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第34話 謎の進物


「野菜がいっぱい! しかも超テカってる!」


 目の前の光景が意味不明イミフすぎるせいか、ツッコミを忘れてありのままを叫んでいた。

 同時にティナちゃんの言う〝謎の進物〟の正体が色とりどりの野菜たちであることを理解する……が、本当に意味不明イミフすぎて思考が追いつかず、通常なら感じるはずの嫌悪感や恐怖感とはまた別の感情を抱く。


 にしても、よくこれだけの種類を集められたもんだ……しかもたった一晩でさ。誰だか知らないけど凄いよ、ホント。


 興味と感心。それ以外に抱いた感情はなく、「どれどれ」としゃがみ込んではマジマジと野菜たちを見てみることに。


 胡瓜キュウリ蕃茄トマト茄子ナス南瓜カボチャ玉蜀黍トウモロコシ馬鈴薯ジャガイモ西瓜スイカ

 大根ダイコン人参ニンジン苦瓜ゴーヤ糸瓜ヘチマ冬瓜トウガン──って、瓜科多すぎない!?


 今度こそツッコミを入れてやったものの、それらはまるで神に捧げる供物よろしく感謝の気持ちが伝わるよう置かれている気がしてならなかった。まぁ、私はしたことないけど。


「うーむ、それにしても一体誰が……あっ! まさか天使への貢ぎ物なんじゃ──!?」


 透かさずティナちゃんの方を振り向くも、「いいえ、その線はないかと存じます」と彼女はあっさり否定。

 てかさ、天使に関しては否定しないんだ……ひょっとして自覚してる?


「閑話休題といたしましょう」


「え? あ、うん……」


 閑話を休題した。きっと恥ずかしかったからだ。

 天使の如く純真無垢で聡明叡智なうえに容姿端麗であることを自覚していると知られた事実が。


 そっかそっかぁ、自覚してたのかぁ。それはそれで偉いと思うけどなぁ私。

 だって今まで自慢も驕りも一切しなかったし、寧ろ気高さすら感じて勝手に尊敬してたくらいだもの。


 その可愛すぎる御尊顔を微笑ましく眺めながらそう思っていると、笑顔で返してくれているはずの妹から怒りの籠った言葉と圧をもらう羽目に。


「お、ね、え、さ、ま〜? 閑話休題とお伝えしましたよねぇ?」


「はっ、はいぃぃぃっ!!」


 今度こそ閑話休題。気持ちを切り替えて謎の進物についての推理を始めた。


 先ず考えるべきはその目的だ。

 なにゆえ進物を捧げるような真似をしたのか、それさえ分かれば自ずと犯人が浮上すると睨んでいる。


「きっと恩返しかと」


 私もそう思う。てか、それしか思いつかないし。


 ただ残念ながら犯人は浮上せず。

 となれば、次に考えるべきは対象が誰かということ。

 候補はこの工房に住まう八人……いや、ティナちゃんは違うみたいだから七人か。


「従者らも違うかと」


 私もそう思う。理由は幾らイケメン揃いでファンがいたとしても贈り物に野菜を選ぶとは考えづらいからだ。


 そうなると残るはあと三人。本命のイリアさん、対抗のレオ、そして大穴の私……って、自分で大穴とか思ってるの惨めすぎるぅ!


「くふふ……」


「えっ? ど、どしたの急に……?」


「し、失礼いたしました……ですが彼はあり得ないかと……くふっ、くふふ……」


 察したティナちゃんに笑われて今にも泣きそうだけど私もそう思う。だってレオ野菜苦手だし。


 ということで早くも二人に絞られたわけだが、正直なところ結果は目に見えている。それは──



「──お姉様ですね」


「そうそう、イリアさんしか勝たん──って、え゙ぇ〜っ!? なんでそうなるのぉ!?」


 完全に意表を突かれて驚きの声を上げる私に対し、笑い終えたティナちゃんは真顔で推理を口にする。


「お姉様も御承知のとおり、わたくしたちがイリア様の元を訪れてから今日こんにちまでにこのようなことは一度たりともございません。ならば直近の出来事が関係しているのは明白。つまり、この事件はお姉様の〝やらかし〟によって引き起こされたものなのです!」


