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第31話 新たなるスキル


「──ッ!? こっ、この光は──!! くっ、あの大馬鹿者め!」


 ギルド内が眩い光に包まれるなか、どこからかエタンの怒声が聞こえてきた……が、丁度その頃は謎の知識を得ている最中だったため他を気にする余裕はなく、光が消えた後も怒声はおろか数多の視線すらも気にならぬほど進化した武器に夢中となってしまい、気づけば勝手に抜刀して眺めていた。酒よりも酔うほどに。


「それにしてもこの不均一な刃文、醜いどころかなんて美しいんだろ……ハァ、ウットリしちゃう……♡」


 刃文とは、〝焼き入れ〟によって付けられた〝焼刃やきば〟の模様を指し、その模様は土の塗り方により変化させることが可能。

 また、刃文は二種類に大別されており、ひとつは真っ直ぐな形状の〝直刃すぐは〟、もうひとつは波打つような形状の〝乱刃みだれば〟と称され、どちらも更に細かく分類されている。

 そして何より、刃文は見た目の美しさのみならず切れ味にも直結しているため、その基となる『刀』とは造り手の技量が試される大変難しく奥深い武器なのだ。

 といっても、あくまでも『異世界偉人名鑑』を読んで得た知識だからホントかどうか分からないんだけどね。あはは……


 心の中で苦笑した私は「まっ、それはともかく……」と呟いてからゆっくりと立ち上がり、驚いた表情のままこちらを見ている男剣士に微笑みかけて一言。


「次の英雄はキミみたいだねっ、頑張って!」


「……へ?」


 この言葉の意味を全く理解できず、今度は口を開けたまま唖然としてしまった男剣士。

 きっと謎の知識についても理解できていないのだろう。

 だって、まだ一度も進化した武器を見ようとしてないし……はぁ、勿体ないなぁ。折角こんな鬼カッコいいのに……あっ!


 この時、あることを思い出したように閃き、「そうだキミなら!」と『モモタロウの刀』に向けて叫んだ。


 このコなら倒せるじゃんアイツら! あの能力アビリティを使えば! 見たことないけど多分きっと!


 そう考えたら自然と口が動いていた。「今すぐ行こっ、鬼退治っ!」と。

 響めきだす者たち。慌てふためく男剣士。そして、いきなり両腕を引っ張られる私──って、あれ? なんでまた連行されて……



「この大馬鹿者がっ! 酒に呑まれた挙句チカラを晒しよって!」


「全く以てそのとおり! 流石に誤魔化せないよアレは!」


 鬼の形相に加え、鬼気迫る勢いで私に一喝するエタンとアノープス。

 エタンはともかく、緩い感じのアノープスまでもが怒るということは、それほど重大な〝やらかし〟をしてしまったのだろう。


 その後もガミガミと叱咤されているうちにすっかり酔いは醒め、同時にある現象が起こる。それは……生理現象。そう、尿意だ。

 幾ら酒精によるものだとしてもこれほど急に起こるとは思いも寄らず、二人に「ごめんなさい!」とだけ告げてトイレへ駆け込むなり用を足した。



「あ〜、間に合ってよかったぁ。てか二人とも怖すぎでしょ……まぁでも、仲間だからこそ、対等だからこそ怒ってくれたんだもん。有難いと思わなきゃね……って、早く戻らないとまたウ◯チだと勘違いされちゃう!」


 急いで手を洗い終え、ハンカチ片手にみんなの元へと駆け足で戻った……が、着く寸前に気づく。何やら様子がおかしいことに。主にエタンとアノープスの二人。


 あの頭脳派コンビが仲間たちに励まされている、そんな感じに見えるのだが一体何があったのだろうか……う〜む、とても心配だ。


 取り敢えず事情を知るため、「ねぇねぇ、どしたの? 何かあった?」と近くにいたピスカに聞いてみた。

 すると、彼女は私の顔を見るなり慌てた様相で問いかけてくる。


「ちょっと!? アンタなんともないの!? めっちゃ怒られたって聞いたけど!」


「え? 別になんともないよ? やらかした私が悪いわけだし」


「……ん゙? じゃあなんでいなくなったわけ?」


「急にお花摘みたくなったからだけど……なんで?」


「はぁ……じゃあソレ、アイツらにも言ってあげて。見てよあのヘコみ具合。怒りすぎたからいなくなったんだ〜! って自分を責めてて鬱陶しいったらありゃしない」


「そ、そうだったんだ……分かった! 今すぐ伝えてくるね!」


 そうしてすぐさま彼らの誤解を解き、あまりの勘違いに皆で笑い合っていた折、素面のオセロアから宴会の終わりを告げられ、名残惜しくも〝いつもの状態〟に戻ることとなった。



