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第48話 今を大事に生きる


「おっ待たせしやしたぁ! いや〜ごめんごめん! ちょいと物色しててさぁ、あははっ!」


 大部屋の外で待つ二人と速攻で合流。謝罪と言い訳をセットで述べつつ。

 すると即、仏頂面のまま「ふん、いつものことだから気にしておらん」と振り返るなり来た道を戻り始めたエタン。

 不器用な彼だが、その言動からはじんわりとした温かみを感じられてなんだか嬉しい気持ちに。


 一方、無言のレジーナはというと……私たちのやり取りを見て微笑ましく思っているのだろう、実際に優しく微笑んでは守るように先頭を歩いてくれている。

 そんな思い遣りのある彼女に対してもやはり嬉しい気持ちとなったのは言うまでもなく、同時に仲間の素晴らしさを改めて実感できて尚更嬉しさが増した。



「あっ、やっと来た! 残念だけどアンタらビリよビリっ! 因みに1番はウチらだけどねっ、ふふんっ!」


 通路先で待ち構えていたピスカ。それもすっごいドヤ顔と仁王立ちで。

 どうやら二人の後ろ姿を笑顔で眺めている間に戻り着いていたようだ。悪鬼どもの屍に埋め尽くされた、地獄絵図とも呼べるこの空間に。


 てかさ、ずーっとこうして待ってたってこと? そんな自慢するようなことじゃないのに? う〜ん、全く以て意味不明(イミフ)すぎる……と、思ったらなんとも微妙な表情にならざる得なかった私たち──ってちょっ、レジーナっ!? 何その能面顔は!? 流石に塩対応すぎない!?


 その後やはりというべきか、あまりの反応の薄さに「きぃ〜っ!」とムキになったピスカは喧々と文句を垂れ始めた……が、塩対応の件があったからか標的はレジーナのみに収まってくれた。南無南無……


 それはそうと、みんなが無事で何よりだ。

 左右の通路でも恙無(つつがな)く救出できたようだし、これは文句ナシの結果と云えるだろう。うんうんっ、よかったよかったぁ!


 ……ただ、身体の傷はともかく心に負った傷はどうすることもできない。

 もし仮に彼女らの気持ちを理解し慰めてあげられたとしても、魔物に嬲られたという事実は消せないのだから。

 今はまだ気を失っているので問題こそないが、いざ起きた際にどうなってしまうのか……唯一それだけが気掛かり。



「よし、それでは街に戻るとしよう。死臭に釣られた魔物がやって来る前に──」


「──ちょっと!? 話はまだ終わってないんだけど!? さっきの顔はどういうことなのかキッチリ説明して──」


 合流時から続くピスカとのやり取りの合間を縫ってレジーナが帰還の旨を告げた。


 この場にいる誰しもが疲れ果てているはずなのだが、あの二人のやり取りのお陰かなんとなく足取りが軽いように見える。まぁ、みんな苦笑してたけど。

 魔力切れで白目を剥いていたプラータもどうにか歩ける程度には回復してくれたので安心したし、あとは最も深い傷を負った〝あのコ〟も──



「──聖女様っ!!」


「ひゃあっ!?」


「この度は助けてくださりありがとうございます!」


「え、ビックリさせたのは無視……? コホンッ、えっと……確かモニアちゃん、だよね?」


「はぁ〜ん♡ まさか聖女様に名前を覚えていただけてるなんて……私、幸せすぎて死にそうです♡」


「あはは……そ、そう……」

《いやまぁ、確かに死にそうではあったけどね……って、完全に自分の世界入っちゃってるな、コレ……》


 苦笑いを浮かべる私の前で法悦に浸っているこの人物こそ、先程まで私が気に掛けていた〝あのコ〟こと『モニア』

 しっかり者で〝清楚系〟の姉『ハル』とは全く違うタイプの女性……謂わゆる〝夢見る少女系〟である。

 尤も、その事実を今知ったばかりなので若干……いや、大分戸惑っているが。


 にしても、双子なのにこんな違うもんなのかぁ……とある意味驚かされたものだが、感想はただそれだけ。

 寧ろ【変人愛好家】の私にとってモニアの存在は喜ばしい限りだ。



「モニアったらもう! ……はぁ、すみません聖女様……このコ、聖女様のファンなんです」


「い゙ぃっ!? 私のファン!? 一体なにゆえ!?」


 困った様子のハルが言うには、初めて私を見た時からこんな感じで事あるごとに私の話をするのだという。

 例えば私の趣味や好物に恋人の有無、はたまた入浴の際はどこから洗うのかなど、とにかく私に関する疑問があればなんでも口にしつつ勝手に妄想しては悶えているとかなんとか。ナ、ナンテコッタ……


「違ぁぁぁ〜う!! 全然違うよお姉ちゃん! 私はただこれほど不敵で素敵な聖女様のことが知りたいだけなの! 妄想なんかと一緒にしないで! それにファンじゃなくて大ファン! だ・い・ファ・ン!! 分かった!?」


 うわぁ……このコ、幾らなんでも私に夢見すぎでしょ……と引きつつも愛想笑いで誤魔化していたそんな折、何故かフェルムが会話に乱入。突然モニアに物申すという謎展開に。


「なぁおい……幾らなんでも夢見すぎじゃねぇか? 確かにコイツは最高のオn──ん゙んっ、悪くねぇ女だがそれ以上に凶暴なんだぞ? 分かってんのかそこんとこ」


 ……え? い、今、最高の女って言おうとして……いやいやいや、コイツに限ってそんなわけ……ん? 凶暴??


