表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/53

第35話 噂の八百屋さん


「……まっ、いっか。見た感じ悪いコじゃなさそうだったし」


 先程まで仔犬がいた場所を一瞥した私は、玄関先に置かれた野菜たちに視線を移し、そのヨダレで輝く姿を見つめながら「それよりあの野菜たちをどうにかしなきゃだ……」と呟いては考え事に耽る。


 本音を言えばこのまま有難く頂戴したいところではあるが、知らぬ存ぜぬで済ませたくはないのでどうにか解決するつもりだ。あの出所不明とされる野菜たちのことを。


「うーん、ただマズいかもこの状況……」


 これだけの野菜を集めるには八百屋か市場で買うしかない……が、まさか犬が買い物などするはずもない。

 そうなると考えられるのは……盗み。

 恩返しはとても嬉しいが盗品を受け取るわけにもいかず、当然ながら疑われる可能性も出てくるわけで……


 今後の展開に「……はぁ、なんだかヤな予感……」と不安を抱きつつも本日の予定を変更。

 冒ギルでの商いを急遽キャンセルし、盗まれたと思しき店へ野菜たちを返しに行くことにした。



「さ〜て、張り切って行きますか!」


 とにかく不安を吹き飛ばそうと玄関先で気合を入れた私。

 例の如く朝のルーティーンを済ませ、これから盗まれた可能性の高い最寄りの八百屋へと向かうところ。

 初めは市場も疑ったがココからでは距離が遠すぎるため候補から除外。

 たとえ犬の脚が速くとも一晩で野菜を集め切るのには物理的に無理がある。そう判断した。


「まっ、兎にも角にも行ってみれば分かること! てなわけでいざ出発ぱ〜──」


「──お待ちください!」


 思わぬ急な呼び止めに驚き、出鼻を挫かれてしまったことで「のわわっ!?」と危うく転倒しかけたものの、持ち前の負けん気と鍛え上げた体幹で無理矢理踏ん張ってそれを回避。どうにか無様な姿を晒さずに済んだ。


 ふぅ、危なし危なしぃ……てか、なんでティナちゃんがここに? って、フェルゴルも一緒っ!? しかも超ニヤついてるし!


 転倒しかけた私を見て、信じられぬほどのニヤつき顔を浮かべるフェルムとゴルト。

 珍しい組み合わせではあるが物凄〜く腹が立ったため、ゴルトに『飛双脚ドロップキック』をかましてフェルム諸共吹き飛ばしてやった。どうだ参ったか!


「ふふふっ、仲がおよろしいことで」


「──!? 戯れてると思われた!?」


 フェルムとハモってしまった。遺憾ながら。


 それはともかく、「ところでみんなはなんでここにいるの?」と三人に伺ったところ、ティナちゃんの口から出たのは「お姉様のお供をするためです」という、まるで私の行動を見透かしたかのような言いぶり。


 どうやら朝からずっと悩んでいる様子の私を窺っているうちに大凡の見当が付き、同行するためにこうして呼び止めたのだそう。


「へ、へぇそうなんだぁ……流石は我が妹イイ勘してるぅ……」


「ふふっ、お褒めに預かり光栄です。尤も、妹は姉を見て育つとその道の権威者も仰っておりましたので当然の帰結ではございますが」


「えっ? あ、あぁ、当然の秘訣ね? うん、知ってる知ってる」


「ブハッ! だははははっ!!」


 突然大笑いを始めたフェルム。

 私が「なっ、何がおかしいのよ!」と焦り怒るも笑いを止めず、更には私の知ったかぶりを指摘してくる始末。


「ヒィヒィ……だ、だってよぉ……くくっ、帰結を秘訣って……当然じゃねぇから秘訣なのに! だはっ、だははははっ!!」


 輪を掛けて笑い捲るコイツのせいで羞恥心は完全にキャパオーバー。

 全身に恥熱が行き渡ったところで「アンタなんか嫌ぁぁぁい!!」と叫びながら地面を踏み締め、怒りの『鉄山靠』をズドンッ!!


 ムカつくアイツを吹き飛ばしたことで気分はスッキリ晴れやかに──って、ちょっとやり過ぎちゃったかも……まっ、いっか。


 幸先が良いのか悪いのか微妙なところではあるが、その後私たち四人は目的地の八百屋へと向かいだした。

 街外れから街中へ入り、今日も世話になるはずだった冒ギルの前で「ごめんね?」と小さく謝りつつも止まることなく進み続けていると、間もなくして八百屋の看板が視界に映る。



【八百屋〝ラ・フレシア〟】



「おっ、ここだここだ! レオもお世話になってるっていう噂の八百屋さん!」


 買い物上手なレオの話によれば、この店の商品はどれも新鮮なため小さい店ながらも常連客は大変多く、昔から皆に愛されている街一番の八百屋なのだとか。


 いいなぁ街一番……だけど、じきに私もなってゆくゆくは……!!


 などと静かにやる気を再燃させていた折、何気ない様子のフェルムが口を開く。


「へぇ、街一番か……全然そんな店には見えねぇけどな」


 店の外装を見るなり失言を吐いたコイツにイラついた私は、ノールックで隙だらけの腹部に肘鉄をドスッ!