「はぁ……楽しかったなぁ、宴会……」


 なんてため息を吐きつつ、昨日と同様に商いの準備を整え、昨日と同様に独り寂しく椅子に座る。


 はぁ……みんなも依頼を熟しに行っちゃったし、これからまた暇な時間を一人きりで過ごさなきゃかぁ……はぁ……


 堪え難い孤独感を思い出しては気を落とし、とにかく一人でいいから誰か来てよぉ! と適当に願った。そう……適当に願った、はずなのに……




「……なっ、ななっ、なんなのこの人集りぃぃぃ〜っ!?」


 昨日とは打って変わって、ひと目でも武器を見ようと集まる冒険者たち。

 新たに来た者も人集ひとだかりが気になって様子を見に来るので少しも途切れることがなく、更には依頼の前後で見に来るため途切れる気配すらしない。まさに無限ループ。


 しかし、残念ながら売上はゼロ。未だに一本も売れてはおらず、今のところ売れる気配もナシ。

 それでも見に来てくれることに感謝し、笑顔を振り撒きながら武器の案内や説明をしていると、初見の若手冒険者二人の会話が耳に入る。


「う〜ん……どれも悪くはないんだけどさぁ、逆にいえば他の店でもよくね?」


「それな! やっぱシリエスさんの剣みたいなのが欲しいよな! さっき外でみたやつ!」


 二人の会話を聞いて人集りの理由を知るとともに今までの客たちも実は落胆していたのではないかと考えてしまい、とても怖くなった。


 どの客も聖剣染みた武器を求め、期待し、無いことを知って落ち込みながら去っていく。


 そのような想像をしたせいか急に笑顔が作れなくなり、武器の質問をされても上手く答えられず、挙げ句の果てには客から心配の言葉を貰っても返せずにただ頷くだけ。

 そんな手抜きにも見える私の対応に違和感を感じたのだろう、小首を傾げながら去る者もチラホラと。


 あぁ、みんな行っちゃう……ごめんなさい、私の心が弱いばかりに……けれど、どうすればいいか分からないの……


 潜在スキル『偉人の銘』はそれぞれ一度きり。理由は簡単で〝同魂、存在せず〟のため。


 だから、造りたくても造ってあげられない……でもどうにかして造ってあげたいよ……そこまで強くなくてもいいからせめて、せめて役立つ武器をみんなに……


 去りゆく者たちの悲壮感漂う背中を目に焼きつけながら、その原因が私自身にあると強く自覚・後悔し、〝だからこそっ、私の造った武器でみんなを笑顔にしたい!!〟そう真に願った刹那、私の中で何かが弾け咲いた。



【潜在スキル『偉魂の写し』が開花した】


【偉魂の写し:過去に召喚した〝偉魂〟の複写が可能となるスキル。性能は全て下位互換となるが消費魔力や回数制限は大幅に緩和される。但し、魂の器となる武器はスキル保有者が製造したものに限る。なお、愛用年数は適用されない】



 謎の知識が頭の中に流れ込んだ直後、己の直感に従い両手を組み、瞳を閉じて祈るようにスキルを発動させる。



《お願い、進化して……!! お願い……ッ!!》



 周囲の賑わう声はおろか一切の音も聞こえなくなると、複数の気配とともに一人の子どもの声が耳に届く。「任せて、ママ」と。

 再び賑わう声が聞こえだし、ゆっくりと瞳を開けると、幾つかの武器がその姿を変えていた。


 ……!! そっか、さっきの気配は……


 先程感じた複数の気配の正体を理解した刹那、またもや謎の知識が頭の中に。



【無銘の剣が〝聖光剣〟に進化した】


【無銘の弓が〝精射弓〟に進化した】


【無銘の棍が〝倍伸棍〟に進化した】



 ……ありがとう、私の想いに応えてくれて……


 感謝の念と心苦しさから自然と涙が頬を伝うも、驚愕しているためかまだ誰にもバレてはいない様子。

 それならばと涙を拭い、笑顔を見せ、進化した我が子たちを紹介し、のちに託した。「どうか大切にしてあげてね」と小さな願いを添えて……──



       〜メイキング&NG集〜



オルド「今日は〝31話目〟撮りますんでおなしゃーす!」


みんな「おなしゃーす!!」


オルド「んじゃ本番いきまーす!」



エタン「──ッ!? こっ、この光は──!! くっ、あの大馬鹿者め!」


クリスタ「ギルド内が眩い光に包まれるなか、どこからかエタンの怒声が聞こえてきた……が、丁度その頃は謎の知識を得ている最中だったため他を気にする余裕はなく、光が消えた後も怒声はおろか数多の視線すらも気にならぬほど進化した武器に夢中となってしまい、気づけば勝手に抜刀して眺めていた。酒よりも酔うほどに」


          (中略)


エタン「この大馬鹿者がっ! 酒に呑まれた挙句チカラを晒しよって!」


アノープス「全く以てそのとおり! 流石に誤魔化せないよアレは!」


クリスタ「鬼の形相に加え、鬼気迫る勢いで私に一喝するエタンとアノープス。エタンはともかく、緩い感じのアノープスまでもが怒るということは、それほど重大な〝やらかし〟をしてしまったのだろう。その後もガミガミと叱咤されているうちにすっかり酔いは醒め、同時にある現象が起こる。それは……生理現象。そう、尿意だ。幾ら酒精によるものだとしてもこれほど急に起こるとは思いも寄らず、二人に──」


ルゥ「ごめんなさい!」


クリスタ「──とだけ告げてトイレへ駆け込むなり漏らした」


ルゥ「あ〜、間に合ってよかったぁ! てか二人とも怖すぎ──って、よくなぁぁぁーい!! ソレ全然間に合ってないじゃん! モロやらかしてんじゃん!」


クリスタ「……テヘっ♡」


ルゥ「あっ、私のパクった! あと〝♡〟じゃなくて〝☆〟だから! 勝手に改変すんな! この……猫被り女っ!!」


クリスタ「はぁ!? ぬぁんですってぇ……!! 勢いだけのツッコミしかできない駄犬女のくせに生意気よ!!」


ルゥ「はぁぁぁっ!?」


クリスタ「はぁぁぁっ!?」


エタ・アノ「はぁぁぁ……」


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