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第33話 今日の出来事


「──とまぁ、そんな一日だったんだよねぇ……ってコレうまっ!」


 道具屋からの帰宅後、いつものように〝今日の出来事〟をみんなに話した。いつものように食事を取りながら。


 本日の夕食はパスタ。それもスパゲティ界のトップスター、カルボナーラ。

 かの有名な食物界の称号として知られる【万能食材】及び【完全栄養食品】の二冠に輝くガーデンバードの卵と【準完全栄養食品】を冠するフリーダムカウの特濃ミルクに加え、クリーミーさと相性抜群なパルチザンチーズをたっぷり入れたコク深濃厚ソースがクセになる一品。しかも麺によく絡む!


 カリッカリに焼いたピンクボアの厚切りベーコンが肉の旨味と食べ応えのある食感を生み出し、嗅覚に訴えかけるガーリーガーリックと味覚を刺激するダークペッパーが更なる食欲を掻き立てるという最強すぎる組み合わせ。


「そう! コレは最早っ、至高の料理と云っても過言ではない!」


「ふふっ、ありがと♡ それにしても大活躍だったのね。まさか聖女になるなんて全く予想してなかったわ」


 心を安定させる薬を飲むため、ひと足先に食事を済ませたイリアさん。

 今は例の梅干しをツマミに温かい緑茶を飲んでいるところ。

 初めて会った時と比べてかなり顔色が良く、僅かではあるが肉付きも良くなっているのでとても安心したし何より嬉しい。


「あら、ルゥちゃんどうしたの? そんなに熱い視線を向けちゃって」


「へっ!? あっ、いえっ、なんでもありません!」


 マっ、マズったぁ〜! 嬉しくてつい見過ぎちゃってたよぉ……でも嬉しいもんは嬉しい! けど怪しまれてるしここは我慢我慢っ!


 本当はもっと眺めていたかったのだが、これ以上怪しまれたら困るので今はやめとこ──って、やっぱうまっ!


 その後もひと口食べては「うまっ!」と連呼する私に対し、早くも食べ終えたフェルムが感心したように口を開く。


「ホント美味そうに食うよなぁ、お前。その分じゃ弁当食えなかったの相当キツかったんじゃねぇのか?」


 そんな問いかけに、突き匙を置いて返答。


「うん、めっちゃキツかった……」


 あの時の感情を思い出して暗い気分になると、次はエタンが心配そうに口を開く。


「折角イイ日とやらで終われるはずが残念だったな」


 思わぬ慰めの言葉を貰い、思わずキョトン顔に。

 すると、今度はプラータが興味本位で口を開く。


「……それで、食べ損なった弁当はどうしたの?」


 間髪入れずにこう返す。


「え? 勿論食べたけど?」


「食べたのかよ!!」


「犬がね」


「犬がかよ!! ……ん? 犬……?」


 仲良し三人組トリオの連続ツッコミに笑いだすイリアさん、レオ、それからティナちゃん……とゴルトも!?


 めっちゃウケてるのに全然笑い声が聞こえないんだけど!? 一体どうやってんのソレっ!? てかそんなに面白かった今の!?


 それはさて置き、四人の笑いが落ち着いた頃合いを見計らって、まだ明かしていない〝その後〟についてを話すことにした。


 手作り弁当を食べ損なった事実に気づき、あまりのショックにただただ無言となったこと。

 なんだかイイ日で終われそうだと浮かれていた反動により、とにかくヘコみながら歩いたこと。

 勿体ないので食べようとするも、今食べたらイリアさんの手料理が食べれなくなっちゃう! と必死に我慢したこと。

 そしてそんな折、道端で倒れている仔犬を見つけたこと。

 銀色の美しい毛並みを持った、腹の虫を鳴かせたままの可哀想な仔犬を……



「……そっ、それでっ、その仔犬さんをどうされたのですか!? よもやお姉様が見殺しになど致すはずがないとは思いますが!」


 話の続きが気になり、前のめりとなって詳細を聞いてきたティナちゃん。

 その意外な食いつきに少し意地悪をしたくなった私は、彼女のみならずみんなの反応が見たくなり単刀直入すぎる回答を。


「うん。だから食べた」


「食べたぁ〜っ!?(×6)」


「お弁当を、仔犬が」


「あ、そういう……(×6)」


 予想どおりの反応にニヤついていると、膨れっ面をしたティナちゃんから「お姉様の意地悪っ!」と怒られてしまったため、可愛いなぁと思いつつも「ごめんごめんっ」と慌てて謝ったのちに話を再開した。