 腹部を押さえて「テっ、テメっ、またっ」と文句を垂らしていたが、人前でアーツを使わないであげただけ有難いと思ってほしい。

 とか思いつつ店の手前にまで辿り着くと、何やら店主らしき人物が通行人に声をかけ捲っている姿を発見。

 見るからに必死になって聞き込みしている様子ではあるが、未だ距離があるため話の内容までは聞き取れず。


 ……? 一体何を聞き回ってんだろ? あんなに必死ってことはきっと只事じゃないよね……


 そう感じては妙に気になってしまったため、聴覚スキル『地獄耳』を発動して話の内容を盗み聞きすることにした。



「突然すみません!」


「きゃあっ!?」


「このような犬を見掛けませんでしたか!? 美しい銀色の毛並みに賢そうな顔の仔犬を!」


「は、はぁ? そんな犬知るわけないでしょ」


「そう、ですか……ありがとうございました……」


「……ったく、ビックリさせないでよね! しかもたかが犬探しで必死になるとかキモんだけど!」


「す、すみません……」


「ふんっ!」



 ぐぐぐっ……あのパツキン女超ムカつく! 次もし見掛けたら腰が抜けるくらいビックリさせてやる! ……って、それよりさっきの話……アレってズバリあの犬のことじゃない!?


 いきなりアタリを引いた嬉しさよりも解決したい気持ちが勝り、急いで店主の元へと駆け寄るなり「いっ、今っ、犬の話してましたよね!?」と超前のめりに。


 鼻息を荒げて興奮する私を目にし、驚いた店主は「ひぃっ!? すっ、すみませんすみません!」と急に謝りながら何度も頭を下げてきた。い、一体何故……


「ふふっ、きっとお姉様の溢れんばかりの魅力に低頭せざるを得なかったのでしょう」


「いや単にビビったからだろあの迫力によ」


 フェルムの一言に野次馬らが一斉に頷いた──って、そんなに凄かった私の迫力っ!?


 ……という茶番はさて置き、野次馬らから注目されすぎていたため店内へと移動した私たちは、八百屋の男店主『ルーファス』さんから聞き込みの内容とその理由を伺った。


 なんでも3日前に出掛けていった娘が一向に帰ってこず、心配に思っていたところに件の仔犬が現れたのだという。それも、口に何かを咥えた状態で。


 仔犬は咥えた何かを地面に置くと、素早く野菜たちを咥えては宙に放っていき、店先に置いてある持ち帰り用の麻袋へ入れるなり去っていった。


 訳が分からず呆気に取られたものの思い出すように我に返ったルーファスさんは、仔犬が置いていった何かに目を向けて言葉を失うことに。


 何故ならそれは、娘が肌身離さず身に付けていたはずの星型ネックレスであり、亡き妻『メローナ』さんが今際に遺した大切な代物だったからだ。


「なるほど……だから犬を探してたんですね? そのネックレスの出所を知るために」


「は、はい……尤も、会話ができないので探したところでどうしようもないことは分かっていたのですが……それでも娘の、キーニャのことを思うと……ゔぅぅ……」


 愛娘『キーニャ』を想い、涙を流すルーファスさん。

 その心痛む姿を目の当たりにした私たち四人は、満場一致でキーニャの捜索を手伝うことに決めた。


 ……あれ? もしかしてあの犬はこうなるように私たちを……っていやいや、それは流石に考えすぎでしょ! 幾ら賢くても犬にできるわけないって!


 絶対にあり得ないと、首を左右に振って考えを否定。

 そんな私の奇行に皆が不思議に思うなか、気を取り直して助力を申し出ると……──



       〜メイキング&NG集〜



オルド「んじゃ次は〝店主登場〟のシーンいきまーす!」



ルゥ:ナレ「ぐぐぐっ……あのパツキン女超ムカつく! 次もし見掛けたら腰が抜けるくらいビックリさせてやる! ……って、それよりさっきの話……アレってズバリあの犬のことじゃない!?」


クリスタ「いきなりアタリを引いた嬉しさよりも解決したい気持ちが勝り、急いで店主の元へと駆け寄るなり──」


ルゥ「いっ、今っ、犬の話してましたよね!?」


クリスタ「──と超前のめりに。鼻息を荒げて興奮する私を目にし、驚いた店主は──」


八百屋の店主「ひぃっ!? すっ、すみませんすみません!」


クリスタ「──と急に謝りながら何度も頭を下げて──」


《──ゴチンッ!!》


ルゥ「いったぁ〜い! 頭突き喰らったぁ!」


クリ・監督「ブフッw」


ルゥ「きぃ〜っ、全然笑い事じゃないし! ホントめっちゃ痛いんだから!」


クリスタ「あらそうなの? それよりもうちょっとで念願のキスができそうだったのに残念ねw」


ルゥ「ななっ、なにぉ〜! 私にも相手を選ぶ権利くらいあるやい!」


八百屋の店主「ひぃ!? すっ、すみませんすみません! こんな選ぶに値しない枯れたおっさんですみません!」


ルゥ「あ、いや、別にそういうわけじゃ──」


八百屋の店主「──ですがこんな私にも選ぶ権利があると思いましてできれば知的でお淑やかな細身の女性がいいんです! そう、貴方とはまさに正反対となりますがこれだけは譲れないんです断じて固く絶対に!!」


クリスタ「ブハッw正反対とかwしかも超早口で断固拒否られてて薬草ww」


ルゥ「ぎ……」


クリ・監督「……ぎ?」


ルゥ「ぎに゙ゃあ゙ぁぁぁーっ!! だぁれが野蛮で下品な肥満女子だぁぁぁーっ!!」


クリスタ「きゃははははww」


監督「ゲラゲラゲラww」


八百屋の店主「ひぃぃぃっ!? そっ、そこまで言ってませぇぇぇ〜ん!!」


オルド「はいカーット! 今から生まれ変わってきてくださーい!」


ルゥ「煩ぁぁぁーい!! これでも喰らえぇぇぇーっ!!」


オルド「──はうあっ!? またもやチーン……」


クリスタ「ヒィヒィ……ちょっ、私を笑い殺す気なのアンタww」


店主・監督「ガクブルガクブル……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