったわ!」改めて自画自賛するアイリであった。
ご飯を食べた後は、午睡をし目覚めたら次の作業へとりかかった。
今度は、取ってきたキノコや野草類を水洗いする。
布巾で丁寧に水けを吸い取り、天日干しにする物、加工する物に分けた。
今日は天気も良く風も穏やかだ。
早速シオーナ含め、お天道様にカラカラにしてもらうキノコや野草類をザルの上へ並べる。
そこまで終わると、庭の方へ出て梯子を屋根の上へセットした。
この梯子はポールが置いて行ってくれたのだが、明らかに家より丈夫そうだった。
寧ろ壁に立てかけて、壁が崩れ落ちないか少し心配だった。
(ポールもこれを使って屋根の臨時修理をしていたから大丈夫なはず!)
その事実だけを支えに、アイリはこわごわとしながら階段を上がるのであった。
無事に階段の頂上へつき、アイリは一安心した。
「一回のぼれれば、大丈夫~」
そんな根拠のない自信を持ち、一つまた一つと家へ入ってザルをとり、屋根へ載せていいった。
最後のザルをもって上がろうとした時、コッコがやってきて、端っこにあったシオーナを『パク』っとつまみ食いしていった。
アイリはニヤッとしながら、気づかないふりをして梯子を上る。
下を見下ろすと、案の定コッコはペッペと吐き出していた。
いたずらではないが、予想道理の展開にプププっと笑うのであった。
ひとしきり笑った後、梯子を下りたアイリは水を汲んでコッコに差し出した。
コッコは舌を水につけ、舌を洗っているかのように飲む。
「へへへ、しょっぱかったでしょ、これシオーナって言うのよ」
コッコにしてみれば、『食べる前に教えてよ!』だろうが、今回はつまみ食いして分が悪いのかおとなしく「コッコ・・・・(ふん!)」っと鳴くだけであった。
つまみ食いを終えたのに、コッコはアイリの周りをウロウロする。
アイリのスカートを嘴で挟むと、こっちに来てとばかりに、強制的にアイリをその場から連れ出したのだった。
連れていかれたのは、コッコの小屋だった。
(もしかして、乾草変えてくれってことかな・・?)
そう思いながら、小屋を除くとなんと卵が1つデデーンと乾草の真ん中に大きな卵が乗っかっていたのだった。
「卵だ!!とっていいの?」
コッコが一声鳴く。
「卵がー手に入ったー!」嬉しすぎて、昨日できなかったハグ分を含めコッコを思いきりむぎゅっと抱きしめた。
潰れるから離してとばかりに、コッコは、アイリをバシバシ叩くが、嬉しすぎるアイリは「マヨネーズ♪マヨネーズ、チャチャチャ~!」っと謎の創作音楽を作り上げ、コッコが『ぐぇ~』と鳴くまで離さなかった。
急遽手に入った卵。
作るのはもちろん、みんな大好きマヨネーズだ。
前世でも大好きだった調味料。
材料は余裕でそろっている。
それどころか、高級品ばかりだ。
生みたて新鮮卵、出来立てホヤホヤ甜菜糖、摘みたて胡椒に家にあった酢、オリーブオイル、塩。
泡だて器などないため、フォークを束ねて、腕の力を振り絞ってかき混ぜる。
(く・・・なかなか相手手ごわい。でもいいの、腕が使えなくなってもいい、そう、すべてはマヨネーズのため!)
そんな腕の犠牲と根性のたまもので、遂にマヨネーズがこの家に誕生したのであった。
尚、腕を酷使しすぎたため、他の作業はできなくなってしまった。
スイリは家に帰って驚いた。
腕をぶらぶらさせているアイリが、にやにやしながら出迎えたのだ。
(なんだかこの子・・・・ちょっと危ない子なのかしら??)
そんな危惧を抱かせる、マヨラーアイリの熱意であった・・。




