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第49話 最大級の賛辞


「あ、あの……大丈夫ですか? 何かその、とても思い詰めた顔をされてますが……」


 そう言って心配そうにこちらを覗くハルとモニアの二人。やはり可愛いうえに流石は双子、見事なシンクロ率だ。

 などと密かに関心しつつ、二人の頭を撫でながら「ふふっ、心配してくれてありがとね」と笑顔を見せて大丈夫だよアピールを。

 あとついでにフェルムにもニコリ。何故かウットリ顔を晒す二人の後ろで心配してくれてたから一応ね。


 ただ三人とも思い違いをしている。

 私は思い詰めていたわけではなく、一心に誓いを立てていたのだ。

 この幸せな日々をこれからも過ごすために、成すべきことを成し遂げるために、それらを貫けるよう願掛けの意味も込めて。

 とはいえ、ソレを口にするのは恥ずかしすぎるので敢えて言わずにおいたのだが……って、そもそも私の笑顔を見て安心してくれてるから言う必要なんてないけどね。


 その後、やたら密着してくる双子姉妹と背後霊の如く付き纏うコイツのことは嬉しくも据え置き、この三人とのやり取りを終えて少し進んだところ、何やら見覚えのある瓦礫を発見。

 それにより〝あの女〟の恐ろしい姿がふと脳裏を過ったことで、急な寒気や背筋を伝う冷や汗とともに危機感からか鼓動は速まり身体まで震えだした……が、それでもツールポーチから取り出した『ゴクウの棍』を力いっぱい握ることで恐怖に抗い、且つ正気を保ちながら尚も進む。


 もしあの女が現れてもきっと私にしか見えない……なら! 当然みんなを守れるのも私しかいない! さぁ、来るなら来い! あ、でもできれば来ないでくれたら嬉しいです。


 強気でビビるという矛盾を抱えながらも横目で瓦礫周辺を覗きつつ平静を装い通過を試みる……と、まさかまさかのノーエンカウント。

 正直このパターンは想定外のため半信半疑のまま進み続けることにしたのだが、結局は瓦礫が見えなくなった後も〝あの女〟の出現はナシ。


 だからこう思い込むことにした。きっとお腹が痛くてトイレに籠ってるんだ! と。

 また、そうすることで漸く肩の力を抜いて「ふぅ……」と安堵の一息を吐くことができ──



「──ひゃあっ!?」


 咄嗟に驚き叫んだ私。前触れもなく左肩に手を置かれたからだ。

 それでも即座に相手の方を振り返りながら「ぐぬぬっ、後ろからとは卑怯なり!」と棍を突き出して顔面攻撃を──って、アッシュぅ!?


 青褪めた表情を見せるアッシュ。訳も分からず攻撃されかけたからだ。

 てっきり〝あの女〟の仕業だと決めつけていたのだが、それはとんだ勘違い。てか、寸止めできてよかったぁ……


 後方を歩く私たちの更に後方……つまり最後尾には彼が控えていたのは勿論知っていたが、よもや急接近のうえに触れてくるとは思いも寄らず、つい反射的に攻撃してしまったのだ。

 なので即、両手を上げて降伏中のアッシュに「あわわごめんね!?」と慌てて謝罪をしたところ、「あはは……だ、大丈夫ですよ、全て分かってますから」と彼は苦笑しながらも平然と許してくれた。それも、意外な言葉とともに。


 この時点ではその言葉の意味が分からず「……ん゙ん?」と首を傾げてしまったものの、仏のように優しく笑う彼を見つめているうちに私の心境を完全に理解してくれているのだと気づき、こちらも優しく笑い返すと、ハル・モニア・フェルムの三人が一方的に彼を睨みつけるなか、互いに苦笑いとなった私たちはどちらからともなく寄り合い、そして共に歩み始めた。



「……いいんですか? みんなに話さなくて」


「……うん。話したところでどうにもならないし、何より信じてもらえないと思うよ、多分」


 アッシュが聞いてきたのは〝あの女〟のこと。

 なれど結局は現れなかった以上、話しても全く意味がないと判断してのこの返答。

 尤も、私のみならず彼も勘づいている様子ではあるが。過去に起きた〝神隠し〟に於いて〝あの女〟が関与しているやも……と。



「まっ、そういうことだからこの話はおしまい! ……あ、〝まい〟で思い出したんだけどさ、そういえばマイセルたちどうしたんだろ? とっくに鉢合わせしててもおかしくないんだけどなぁ」


「確かにそうですね……何かあったんでしょうか? 例えば神隠しにあったとか──」


「──やめい!!」


 はぁ、冗談でも笑えないからソレ……とげんなりした後もアッシュとは様々な話で盛り上がった。

 例えばそう、結局は能力(アビリティ)を使わずに済んで喜ばしい反面見てみたい気持ちもあったことや、とてもDランクとは思えぬほどの高い戦闘技術を有している理由、あとは思い出せないくらい他愛のない話を沢山していた気がする。