「なななっ、なんだってぇぇぇ〜!?」


 この時、落雷に打たれたような衝撃が走った。なんとなく既視感を感じつつ。


 だが確かにそうかもしれない。イリアさんはこの2年間全く外出できていないというし、レオだって必需品の買い物以外は家事の手伝いで忙しいもの。


 それに心当たりがある。直近どころかつい昨日の出来事だ。

 きっと客(冒険者たち)に多くの武器を託したことへの感謝がこの事件を引き起こさせてしまったに違いない。誰が犯人なのかは分からないけどそんな気がする。


 そっかぁ、あの中にいたってことかぁ……確かにみんな喜んでくれてたけど全然気づかなかったよ。まさかこんなに感謝してくれてたなんてさ……あっ、でもなんでこんな回りくどいことしたんだろ? 何か意味でもあるのかな……?


 何かしら見落としがあるのではと考えて「う〜ん、う〜ん」と昨日のことを思い出そうと私が唸っている傍ら、微笑みながら「流石はお姉様です」と尊敬の眼差しを向けてくるティナちゃん。そんな天使な彼女の手にはやはり何故か樫の杖が。


「……ところでさぁ、なんでティナちゃんは杖持ってんの? しかも私が造ったやつだよね、ソレ」


「あ、こちらですか? 実は自衛のために作業場から拝借いたしました」


「なるほど……確かに自衛は大事だからね。それに杖なら軽めだし丁度イイかも」


「ふふっ、ありがとうございます……ですが、勝手に持ち出したことは事実。許可も得ずに申し訳ございません……」


 思い出したようにその小さな肩を落とす彼女に向けて、笑顔を浮かべてこう返す。


「ん〜ん、全っ然問題ナシ! 寧ろ杖も喜んでるから私的にも嬉しいよ!」


「そう、なのですね……ふふふっ、それなら拝借した甲斐がありました」


 安堵の微笑みを浮かべる私の天使。

 樫の杖をギュッと握り締める姿がまた可愛くて可愛くて……と、愛おしく眺めていたその時、視線の端に何者かが映る。



「……!! あれは……犬っ!」


 そう、昨日道端で倒れていたあの仔犬だ。銀色の美しい毛並みをしているので見間違えるはずがない。

 それにしてもなんでここに……って、なんか咥えてる? 緑色の長細い何か……あぁっ!


蔓無南瓜ズッキーニっ! てかまた瓜科だし!」


 どんだけ瓜科推しなんだよ! って思った。すると……



「……フフッ、そうですか……そういうことでしたか……」


 何やらティナちゃんの様子がおかしい。

 私が「ティ、ティナちゃんどしたの……?」と声を掛けても応答がなく、更には不敵な笑みを浮かべて独り言を呟きだす始末。


「……フフッ、フフフ……わたくしたちはまんまと欺かれていたということですか……やはり許すまじ仔犬さん……ッ!!」


 どゆことぉぉぉ〜っ!? と叫びかけたがどうにか堪え、少し考えたのちに彼女が呟いた言葉の意味を理解する。


 ……はっ! あの仔犬が咥えているのは瓜科の野菜……そしてここにある野菜たちの半分は瓜科……つまりっ、犯人はあの仔犬──ッ!!


「そのとおりですお姉様……諸悪の根源はあちらで嘲笑っている仔犬さんだったのです!」


「え? あ、うん……え? 諸悪の根源? 嘲笑ってる……?」


 めっちゃノリノリじゃん……って思った。


 そんな変なスイッチの入ったまま、ティナちゃんは不慣れな杖を構え、ジリジリと仔犬の方へと近づいていく。

 一方の仔犬もまた、ズッキーニを咥えたまま、臆することなく彼女の方へと歩を進める。


 なんなのこの構図っ!? なんなのこの展開っ!? 無駄に緊迫した雰囲気だし! 私は完全に蚊帳の外だし!


