第39話 べっ、別にアンタのためじゃないんだからねっ!
「……で? こんなとこで何してたのよアンタ……あっ、まさかカツアゲ──!?」
瞬時に怒り顔から驚き顔、そして呆れ顔へと表情を変えたピスカ。
相変わらず感情の起伏が激しい女性だが、どうやら思い込みも激しいようだ。
「はぁ……ったく、やめときなさいよそんなダサいこと」
「いやいやいやっ、そもそもそんなことしてないからね!? ただ刀を見せてもらってただけだから!」
慌てて否定する私に対し、ピスカは「ふ〜ん……」と訝しむ視線を寄越してから「……ま、いいわ。それよりコレ、アンタのでしょ?」と何かを突き出す。
……? コレって……あ゙ぁっ、私の彫刻刀〜!
速攻で男剣士に刀を返却し、彼女の手ごと彫刻刀を握り締めて拾った場所を伺ったところ、恥ずかしかったのか頬を赤らめながら「あっちよあっち! 受付前っ! あ〜も〜いいから離しなさいよ!」と半ばヤケになって教えてくれた。
きっとあの時だ……ツールポーチから取り出した際にこのコだけ仕舞い忘れたに違いない。
置き去りにしてしまった彫刻刀に「ごめんよぉ……」と心の中で謝りつつ無くさずに済んだことを素直に喜び、ピスカに「見つけてくれてありがとね!」と感謝の意を伝えると、今度は照れ顔を見せながらも口元を緩ませた彼女が一言。
「べっ、別にアンタのためじゃないんだからねっ!」
……ツンデレ最高かよ。
視線の先ではレジーナが温かい眼差しを向けており、それに気づいたピスカが顔を真っ赤にして言い訳を。
くふふ……あんなムキになっちゃってかんわいぃ〜♡
ムキになって吠えるピスカと周囲の目を気にしながら宥めるレジーナ。
その二人のやり取りを微笑ましく眺めていた折、ふとあることに気づく。
……あれ? そういえばあの二人がいない……ひょっとして何か用事とか……?
とりま気になったので聞いてみた。もしかしたら喧嘩したのかもしれないし。
「……は? なんでそうなるのよ。アイツらは野暮用でいないだけだから」
どうやら喧嘩による別行動なわけではないらしいのでホッと一安心。
野暮用ということはプライベートな用事だろうからこれ以上の詮索はしないでおこう……と、思ったのだが1つだけ気になることがある。それは……
「……もしかして、エッチなお店?」
「──!? んなわけあるかぁぁぁっ!!」
二人にめっちゃキレられた。しかも顔に唾飛んだし。
私が薬屋柄の白ハンカチ(ライポがモチーフ)で顔を拭いていると、余程シリエスたちの疑いを晴らしたいのか聞いてもいないのにピスカがネタばらしを。
「はぁ……見舞いよ見舞い。治癒院にウチらの同期が入院してるのよ、ずっと」
「入院? ずっと? ……あっ、まさか……!」
勘づいた私に頷く二人。
すると暗い雰囲気になる寸前、急にレジーナから一言「だがそれも今日で終わる……ルゥ、貴方のお陰だ」と告げられて思わずキョトン顔になると、感謝される覚えのないことを見透かしたのか、私の顔を見て笑みを浮かべた彼女は言葉の真意を口にした。
……なるほど、そういうことか。
どうやら私から加護をもらったお陰で仇敵ゲシュペンストを討伐でき、そのうえ友人に掛けられた呪いも解けそうだからということらしい。
「だからありがとう……貴方には本当に感謝している」
「えへへ……こう面と向かって礼を言われるとなんだか照れちゃうなぁ」
「ふふっ……でだ、この大恩を少しでも返したいのだが何かしてほしいことはあるか? なんでもする所存だ」
「ふぇっ!? そんないきなりぃ!?」
唐突すぎてつい驚いてしまった……が、彼女のその真剣な瞳に恥じぬよう私も真剣に考えねば。
う〜ん、なんでもかぁ……それじゃ何してもらおっかなぁ。なんでも……なんでも……あっ。
不意に思い浮かんだのは例の鬼退治の件。
透かさず「それならっ──」と勢いよく頼み込もうとするも、ある考えが頭を過る。
もしこの二人に何かあればシリエスたちに恨まれてしまうのではないか……と。
咄嗟に口を噤み、言いかけた言葉を飲み込む私。
二人から向けられた訝しむような視線に戸惑い、何か誤魔化す策はないかと焦りだしたその時、思わぬ所から私の願いが露わとなる。
「それなら鬼退治をお願いします!!」
私の願いを代弁したのはまさかの男剣士。
更には頼まずとも事情の説明までも丁寧にしてくれ、意外にも頼りになることを知ったとともに話す彼の横顔を見ているうちに頬が熱を帯びていくのを感じた。
「……ふむ、ブルーオーガか……なるほど相分かった。その件、喜んで引き受けよう」
「ふっ、ふんっ! でも勘違いしないでよねっ! 今回だけなんだからっ!」
騎士道精神とツンデレスピリッツによる夢の共演……くぅ〜っ、推せる!!
