第38話 緊急依頼
「──っていうことがあったのぉ! だから慰めてオセロアちゃ〜ん!」
受付カウンターに身を乗り出して先の出来事をオセロアに報告。
「そうでしたか……ご報告ありがとうございます。あと〝ちゃん〟はおやめください」
興奮気味な私と冷静沈着な彼女。とにかく温度差がエグい……が、それもまた良し。
お陰で私も「あ、はい……」とヘコみ──冷静になれたのだから。
街に戻り着いて早々に私とフェルムは冒ギルへと向かい、現在に至る。
ティナちゃんとゴルトは何やら不都合があるとかで別行動中。
南の洞窟こと【神隠しの洞】で保護した女性を治療するため、今頃あの二人は治癒院へと向かっているはずだ。
今思い返せば街を出る前にココへ寄った際も中へは入らなかった。……なるほど、あの時も不都合があるからだったのか。理由は……まぁ、あとで聞けばいいや。
それより今はキーニャたちの救出が最優先。一刻も早く助けなければ手遅れになってしまう。
だからこそ、数居る職員の中でオセロアに報告できたのは実に運がイイ。
だって、優秀な彼女ならきっとなんとかしてくれるはずだもの!
「……残念ですが、今の証言だけでは動くことができません」
「……え? ……えぇ〜っ!?」
普通にダメでした。全く予期してなかったから時間差で驚いちゃったよ。
しかもフェルムに至っては珍しく静観しちゃってるし。うーん、一体どうすれば……
「……はぁ、何か証拠となる品はお持ちですか? 特にその方々の所持品や魔物の武器などが望ましいのですが」
「──!! オセロアちゃ〜ん!」
「ですから〝ちゃん〟はおやめください」
ため息を吐きつつも助言をくれたオセロア。素っ気ない態度とは裏腹に実はとても優しい女性。
だから信じることにしたんだ……何故それらが証拠となるのかは分からないけど、言われたとおりにすれば間違いないってことだけは分かるから。
そう確信し、何かないかとツールポーチの中を漁り始めた私。慌てつつもきちんと床に並べながら。
「アレでもないコレでもないドコにもない……って、そもそもなんも手に入れてなくない!?」
ここでやっと気づいた。ドロップアイテムなど皆無だった事実に。
これには冷静なオセロアも「はぁ……」と本気のため息。数分前の自分を蹴り飛ばしたい。
しかしそんななか、静観していたはずのフェルムがカウンターテーブルの上に何かを置いた。
気になったのでひょっこりと裏から覗いてみると、そこには顔写真付きの銀色に輝くあの証が。
「──!! そうだソレだ! ソレがあったんだ!」
このギルド登録証はキーニャのもの。
なんちゃって見張りのゴブリンAが舐め回していた例のブツ。
どうやら私が女性に応急処置を施している間に回収していたようだ。う〜む、中々やりおる……
「……!! こ、これは……かしこまりました。今すぐ鑑識に回しますので暫くの間お待ちください」
ブツに軽く触れた途端、何かに気づいたオセロアは席を立ち、凛とした佇まいのまま早足で移動。
するとその最中に「……20か?」と一言フェルムが謎の問いかけをし、「16……いえ、12でお願いいたします」とオセロアが返す。
えっ? えっ? なんなの今のやり取り……? と私が不思議がっていると、唐突に「行くぞ」とフェルムも移動を開始。
全く訳も分からずだが付いていくことにした……が、その前に取り出した鑿やら彫刻刀やらを再び仕舞った。
「よぉ爺さん、こん中でオーガ倒せる奴らいるか?」
フェルムが真っ先に向かい、そう質問した相手は意外にも呑んだくれの爺さん。
古びた布服に短剣ひとつと、とても冒険者とは思えぬほどの超軽装備。
にしてもなんでそんなこと聞いたんだろ……? とまたもや不思議がっていたところ、爺さんが無言で右手を出し、フェルムが銀貨1枚を手渡すというなんとも怪しげな取引を目撃。
その後爺さんはニヤリと笑ってから「まいど」と一言告げ、左手で指を差しつつ説明を始めた。
Cランクパーティ【アームストロング】
ビーム語で〝力こそパワー〟の意。
重量武器の扱いに長けた四人組のマッスルパーティ。
男3:女1の割合。リーダーは女斧士『ウルザ』
全員の顔には切り傷があり、その理由を聞くと四人とも顔を真っ赤にして怒る。要は黒歴史。
Cランクパーティ【ハルモニア】
古代語で〝調和〟の意。
姉『ハル』と妹『モニア』による双子の美女パーティ。阿吽の如く息の合った連携がウリ。
両者とも立ち回りが上手く、共闘戦でも器用に動いてくれる。
パ名(パーティ名)に違わず文質彬彬であるため男女問わず人気が高い。
Dランクパーティ【ガルキマセラ】
古来より北方地域に伝わる〝魔除けの魔物〟からパ名を拝借した五人組の男パーティ。
リーダーは斥候士『シンカー』、思慮深く博識のため皆から頼られる存在。
「他にもBランクの奴らなら倒せると思うが……まっ、ブライテスタ以外は……なぁ?」
……爺さんが言わんとしていることは分かる。
シリエスたち四人以外は全員、ゲシュペンストによって漏れなく治癒院送りにされてしまったからだ。
そして同時に、何故フェルムがこの情報を真っ先に知り得たかったのかを理解した。
それは、キーニャたち三人を救出するためのメンバーを集めるつもりだから。
確かにそう考えればオセロアとのやり取りにも合点がいく。
《あれはそう……依頼受注の上限人数──ッ!!》
きっと二人は『緊急依頼』になること前提で動いている。
特にコイツは救出のみならず、その先を見据えて〝ブルーオーガの討伐〟まで視野に入れているのだろう。
だからより戦力となる人材を求め、こうして情報を得ているのだ。
ふふっ、いつもは考えなしのくせに……やっぱ腐っても高ランク冒険者なんだなぁ〜と微笑ましくフェルムの横顔を眺めていると、それに気づいたコイツは「な、なんだよ……」と困惑した表情を見せる。
「べっつにぃ〜! それより次どうすんの? 早速誘ってみる?」
この問いかけにより、私が理解したことを理解したフェルム。
困惑から驚き、次いでニヤけ顔へと表情を変化させ、「そうだなぁ……」と呟くなり熟考モードへ突入。
あらま、こうなると長いんだよねぇコイツ……あっ、そうだ!