 それでも何故か目が離せずに静観していたところ、突然右肩に手を置かれて「ひゃっ!?」と思わずビックリ。ティナちゃんも咄嗟に振り向くほどの驚声を上げてしまった。


 心臓をバクバクさせながら振り向き睨むと、そこにはオラ系黒ジャージ姿のフェルムが。てか先に声くらいかけろ!


「な、なんかすまん……まさかこんなに驚くとは思わんくて……」


 絶対に許さん! って思ったけど許した。今はそれどころじゃないし。


「……んで? こんな朝っぱらから何してたんだ? お嬢は一人で杖構えてるしよ。ひょっとして杖術でも仕込んでたのか?」


「えっ──(×2)」


 私とティナちゃんはすぐさま振り向き直した……が、そこには既に仔犬の姿はなく、ただあるのはヨダレ塗れのズッキーニだけ。


 誰にも気づかれずにこの場から立ち去った? そんなことが普通の犬にできるの……?


「あの犬は一体……」


 ただの仔犬じゃないのかも……って、そう思った……──



       〜メイキング&NG集〜



ルゥ「あっ、ティナちゃんおはよー! 今日も相変わらず可愛いいね!」


ティナ「お、おはようございますぅ……えっとぉ、お褒めの言葉嬉しいですぅ……」

   《ゔぅぅ……この人演技は上手いけどぉ、なんか怖いから苦手ぇ……》


ルゥ「うんうん♡ ……あ、ところで聞いてよティナちゃ〜ん」


ティナ「は、はいぃ、なんでしょーかぁ……」

   《まさかぁ、裸見せろとか言われないよねぇ……?》


ルゥ「実はここ最近美味しいもの食べ過ぎたせいで太ってきちゃってさぁ」


ティナ「は、はぁ……」

   《よ、よかったぁ……ってそれよりぃ、確かに今日は一段とおーきく見えるかもぉ……》


ルゥ「ほら見て? ズボンなんかパツパツすぎて今にも破けそうじゃない?」


ティナ「そ、そーですねぇ……」

   《ただでさえタイトな短パンがぁ、更にぴっちりしててなんかエッチぃ……》


ルゥ「まっ、ギリイケてるから別にいーんだけどね!」


ティナ「は、はぁ……」

   《……あれぇ? なんか今ぁ、フラグが立ったよーなぁ……?》


オルド「今日は〝34話目〟撮りますんでおなしゃーす!」


みんな「おなしゃーす!!」


オルド「んじゃ本番いきまーす!」



ルゥ「野菜がいっぱい! しかも超テカってる!」


クリスタ「目の前の光景が意味不明イミフすぎるせいか、ツッコミを忘れてありのままを叫んでいた。同時に、ティナちゃんの言う〝謎の進物〟の正体が色とりどりの野菜たちであることを理解する……が、本当に意味不明イミフすぎて思考が追いつかず、通常なら感じるはずの嫌悪感や恐怖感とはまた別の感情を抱く」


ルゥ:ナレ「にしてもよくこれだけの種類を集められたもんだ……しかもたった一晩でさ。誰だか知らないけど凄いよ、ホント」


クリスタ「興味と感心。それ以外に抱いた感情はなく──」


ルゥ「どれどれ」


クリスタ「──としゃがみ込んではマジマジと野菜たちを──」


《──ビリビリビリッ!!》


ルゥ「……え? 今の音ってまさか……に゙ゃあぁぁぁ〜っ!! ズボンが破れちゃってるぅ〜っ!!」


クリスタ「ブフッw」


ティナ「やっぱりぃ、フラグでしたかぁ」


ルゥ「あ゙ーも゙ー最悪すぎるよぉ!」


クリスタ「きゃははははww パンツ丸見え豚のケツ〜ww」


ティナ「なるほどぉ、黒のTバックですかぁ……ふふっ、紛れもなくエッチぃですぅ」


オルド「はいカーット! 今すぐ痩せてくださーい!」


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