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第42話 交換こ


「──!! この音……剣と斧がぶつかった時のやつだ! しかもどっちも鉄製っ!」


 見ずとも聞けば分かる。この金属音が鳴るに至った背景がなんたるかを。


 種族不明の二人。体格、筋力、攻撃速度……それら全てがほぼ同等値の両者。

 片方が鉄の剣を、もう片方が鉄の斧を打ち合ったことにより生まれし音。

 私たち武器職人にとって大変馴染み深いものであると同時に快音のひとつ。


 そのためか職人魂に火が付いてしまったらしく、つい反射的に駆け出しては夢中で武器たちを眺めていた。

 当然、バレぬよう岩陰に隠れながら。こっそりと覗き見で。


 音の発信地点であるソコは今までよりも一際広い円形状の空間であり、地面から天井に至るまで光る苔が無造作に生えているため照明は要らなそう。

 そしてその場には数十体のゴブリンとボーグル、あとはオーガと思しき巨躯の魔物が一体と救出隊の面々……ではなく、別の冒険者が四人。どうやら戦闘中の様子。



 改めて武器の確認をしよう。


 ゴブリンどもの主な武器:鉄のナイフ、石の手斧、木の棒。


 ボーグルどもの(以下略):鉄の片手剣ショートソード、鉄の斧、木の棍棒、それと素手。


 オーガ(略):……筋肉。 


 冒険者たちの主な武器。

 赤髪:鉄の片手剣ショートソードもとい『聖光剣』

 白髪:ダンシャオ竹の弓もとい『精射弓』

 青髪:軽金属ライトメタルの棍もとい『倍伸棍』

 茶髪:鉄の槍もと……なんかゴメン。



 四人の冒険者は背を向け合うことで死角を極力無くし、包囲された状況でも落ち着いて対処している。

 とはいえ、多勢に無勢といった感じで徐々に追い詰められており、その最大の要因はやはりオーガの存在。

 今はまだ余裕ぶって後ろでふんぞり返っているようだが、それでも脅威であることに変わりはない。


 ボーグルとの一騎打ちでさえ苦戦を強いられている彼らでは、より上位の魔物を相手取るのは流石に無謀すぎる。

 それに加え、彼ら自身の動きがどこかぎこちないような……まるで戦い方を思い出しながら動いている、そんな感じ。


 にしてもあの四人、どこかで見たような……えーっとえーっと……あ゙ぁっ、思い出した! ガルキマセラの四人だ!


 どうりで見当たらないと思ったら既にココへ向かっていたのか。

 先駆けた理由は不明だが、恐らく彼らの誤算は救出隊の面々に気づけば道中で追い越されていたことだろう。

 本来ならココは立ち入り禁止区域。すんなり来れなくても当然の場所。

 なので道を知らないのは無理からぬ話であり、逆に知り得るとしたらココの関係者か興味のある者くらいだ。

 因みに私は後者。鉱石マニアである私が知らぬはずもなし。

 フェルムが知っていたことには少し驚いたが理由はなんてことはない。

 以前、あの三人が依頼がてら地理の把握をしていたのでその際に発見したのだ……と思う。


 まぁ、あくまでも予想なんだけどね……って、そろそろヤバそう! 助けに行かなきゃ!


 四人のピンチに急いで岩陰から飛び出そうとするも、「待ってください!」と何故か行く手を遮るアッシュ。その真剣な瞳に私は足を止めざるを得なかった。

 続けて、「俺一人で行きます……!」と静かに覚悟を告げた彼は、スラリと抜いた刀に向けてこう呟く。



「……行くよ、鬼滅丸」



 なっ……名前付けてるぅぅぅ〜っ!? しかも超カッコイイやつ! てか付けるにしても桃尻丸とかじゃないの!? だってモモタロウだしお尻好きそうだし!


 などと勝手に決めつけたうえに興奮している私を余所に、奇襲を仕掛けたアッシュはゴブリン五体を瞬殺。

 更には襲いくるボーグル三体も瞬く間に返り討ちにし、ふんぞり返っていたオーガの顔を見事に引き攣らせた。


 そのまま勢いに乗った五人はオーガを除く全ての魔物(多分、三十体くらい)を倒し終えると、間髪入れずに奴への攻撃を開始。警戒して臨戦態勢に入られる前に倒す気だ。


 一方、怒りの雄叫びを上げて怯ませんとするオーガ。

 人型だが寧ろ野獣のような獰猛さを感じられ、距離があるにも拘らず、私は肌が粟立つとともに思わず怯んだ。


 しかし、彼らは違う。

 さきの雄叫びにも誰一人として怯みはせず、そればかりか【ガルキマセラ】の四人は中程度の傷を負いながらも絶えず動き回ることで奴の気を散らし続け、その隙を突いたアッシュが〝刀技『辻斬り・一閃』〟を繰り出し、気取られることなくあの丸太の如く太い首を一瞬かつ綺麗に切断。短くも激しい戦いを制す結果となった。



「凄ぉ……格上の魔物を倒しちゃった……」


 勝利の喜びよりも驚きが勝った瞬間であr──



「──っぶない!!」


 咄嗟に『ゴクウの棍』を伸ばして強烈な突きを放つ私。

 皆がこちらを見て唖然としていようと関係なしに空間端の暗闇を攻撃。

 すると、見えぬ何かを突いた直後に「ギャアッ!?」という汚い叫声が空間内に響き渡り、ハッと我に返ったアッシュがすぐさま確認したところ、頑丈な岩壁にめり込んだ一体のゴブリンがそこに。


 マジあっぶなぁ! 油断も隙もありゃしな……ん?


