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第44話 反転


「──!? な、何コレ……圧倒的じゃん……ッッ!!」


 仲間のピンチに颯爽と駆けつけるはずがまさかの圧勝ムードに思わず驚愕。その圧倒的かつ衝撃的な光景に心の声が漏れ出てしまっていた。


 死屍累々と横たわる数多の悪鬼。

 それも百や二百どころではなく目算でも五百体は下らず、凡そ半数もの屍が頭部や四肢を破損しているという凄惨ぶり。まるでゴルトがやったみたい……


 僅か十二人でこれほどの魔物を倒したというのだから驚き愕然とするのは当然のこと。断じて大袈裟ではない。

 事実、隣にいるアッシュも口をあんぐりさせてるもの。


 片や、当の救出隊の面々だが……多少の怪我はあれど戦闘不能に陥っている者は一人もいないうえに勢いも全く衰えてはおらず、このままいけば私たちの出る幕はないだろう。

 まぁ尤も、本来ならばココにはいないはずなので私とアッシュは岩陰からひっそりと様子見に徹することにした、のだが……



「では万が一に備えて今のうちに地形と戦力の把握をしておきましょう」


「えっ? あぁ……うんっ、分かった! でもやり方分からないからちゃんと教えてね?」


「──ッ!! はい!!」


 初めは急な提案に乗り気ではなかったものの、色んな意味で視野が広がりそうだと感じたためこれを了承。把握の仕方を教わることにした。何故か妙に張り切るアッシュを可愛らしく思いつつ。


 先ずは地形の把握。


 ココはあの中間地点の空間よりも倍は広く、形状はかなり歪で真円というよりも楕円に近い。

 地面も窪みだらけで悪路が不慣れな者にとっては相当戦いづらく、加えて今は五百体以上もの屍が障害物と化しているため更なる戦闘技術が必要となる。因みに私には無理。


 それと最も気になるのが奥にある3箇所の通路。

 外形から察するに各々の道が各部屋へと続いており、そのいずれか若しくは全ての部屋にキーニャたちを監禁しているものと推測される。今後も要注視。


 次は戦力の把握。


 知ってのとおり圧勝ムードにつき味方の戦力よりも敵戦力の把握を優先。

 理由としては不利な方を重要視することで逆転の芽をいち早く見抜き、敵なら即座に摘み取り、味方なら勝利の糸口とするためだ。


 ゴブリン〝四〇〟ボーグル〝一八〟オーガ〝〇五〟ブルーオーガ〝〇一〟以上。


 残る魔物は計六十四──いや、六十三体。今し方ピスカがゴブリンを撃破。

 このように把握中の増減は仕方のない誤差だろうから気にはせず、寧ろ〝減る分には重畳〟と捉えることにする。


 身体的状態は無傷の者が多く、武器は前回と代わり映えのない様子で隠し持っている気配もない。まぁ、ほぼ裸だしね。

 一部の魔物に於いては力を誇示するためやはり素手のようだが、その分リーチは短めで身を守る手段も避けの一手。


 しかし、たとえ素手でも油断は禁物だ。

 あの体格と腕力……特にオーガクラスともなれば拳ひとつで容易に人を殺せる。

 そのことを奴らも理解しているからこそ、ボスであるブルーオーガは未だに参戦していない。


 確かに〝数〟と〝個〟の両方で上回っているだけあって、腰を据えたその強気な姿勢や余裕ありげなあのふざけたニヤけ面にも説得力がある。……あ、見てたら段々ムカついてきた。


 続けて味方戦力の把握となるが……結論からいえばまずまずといったところ。

 何せこの広く歪な空間の中を誰も彼もが目紛しく動き回っているため完全に把握するのは流石に高難度がすぎる。

 とはいえ、多少なりとも知り得たことがあり、それは勿論……武器とか武器とか武器。



 ウルザ:重金属ヘヴィメタルの戦斧

 エタン:ヨイチの弓(素材不明)