「はんっ、そんなのひと目視れば分かるわよ……そう、視ればね! 逆にだからこそお慕い申して──ゴホンッ、さぁ刮目なさい! 聖女様のこの誰彼構わず睨み殺しそうなほど凶悪な目つきを! チラ見ですら悩殺させるどちゃシコエロボディを! 全生物を誘い殺さんと振り撒かれる超濃厚な女体臭メスメルを! それにそれに──」


「──ちょいタンマっ! モニアちゃん一旦落ち着こっ! ねっ!? ねっ!?」


「はい♡ 聖女様♡」


 な、なんなのこのコ……可愛いけどイタすぎるし私のこと伝説の暗殺者(アサシン)か何かだと思──って! さっき女体臭メスメルとか言ってなかった!? も、もしそうならそれって……



「匂いが視えてるってこと──ッ!?」



 ついうっかり憶測を口走ってしまったところ、急に目を丸くしたハルから意外な解答が。


「よ、よくお分かりになられましたね……! そうです、このコには匂いやフェロモンなどが色の付いた靄のように視えるらしいのです」


「え゙っ!? 何ソレ凄ぉっ!?」


 続けてハルは説明をしてくれたのだが、それは……



 一、嗅覚に関する〝天稟スキル〟を持って生まれたこと。


 二、スキル名が『天狼(てんろう)(けい)』であること。


 三、主なスキル効果が〝嗅覚の鋭敏化〟〝匂い等の視覚化〟〝匂い等の色彩化〟などであること。



 ……といった内容だった。


 なるほど……だからハルは女体臭(メスメル)の存在をいち早く知ることができたのか。妹想いの彼女ならば確かに納得できる。

 たとえ匂い等が視えたとしても、それらがどのような効果を及ぼすのかまでは不明なため一から地道に調べ上げる必要があるわけだ。

 加えて、他にも秘密がありそうな口ぶりではあったが、流石に全てを話すわけにはいかないのだろう。当然、私だってそうする。

 ただ少なくとも強化系と変質系のハイブリッドスキルであることは確かだ。フェルムの『鉄血』と同じくね。

 だがそれ故に、これまで様々な問題が起きたであろうことは想像に難くない。


 きっと大変だったんだろうな……特に人間関係とかさ……


 天より〝特別なチカラ〟を与えられたことで他人に理解されぬばかりか利用せんと企む者も決して少なくなかったはず。

 そのせいでモニアは多くの苦悩を抱え、そんな彼女を懸命に支えようとハルは奔走してきたのだろう。

 二人の本心は知れずとも、才能に翻弄され苦しむ者たちを見てきた私には分かる。

 現にレオの〝能力数値化〟やティナちゃんの〝読心術〟も彼女と同等の『チートスキル』なので秘匿しているわけだし、まず間違いない。そして、私自身も……



 潜在スキル『偉人の銘』

 このスキルのお陰で〝聖女〟と称賛され、以前とは比べ物にならぬほどの幸せな日々を過ごせている。


 しかし、それは単に運が良かっただけの話。


 もしも何か一つでも違っていたならば、こうして信頼できる仲間や大切な家族とは出逢えなかったはずだ。

 そればかりか夢を諦め、ただ無機質に武器を造らされるだけの悲惨な人生を送っていたに違いない。……不思議と確信できた。


 だからこそ私は、〝今を大事に生きる〟そう心に決め……──



       〜メイキング&NG集〜



オルド「んじゃ次は〝私のファン〟のシーンいきまーす!」



ハル「モニアったらもう! ……はぁ、すみません聖女様……このコ、聖女様のファンなんです」


ルゥ「い゙ぃっ!? 私のファン!? 一体なにゆえ!?」


クリスタ「困った様子のハルが言うには、初めて私を見た時からこんな感じで事あるごとに私の話をするのだという。例えば私の性癖や好色に愛人の有無、はたまた入浴の際はアソコから洗うのかなど──」


ルゥ「──やめぇぇぇ〜い!!」


クリスタ「はぁ……またソレ? 毎度毎度飽きないわね」


ルゥ「──!? ちょっ、ソレこそ私の台詞なんだけど!?」


ハル・モニア「あはは……」


クリスタ「……で? 今度は何が気に食わないわけ?」


ルゥ「気に食わ──!? ぐぬっ、ぐぬぬぬぬっ……!! まるで私が意地悪してるみたいにぃ……ッ!!」


ハル「……あ、もしや〝性癖〟〝好色〟〝愛人〟〝アソコ〟という言葉に反応を示されたのではないでしょうか?」


モニア「な〜るほどぉ……確かに〝四天ワード〟なら反応しちゃうのもしょうがない……かも?」


クリスタ「……そうなの?」

     《まぁ、知ってて言ったんだけどね》


ルゥ「うん、まぁ……ってか、四天ワードってなにっ!? なんか無駄にカッコ良すぎない!?」


クリスタ「ま、まぁ、それは……でっ、でもそれらの何が気に食わないってのよ! 別に変な意味じゃあるまいし!」


ルゥ「はいぃぃぃっ!? アンタ頭大丈夫ぅ!? 寧ろ変な意味しかなくない!?」


クリスタ「……ふふっ、ふふふ……とんだ甘ちゃんね。それなら博識で有名なネウちゃんに聞いてみるといいわ!」


ネウ「──ふぇっ!? わわわっ、私ですかぁ〜っ!?」



 こうしてネウから教えを受けたルゥは、己の認識の甘さを思い知らされたことで驚愕せざるを得なくなるとかならないとか。──次回に続くッ!!


ピスカ「はぁぁぁっ!? ウソでしょ!? こんなの持ち越すとか馬鹿なの!?」


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