 そうして楽しく会話に興じていた折、小さく笑いながら次の話題を切り出すアッシュ。

 それもすぐ後ろを歩く三人から向けられた謎の熱視線を見事に受け流しながら、涼しげな顔で。あ、因みに私は背中が痛いです。


「あははっ……あ、そうだ聖女様、一つ伺ってもいいですか?」


「え? あぁ、うん。全然いいよ?」


「ではあの時、何故俺の言葉を無下にしたんですか?」


「んー? あの時? 無下? ……あっ」


 この瞬間、一気に血の気が引いた。


 あの時……それはみんなが窮地に陥った時のことを示しており、確かに彼の言葉を無下にした。そう……重傷を負ったモニアを助けるために。


 それともう一つ。


 私が真ん中の通路へと踏み入る直前に声をかけた際、彼が浮かべていた物言いたげなあの表情。

 後回しにしてそれっきり忘れていたが、実はこうして伺いたかっただけなのかもしれない。今ならそう思える。


 だけど、それでも私は一寸も後悔なんかしてない……だって、たとえ偽善でも見殺しにしないって決めたんだもの!!

 そう強く強く思いつつも、彼の気持ちを2度も無下にした罪悪感からその台詞が言えず、伏目がちにただ一言「……無下にしてごめん……」とだけ伝えた。これしか、これだけしか謝る術を知らなかったから。


 ……


 ……


 ……恐る恐る顔を上げてみる。

 するとあり得ないことに、真顔で聞いていたアッシュの表情が急に柔らかな笑みへと変わり、更には突然、私たちを取り巻く空気感までもが変化し、そして……



「……俺は、貴方を誇りに思います」



 最大級の賛辞。両親にさえも言われたことのない誉れある言葉。

 その思わぬ一言を貰い唖然としてしまった私は、徐々に感極まっていくとともにポロポロと涙を零し、そればかりかまるで引き寄せられるように近づいては自然と抱き締めていた。それも、顔をうずめるほど強く深く愛おしk──



「──はいアウトぉぉぉ──ッ!!(×3)」


「うわぁ!? ビックリしたぁ!!(×2)」


 な、なるへそ……あの謎の熱視線は監視されてたってわけね……

 心臓をバクバクさせてそう納得している隙に、私とアッシュは引き剥がされたうえに三人から接近禁止命令を言い渡されてしまい、加えてエタン・レジーナ両名から「コラっ! そこ煩いぞ!」とハモりながら叱られる始末。ぴえん……


 だがそれよりも何よりも、他のみんなが足を止めてまでこちらに注目しているという事実が恥ずかしすぎて死ねる。しかもスキャンダラスな内容だから尚更だ。

 まるで幼い頃に両親から叱られたような、そんな感覚。もうイイ大人なのに叱られるとかダサすぎぃ〜、そんな出来事。


 ただこの時、みんなを見て思い出したことがある。

 アッシュとの何気ない会話の最中、ふとみんなを眺めたときがあるのだが、その際に思ったこと。それは……



 一、エタンとレジーナの仲が良さげ。(もしカップルになったら最恐すぎて終わる。まっ、単に冒険者界隈の話をしてるだけだろうけど)


 二、プラータとピスカの仲が良さげ。(啀み合いながらも謎の結束力を感じる。あとなんかモヤっとした。何故か知らんけど)


 三、【アームストロング】の男性陣はみんなウルザのことが好きそう。(でも彼女の方は誰も意識してなさげ。とても切ない)


 四、シンカーが独りぼっちで可哀想。(けど本人は気にしてなさげ。う〜む、話し相手になってあげるべきだろうか……?)



 ……とまぁ、こんな感じ。

 こうして改めて考えてみると、何やら変わり者しかいないような……──



       〜メイキング&NG集〜



オルド「はい前回の続きでーす! カメラ回ってまーす!」


レジーナ「……ん? 彼は一体誰に言っているのだろうか……?」


 そうレジーナが不思議がっている一方、ルゥは身体を震わせながら〝とある内容〟を思い返していた。この一言とともに。


「……う、嘘でしょ……まさかそんな普通の意味だったなんて……」



【性癖…… 人の心理・行動上に現出する癖や偏り、傾向・性格・性向などを示す言葉。各々のパーソナリティに根差し、生活スタイルを方向付けるような行動傾向を指して用いられるのが本来の用法である。もし仮にエロス的な意味合いを示すのならば、性的・性愛・性欲などを用いるべきだろう】


【好色……単に好きな色を示す言葉。他意はない。(※諸説アリ)】


【愛人……単に愛する人を示す言葉。他意はない。(※諸説アリ)】


【アソコ……単に足の底を示す言葉。つまり足裏。他意はない。(※諸説アリ)】



ルゥ「……ま、負けた……なんかよく分かんないけど、そんな気がする……」


 ショックのあまり四つん這いとなって項垂れるルゥに対し、容赦なく現実を突きつけるクリスタ。


クリスタ「ふふんっ! いかに自分が矮小な存在なのか理解できたようね!」


 自分が教えたせいだと己を責めるも、ただただ慌てふためくことしかできずにいるネウ。


ネウ「あわ、あわわ、あわわわわ……」


 ……そして、これを機に〝四天ワード〟を台詞にと猛烈に推すクリスタであった、のだが……



オルド「はいカーット! 普通に無理でーす! あり得ませーん!」


クリスタ「──ッ!? そっ、そんなぁ〜っ!!」


ピスカ「いや当たり前でしょ」


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