 エレバス:重金属ヘヴィメタルの大槌

 ゴレーラ:重金属ヘヴィメタルの大剣

 シンカー:精射弓(ダンシャオ竹)

 スカラベ:重金属ヘヴィメタルの破砕球(鎖付きの金属球)

 ハル:精射弓(トレントの枝)

 ピスカ:メタルリザードの籠手×2

 フェルム:玉鋼タマハガネの槍

 プラータ:黒曜石のナイフ・黒鋼クロハガネの苦無

 モニア:ヒポグリフの鞭

 レジーナ:積層鋼ダマスカスの大剣



 ……うん、我ながらなかなかイイ見極めだと思う。

 因みに身体的状態の方は残念ながらあまり把握できてはいない……が、少なからず皆好調であることは確かだ。



「……とまぁ、こんな感じなんだけど……どぉ?」


「……す、凄い……! まさか教え要らずでここまで把握できるなんて……!」


「えっ、ホント? 私凄い?」


「えぇ勿論です! それどころかもしや天! 才! なのでは!? ……って、少し盛り過ぎt──」


「──天才っ!? そっかそっかぁ……じゃあ次はもうパーフェクト確定だね!」


「へっ──!? あっ、もっ、モチのロンです!」


 こうしてアッシュとのやり取りによって意外な才能に気づけた私は、何故か挙動不審な彼と共に戦いの行方を見守ることに。

 すると、喜ぶべきことに魔物は既に半数を下回っているうえに厄介なオーガも二体減って残り三体となっていたのだ。いや〜実に重畳重畳ぉ〜!


 このままいけば本当に私たちの出る幕はない……けれど、みんなが無事ならそれでいい。

 そう納得する間に魔物の数が早くも二十を切ると、勝利の気配を感じ始めては手に汗を握り、私とアッシュが笑みを交わした次の瞬間、断然有利なはずの戦況に異変が起きた。



「モニア!! しっかりして!! モニア!!」


 壁際で力無く地に伏せるモニアと悲痛な叫びを上げるハル。……ダメだ、意識が戻らない。

 それにみんなも状況が飲み込めていないのだろう、彼女らを気にしすぎて動きが散漫になっている。


 だが私は見た。原因はヤツだ。てかあり得ない。

 先程まで余裕ぶっていたはずのブルーオーガが急に地団駄を踏んで激昂し、足元にあったゴブリンの屍をモニカ目掛けて投げ飛ばしたのだ。

 それにより屍諸共吹き飛ばされた彼女は岩壁に激突してしまい、その際に全身を強打してあのような状態に。


 ここで本性を露わにしたブルーオーガ。

 配下の屍の上を容赦なく踏み歩き、前線に立ち、そして憤怒の雄叫びを上げる。


 スイッチが入ったかの如く暴れだす配下ども。

 更には3箇所全ての通路から数十体もの悪鬼が増援として現れ、武器を拾い、一斉に掲げ叫ぶと、遂に奴らによる反撃が開始された。


 圧勝ムードであったはずが反転、窮地に立たされる事態となり、その最大の要因は散漫な動きによって連携が取れなくなったことに他ならない。


 連携といえば把握中に気づいたことだが、救出隊の核は驚くべきことにDランクの『シンカー』

 まるで指揮官の如く采配で実力者たちを的確に動かす姿がとても印象的であり、それはマイセルたち四人のあのぎこちない動きにも合点がいくとともに【ガルキマセラ】というパーティは〝彼〟あってこそなのだと深く理解した。


 されど、それでもこの窮地を脱することは非常に難しく、皆散り散りとなっては疲労もあるためか防戦一方のすえに手傷を負う者が続々と出始めてしまう悪展開に。その結果……



「くっ、このままでは全滅です! 聖女様だけでも逃げてください!」


「えっ? アッシュはどうすんの──って、まさか……」


「……打ち上げはいずれ天国で」


 私だけ逃げる運びとなった。

 一方、優しく微笑んだのちにアッシュは、戦線へ飛び出すなり刀を抜いて勇猛果敢に攻め込み斬り掛かると、一体また一体と流れるような刀捌きと体捌きで次々と魔物の数を減らしてはその身を青く染めていく。