ただ待っているだけなのも暇なので、ついでに私も考えてみようかと。
あの爺さんが教えてくれた全パーティの総人数は十一人……そこにフェルムと私、あとコイツのことだしプラータとエタンも加えるだろうから……あれ?
この時、オセロアが予想する上限人数を超えている事実に気づき、考えることを放棄。慣れないことはするもんじゃないなぁと思った。
結局は暇となったのでなんとなく辺りを見渡していたところ、見覚えのある武器を発見。
不意にある予定を思い出し、その武器を持つ人物の元へと猛ダッシュで接近。背後から声をかけることに。
「ねぇキミっ!」
「どわぁっ!? ビっ、ビックリしたぁ……!! って、聖女様ぁ!?」
「あははっ、ごめんごめん! ……でさ、もし鬼退治に誘ったら一緒に来てくれる?」
「は、え? お、鬼退治……? あっ、そういや前にも……」
「……ん? 今なんか言った?」
「いっ、いえっ、なんでもありません!」
急な質問によるせいかやけに慌てる男剣士に対し、私は簡単に事情を説明。
だが反応はすこぶる悪く、「無理です無理です! 俺みたいなクソ雑魚ナメクジじゃ足を引っ張るだけですから!!」と全力で断られた。
うわぁ……めっちゃ拒否るじゃん……って思わずドン引きしたのは内緒。
依頼については仕方なく諦めたものの、引き下がる交換条件として彼が持つ武器を再度見せてもらえる運びとなり、晴れて当初の目的を達成することに成功。
くぅ〜っ、これでやっと刀が造れるよぉ! そう思ったら自然と笑みが零れたのは言うまでもないだろう。
そしてそれほどまでに夢中となって刀を眺めていると、何やら誰かが誰かに話しかけてi──
「──ねぇ……ねぇっ……ねぇってば!」
「ふぇっ!? えっ、なにっ、私っ!?」
突然の大声に驚き振り向くと、そこには何故か怒り顔のピスカ……と、苦笑しながら小さく右手を振るレジーナが立っていて……──
〜メイキング&NG集〜
オルド「んじゃ次は〝ドロップアイテム〟のシーンいきまーす!」
オセロア「……はぁ、何か証拠となる品はお持ちですか? 特にその方々の所持品や魔物の武器などが望ましいのですが」
ルゥ「──!! オセロアちゃ〜ん!」
オセロア「ですから〝ちゃん〟はおやめください」
クリスタ「ため息を吐きつつも助言をくれたオセロア。素っ気ない態度とは裏腹に実はとても優しい女性」
ルゥ:ナレ「だから信じることにしたんだ……何故それらが証拠となるのかは分からないけど、言われたとおりにすれば間違いないってことだけは分かるから」
クリスタ「そう確信し、何かないかとツールポーチの中を漁り始めた私。慌てつつもきちんと床に並べながら」
ルゥ「アレでもないコレでもないドコにもない……って、そもそもなんも手に入れてなくない!?」
クリスタ「ここでやっと気づいた。ドロップアイテムなど皆無だった事実に──って、何出しちゃってんのアンタっ!?」
ルゥ「ふぇ? 何って……鑿やら彫刻刀やらでしょ? ほら、見れば分かる──に゙ゃあ゙ぁぁぁ〜っ!!」
クリスタ「ルゥがツールポーチから出したもの……それは、大量のドロップアイテムならぬ〝エロップアイテム〟だったww」
ルゥ「そんなナレーション要らないから!!」
オセロア「それにしてもこんなに沢山……それもエグいのばっか……」
クリスタ「きゃははははww モザイク案件ww てか幾ら相手がいないからってサカりすぎでしょww」
フェルム「…………」
《お、俺のよりデカいのがこんなに……》
ルゥ「あ、あゔうぅ……恥ずかしすぎて死にそう……」
オルド「はいカーット! 死因は〝恥ずか死(笑)〟でーす!」
ルゥ「勝手に死なすなぁぁぁ〜っ!!」