……とまぁ、なんにせよ超心強い二人を引き入れることができた私は、男剣士に感謝のハグをして笑顔で別れた後、いつの間にか勧誘を終えていたフェルムと合流。総勢十名となる仮の救出隊を結成した。
となると、あとはプラータとエタンさえ来てくれれば丁度十二人になって正式な救出隊の完成だぁ! って、思った途端に二人が依頼から戻ってきたよ。めっちゃタイミング良すぎて逆にヤ〜な予感……──
「──大変お待たせいたしました。鑑識の結果、ゴブリンの唾液と判明いたしましたので、これより緊急依頼の要請を──」
フェルムとオセロア。この二人の予想は見事的中となり、私たちは依頼書が掲示板に貼られる前にこの依頼を受注。一人ずつギルド登録証を提出する運びとなった。
Aランク:『レジーナ』『ピスカ』
Bランク:『フェルム』『プラータ』『エタン』
Cランク:『ウルザ』『エレバス』『ゴレーラ』
『スカラベ』『ハル』『モニア』
騒めき立つ冒険者たち。それもそのはずだ。
何しろランクは違えどもトップクラスの実力を持つ者たちが一堂に会しているのだから。
よーしっ、最後は私のターン! ギルド登録証オープン!
とうとう私の出番だと、気合いを入れて登録証を提出。
だが何故か受け取らぬばかりか呆気に取られた表情を浮かべるオセロア……って、みんなも!?
「……あの、何をされているのですか? もしやウケ狙い……?」
「は? え? どゆこと……?」
互いの言動を理解できずにいる私たちの頭上には不可視のハテナマークが。
すると、現状にいち早く気づいたフェルムが私に向けて二言。
「……なぁソレ、生ギルのやつだぞ? つーか冒険者登録してねぇだろお前」
この瞬間、三度目となる落雷が直撃。あまりのショックに白目を剥いた。
因みに生ギルとは『生産者ギルド』のことを指すみたい。ぐぬぬっ、またしても都会マウントぉ……!
閑話休題っ!
どうしても依頼に参加したかったので「なら今から登録する!」とストレートに宣言するも、オセロアから「浅はかですね」と言葉のカウンターを貰う結果に。
加えて彼女の説明では、この依頼はDランク以上でなければならず、且つ共闘戦の経験が豊富であることが必須条件だとも。
「そ、そんなぁ〜……って、ちょっとタンマ。なんかあと一人足りてなくない?」
その事実に気づいた途端、背後から聞き慣れぬ男の声が届く。
「皆さん、お待たせしてすみません。用意に少し手間取ってしまって」
謝りながら現れたその男は銀髪の爽やか系イケメン。
今の台詞から察するに、どうやらこのイケメンが救出隊最後のメンバーらしく、私のすぐ隣に来て登録証を提出したのでまず間違いない。
てか、最近どこかで見たことのある顔……けど一体どこで……
Dランク:『シンカー』
……なるへそ、どうりで。
あの爺さんから教えてもらった中にいたのだから見覚えがあって当然だ。
……あれ? でも確か五人組だったはず……
ギルド内を隈なく見渡したが既に退出済みなのか、残りの四人は見当たらなかった。
尤も、参加人数に限りがあるのでいる必要性は全くないのだが。……まっ、どうでもいっか。
それよりも今は依頼に参加できる方法を見つけきゃだ。
《私だけ何もしないなんて絶対にイヤ……諦めるもんか!!》
しかしその意気込みも虚しく、どれだけオセロアに頼み込んでも許可は貰えず。
そして、そうこうする間に出発の刻が近づき……──
〜メイキング&NG集〜
オルド「んじゃ次は〝ツンデレ〟から〝ネタばらし〟のシーンまでいきまーす!」
ピスカ「べっ、別にアンタのためじゃないんだからねっ!」
ルゥ:ナレ「……ツンデレ最高かよ」
クリスタ「視線の先ではレジーナが温かい眼差しを向けており、それに気づいたピスカが顔を真っ赤にして言い訳を」
ルゥ:ナレ「くふふ……あんなムキになっちゃってかんわいぃ〜♡」
クリスタ「ムキになって吠えるピスカと周囲の目を気にしながら宥めるレジーナ。その二人のやり取りを微笑ましく眺めていた折、ふとあることに気づく」
ルゥ:ナレ「……あれ? そういえばあの二人がいない……ひょっとして何か用事とか……?」
クリスタ「とりま気になったので聞いてみた。もしかしたら喧嘩したのかもしれないし」
ピスカ「……は? なんでそうなるのよ。アイツらは野暮用でいないだけだから」
クリスタ「どうやら喧嘩による別行動なわけではないらしいのでホッと一安心。野暮用ということはプライベートな用事だろうからこれ以上の詮索はしないでおこう……と、思ったのだが1つだけ気になることがある。それは……」
ルゥ「……もしかして、エッチなお店?」
ピス・レジ「──!? んなわけあるかぁぁぁっ!!」
クリスタ「二人にめっちゃキレられた。しかも顔に唾飛んだし。私が薬屋柄の白ハンカチ(ライポがモチーフ)で顔を拭いていると、余程シリエスたちの疑いを晴らしたいのか聞いてもいないのにピスカがネタばらしを」
ピスカ「はぁ……見舞いよ見舞い。治癒院にウチらの同期が入院してるのよ、ずっと」
ルゥ「入院? ずっと? ……あっ、まさか……! 重度の性びょ──」
ピス・レジ「──んなわけあるかぁぁぁっ!!」
ルゥ「お、おぉ……見事なテンドン……」
オルド「はいカーット! 今日のランチは〝天丼〟にしまーす!」
ルゥ・クリ・ピス・レジ「やったぁ〜♡」