 とはいえ、実のところ私自身もその時のことはあまり覚えていない。

 何故なら考えるよりも先に身体が動いていたからだ。

 ハッと気づいた頃には既に仔犬が弁当を貪っており、今考えれば咄嗟にツールポーチから取り出して地面に広げていたのだと理解できる。


 しかしそれ以降、特に何があったわけでもなく、用を済ませ次第その場を後にした。

 仔犬が猛烈な勢いで弁当を平らげた後、カラとなった弁当箱を片付けながら「代わりに食べてくれてありがとね」と感謝を伝えただけで、特に何することもなく。



「……そう、でしたか……仔犬さんがお姉様の……仔犬さんが……はぁ……」


 これほどまでに残念がるティナちゃんを見るのは初めてかもしれない。それも、ついため息を漏らしてしまうほどの。

 そんな彼女の新たな一面を知るとともに、言い知れぬ罪悪感が私の中に芽生える。


 ゔぅっ、明らかに悄気しょげちゃってる……まさかそこまで犬好きだったなんて……だとしたら連れてくればよかったなぁ……はぁ、気の利かない姉でごめんよぉ……


 などと申し訳なさに埋め尽くされかけたその矢先、我が妹の口から予想だにしない発言が。


「くっ、許すまじ仔犬さん……ッ!! 妹であるわたくしを差し置いてお姉様の御行厨を頂くのみでは飽き足らず、よもやよもや感謝の御言葉まで賜るとは……ッッ!!」


 全く以て予想外すぎたため「え゙ぇ〜っ!? そっち!?」と驚きの反応を、つい。


 だがそれで終わるならまだしも、何故かドデカい声で「ははっ、こりゃあ口が裂けても言えねぇよな! 実は俺らも弁当貰ってたなんてよ!」と内緒話ならぬ暴露話をするフェルム。


 え゙っ、嘘でしょ!? なんでそんな大声で言っちゃうの!? 馬鹿なの!? 馬鹿でしょ!? 馬鹿だよね!?


 当然の如く、その発言はティナちゃんの耳にも届き、仔犬に向けられていたはずの怒りの矛先が私と仲良し三人組トリオに向く羽目となり、私たちの顔は一気に青褪める結果に。そして、その後はというと……──




「──のぉ! このぉ! このぉ! このぉ! このぉ〜っ!」


 深夜2時。一心不乱に鉄を叩き捲る私。

 むきぃ〜っ! アイツが余計なこと言わなきゃ怒られずに済んだのにぃ〜! と憤慨しつつ。


 結局、あれから2時間ほど正座付きの説教を食らったうえに〝ある約束〟を強制的に取り付けられた。

 無論、〝お弁当を作る〟という可愛らしい約束なので心配には及ばない。

 寧ろ私的にはご褒美でしかないのだが、事の元凶であるフェルムに対しては怒り心頭。「凡ミスにも程があるだろ!」と愚痴るほどに。


 だからこそ今、こうして憂さ晴らしに武器造りをしている。

 明日……いや、今日も沢山の武器を売ることになるだろうし、まさに一石二鳥というやつだ。


 それに憂さ晴らしとは関係なく、是非とも造ってみたい武器があったので挑戦するにはイイ機会だと、愛読書で得た知識とイリアさんの助言を基に幾つか試作品を造ったのが少し前のこと。

 まぁ尤も、結論から言えばどれも失敗に終わったのだが。


「うーん、やっぱ分からないや。どうして上手く造れなかったんだろ……はぁ、仕方ない。今日また見せてもらうとするかぁ」


 というわけで、本日の武器造りはここまで。

 悶々としつつも寝ることにした。アイツへの怒りなどちゃっかりしっかり忘れて……──







「──さまっ! お姉様っ! 起きてください!」


 爆睡中、前触れもなく強制起床の刑に処された。


「ふぇっ!? なになにっ!? 魔物の大群でも襲ってきた!?」


 寝惚けながらも慌てて部屋中を見渡した……が、特に変わった様子はない。


 ……あれ? 魔物がいない……どゆこと?