 とてもDランクとは思えぬその気迫と戦闘技術に一時目を奪われるも、こうしてはいられないと私は駆けだし急いだ。


 ……少し遡って、アッシュが戦線へ飛び出した直後のこと。

 彼は天国で打ち上げをする気でいたが、その時私はこう思った。〝それは無理だよ……だって私、地獄行きだもの……〟と。

 たとえ復讐前に死んだとしても神様はきっと許さないし、私自身も許されるとは微塵も思っちゃいない。それに……



 死んだらもう一緒にはいられない。


 死んだらもう逢うこともできない。


 死んだらもう独りぼっちかもしれない。だから……



「私は死なないし誰も死なせない──ッ!!」


 駆けだし急いだ先は出入口……ではなく、動かぬモニアの元。

 偽善かもしれないけど見捨てるなんて絶対無理っ!! そう決意して今やれることをすべく、悪路のなかを壁際に沿って駆け抜けていき……──



       〜メイキング&NG集〜



オルド「んじゃ次は〝窮地〟のシーンいきまーす!」



クリスタ「圧勝ムードであったはずが反転、窮地に立たされる事態となり、その最大の要因は散漫な動きによって連携が取れなくなったことに他ならない。連携といえば把握中に気づいたことだが、救出隊の核は驚くべきことにDランクの『シンカー』。まるで指揮官の如く采配で実力者たちを的確に動かす姿がとても印象的であり、それはマイセルたち四人のあのぎこちない動きにも合点がいくとともに【ガルキマセラ】というパーティは〝彼〟あってこそなのだと深く理解した。されでゅお……あっ」


オルド「はいカーット! もっかいいきまーす!」


ルゥ「ぷぷぷっ……〝されど〟を〝されでゅお〟だってw」


クリスタ「くっ……!」

    《今に見てなさいよぉ……!》



         〜テイク2〜


クリスタ「圧勝ムードであったはずが反転、窮地に立たされる事態となり、その最大の要因は散漫な動きによって連携が取れなくなったことに他ならない。(中略)それはマイセルたち四人のあのぎこちない動きにも合点がいくとともに【ガルキマセラ】というパーティは〝彼〟あってこそなのだと深く理解した。されど、それでもこの窮地を脱することは非常に難しく、皆散り散りとなっては疲労もあるためか防戦一方のすえに手傷を負う者が続々と出始めてしまう悪展開に。その結果……」


アッシュ「くっ、このままでは全滅です! 聖にょ様だけでも……あっ」


オルド「はいカーット! もっかいいきまーす!」


ルゥ「ぷぷぷっ……〝聖女様〟を〝聖にょ様〟だってw」


アッシュ「くっ……!」

    《今に見てろよぉ……!》



         〜テイク3〜


クリスタ「圧勝ムードであったはずが反転、(中略)皆散り散りとなっては疲労もあるためか防戦一方のすえに手傷を負う者が続々と出始めてしまう悪展開に。その結果……」


アッシュ「くっ、このままでは全滅です! 聖女様だけでも逃げてください!」


ルゥ「えっ? アッシュはどうすんの──って、まさか……」


アッシュ「……打ち上げはひとり天国でw」


クリスタ「私だけハブられる運びとなったw」


ルゥ「──!? ひどっ! 〝ぼっち〟とか鬼の所業じゃん!」


オルド「はいカーット! 居酒屋〝天国〟に予約1名様入りまーす!」


ルゥ「あれれっ!? なんだか行く流れになってない!?」


クリ・アシュ「いってらぁ〜」


ルゥ「やめて!? てか、そもそも地獄行きじゃなかったっけ私っ!?」


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