 ふと何かが光ったので目線を下げると、奴の真下には不恰好だがお高そうな銀のナイフがキラリ。

 現状から察するに、光の届かぬ位置からあのナイフで不意を突かんとしていたのだろう。


 ふぅ……何はともあれアッシュが無事でよかったよぉ。偶々暗闇を見てたらなんか光ってさぁ──って、なになにっ!? なんでみんなして走ってくるわけ!? しかも超笑顔で!!


 襲われかけたアッシュを初め、【ガルキマセラ】の四人も何故かこちらへ駆け寄るなり私を褒め讃えだし、その理由がファインプレーによるものだと気づいた途端、嬉しくも恥ずかしすぎて一気に顔が熱くなった。



「いや〜っ、本当に素晴らしい! 流石は爆にゅ──聖女様です! ……で、そのマスクは一体なんですか?」


 ひと頻り褒め讃えた後、急に笑顔のまま確信を突いてきた赤髪剣士。


「ふぇっ!? あ、あはは……な、なんだろね……」


 とにかく笑って誤魔化す私。


「ゴホンッ……そっ、それにしてもアレは凄かったな! 俺様の棍より断然速く伸びてたんじゃないか!?」


 助け舟をくれたであろう青髪棍士からそんな話題が出たかと思えば皆一斉に頷き、何やら私の武器に熱〜い視線が集中。


 マっ、マズい! 聖女の加護としてなんとか辻褄合わせなきゃ! と奮起しつつも、「え、えーっと、あれはそのぉ……」と設定探しに苦戦していたまさにその時、腹の底から「ぐぅ〜」と例の虫が鳴り響き──



「…………テヘッ☆」



 ──というわけで、運良く腹が鳴ったお陰で話は有耶無耶となり、かなり遅めだが昼食を取る運びとなった。


 それから程なくして、比較的綺麗な場所に木工屋柄(金槌と鋸がモチーフ)のレジャーシートを敷いたら例に漏れず皆は苦笑い……かと思いきや、特に反応がないまま弁当を広げることに……??


 本日の昼食はサンドイッチ。

 具はツナマヨ、てりたま、ハムレタスの3種類。それらを2等分ずつ。

 本当は一人で野菜たちを返すつもりだったので当然だが弁当も一人分しか作っておらず、しかも街中で食べ歩きも考えていたため量も少なめ。


「ちょ〜っと物足りない気もするけど……まぁいいや。んじゃいただきま〜……ふ?」


 ガスマスクを外し、大口を開けて食べようとした寸前にふと気づく。

 私以外は皆同じ食べ物……それも例の乾パンと干し謎肉ではないかと。

 更には食事を前に「はぁ……」とため息を吐く五人の姿が目に映り、その様子から明らかにうんざりしているのが見て取れる。


 あ〜……毎日食べてるから飽きちゃってんだ……まっ、そうなるよね。しかもカチボソとバリカタらしいし。けど実際どんな味なんだろ……あっ、そうだ!


 閃いてすぐ、うんざり顔のみんなに〝交換こ〟を提案。

 家族以外では初めての試みなので緊張こそしたものの、彼らの驚く表情の中に喜びを垣間見られた気がして嬉しく思う。そして……




「……ご、ごちそうさまぁ……」


 これほどしんどい食事も初めてだ。

 絶対良くした方がいいよコレっ!! そう叫びたくなるほどに。


 ……でもさ、みんなが幸せそうに食べてくれたから本気でなんとかしてあげたいな……


 こうして食の改善に前向きとなる一方で、今後の行動についての話し合いが行なわれ……──



       〜メイキング&NG集〜



オルド「んじゃ次は〝戦闘後〟のシーンいきまーす!」



ルゥ「凄ぉ……格上の魔物を倒しちゃった……」


クリスタ「勝利の喜びよりも驚きが勝った瞬間であr──」


ルゥ「──っぶない!!」


クリスタ「咄嗟に『ゴクウの棍』を伸ばして強烈な突きを放つ私。皆がこちらを見て唖然としていようと関係なしに空間端の暗闇を攻撃。すると、見えぬ何かを突いた直後に──」


???「ギャアッ!?」


クリスタ「──という汚い叫声が空間内に響き渡り、ハッと我に返ったアッシュがすぐさま確認したところ、頑丈な岩壁にめり込んだ一体のゴブリンがそこに」


ルゥ:ナレ「マジあっぶなぁ! 油断も隙もありゃしな……って、オルドさん──!?」


オルド「……う、うっかり立ち位置を間違えて……ぐふっ……」


ネウ「──!? にっ、兄さん!?」


ガルマセの四人「ガクブルガクブル……」


クリスタ「あら、いつものチーンじゃないのね?」


アッシュ「あ、ソコ拾いますか……」


ルゥ「あーでも確かに聞きたかったかも。お得意のチーン」


クリ・アシュ「あ〜、言われてみれば……」



 その直後、同時に顔を見合わせた三人は一言ハモる。



ルゥ・クリ・アシュ「あーあ、どうせくたばるなら聞きたかったなぁ。十八番オハコのチーン」


ネウ「──ッ!? ににっ、兄さんの鈍チーン!!」


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