 現状を把握できずに首を傾げていると、何言ってんだコイツ的な表情を浮かべたティナちゃんが起こした理由を告げる。何故か樫の杖を持ったまま。


「……はっ! それより玄関先に謎の進物が捧げられているのです!」


「ホントにどゆこと!?」


 ツッコミつつも速攻で玄関先に直行。

 すると次の瞬間、私は驚きのあまり……──



      【オセロアのマメな豆知識】



オルド「オセロアさーん! 今日もおなしゃーす!」


オセロア「はいっ、お願いします!」

    《前回で自信もついたしイケる気しかしないわ!》


オルド「んじゃいきまーす! 5、4、3……」



オセロア「皆様、ご機嫌いかがでしょうか。わたくしは至って普通です。さて、本日四回目となりますオセロアのマメな豆知識。進行はわたくしオセロアが務めさせていただきます。それでは早速ですが、本日は〝魔物〟についてご説明いたしますのでこちらの白板をご覧ください」



【ガーデンバード:化鳥種。脅威度ランクF。〝庭駆ける魔鳥〟として有名。鶏冠とさか肉髯にくぜんが薄青く、見た目は慣れるまで少し不気味に感じてしまうが性格は素直で人懐っこく何より朝に強い。あと肉も卵もとても美味】


【ピンクボア:野獣種。脅威度ランクE。〝限りなく豚に近い魔猪〟として有名。体躯は猪よりもデカいが牙は頗る小さく体皮は桃色。性格は穏やかで綺麗好き。肉質もどちらかといえば猪よりも豚に近い……というかほぼ豚。そのうえ焼いても硬くなりにくく味も当然ながらとても美味】


【ベジターブル:野獣種。脅威度ランクE。〝土壌魔牛〟として有名。黒い双角を有し、主に装飾品の素材として重宝される。毛皮は土色で性格は少し短気。とある時期に最も多く食した野菜を背中に生やすという不思議な特性を持ち、同じ野菜を食べ続けることで季節関係なく一年中栽培ができる。育てた野菜は勿論のこと、肉も優しい味でとても美味】


【フリーダムカウ:野獣種。脅威度ランクE。〝放牧魔牛〟として有名。角無し。体毛は白一色で優しく撫でられるのを好む。自由奔放でのんびり屋な性格の分、ストレスには滅法弱く乳の出が途端に悪くなることもしばしば。だがそれ以上に毛皮は上質で肉も乳もとても美味】



オセロア「今回は肉料理に欠かすことのできない魔物たちでしたね。次はどのような魔物が登場するのでしょうか。皆様も気になって気になって夜も眠れないかもしれませんがどうにか頑張って眠りに就くようお願い申し上げます」


オルド:カンペ【ん゙〜っ、フィニッシュ!】


オセロア:「……はい、それではお時間が来てしまいましたので次回またお逢いしましょう。白黒つけたいお年頃のオセロアでした」



オルド「はいカーット! お疲れ様っしたー!


オセロア「お疲れ様でした!」


オルド「今日は完璧っした! 次もこの調子でおなしゃーす!」


オセロア「はいっ、お願いします!」

    《会心の出来っ! そして主役への大きな一歩を踏み出せたわ!》



 ……この日、オセロアは確かな成長を実感し笑顔のまま眠りに就いたという……



クリスタ「わー、凄いねー、おめでとおめでとー……ってウソっ、コレ撮られてんの!?」


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