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第30話 宴会


《……ん? なんだかやけにオセロアちゃんの声が聞きやすいような……》


 そう感じた折に気づく。この静寂が単なる偶然ではないことを。

 同時に振り返らずとも伝わってくる。そこかしこで固唾を呑むほどの緊張感、一点に集まる視線が生み出した熱量や重圧、そういったものがヒシヒシと。

 要はそれほど注目されており、皆の期待も高まっているということ。


 そんななか、淡々と続くオセロアの説明に耳を傾けていると、期待が高まりすぎたせいか緊張以外にも様々な感情が押し寄せてくる。


 あ゙ぁ〜っ、結果は分かってるのにやっぱ緊張しちゃう! てかなんなのこのハチャメチャな気持ち!? 全っ然落ち着いて聞いてらんないんだけど!?


 それでもメチャクチャ頑張って聞くことにした。

 だって、みんなのことを真っ先に祝ってあげたいもん!



「──以上のことから、この魔核はAランクの魔物から採取されたものと断定され──」


 ……ハラハラ、ドキドキ……


「──ですので、討伐証明の確認として通例に従い魔物鑑定をさせていただき──」


 ……ウキウキ、ワクワク……


「──故に今回は3度もの鑑定を行なったのですが、いずれも結果は同様であり──」


 ……ソワソワ、アセアセ…… 


「──つまり、鑑定結果に一切の誤りや矛盾はなく──」


 ……ウズウズ、ムラムラ……って、あれ? なんか説明長くない? ……はっ! ひょっとしてマズい結果に──


「──よって、本物であることが証明されました!!」


 この瞬間、ギルド中が沸いた。

 それも当人である四人や真っ先に祝おうとして失敗した私が思わず唖然としてしまうほどの歓喜の声によって。


 更には目の前にいるギルド職員たち。

 仲良くハイタッチをする者や両手を握り締めてガッツポーズを取る者まで現れ、最早私たちよりも喜んでいるまである。


 だがそうなるのも無理からぬ話だ。

 この街でAランクにまで昇り詰めた者は実に6年ぶりとなるのだから。

 加えてあの〝不可侵の魔物〟と呼ばれるほどの大物を討伐しての昇級、きっと喜びも〝ひとしお〟なはず。


「……おめでとう、みんな……」


 四人の笑顔を眺めながら密かに祝い、静かにこの場から立ち去ろうと振り返ったその時、突然誰かに右手首を掴まれ、驚きつつもまた振り返る。そして……



「みんな聞いてくれ!!」


 シリエスが声を張り上げた。私の手を掴んだまま。

 すると、この場にいる全ての者がこちらに視線を移す。沈黙とともに。


「今回、僕らが魔物を倒せたのは全てこの人のお陰なんだ! 強気でボインな聖女様が加護をくれたから!」


 唐突すぎる演説に赤面する私を見て、したり顔のシリエスは『ジャンヌの剣』を翳すなり「清浄ッ!」と唱え叫んだ。


 視界全域が青白色の優しい光に照らされると、瞬く間に汚れは消え去り、清められ、それらの光景を目の当たりにしたことで再びギルド中が沸いた。驚嘆の声によって。



「──というわけで、これからはみんなも聖女様と仲良くしてほしい! ……あっ、当然だけど下心でのお近づきはナシだからね?」


 最後は笑いを取って演説は終了。嬉しくも恥ずかしい地獄のような時間ともおさらばとなった。


 ゔぅ〜っ、めっちゃ恥ずかったぁ! けどこれでやっと解放されるよぉ!


 ……と、安堵したのも束の間、私が解放されることはなく、四人にどこかへ連行されたかと思えば何故か椅子に座らされ、「えっ!? えっ!? どゆこと!?」と狼狽えている間にもテーブルの上には続々と料理が。


「……!? こ、これってまさか……宴会っ!?」


 そう、まさかの宴会が今始まろうとしているのだ。

 こんな朝早くから、まるで予期していたかの如く手際の良さによって。



「それでは僭越ながら私が乾杯の音頭を取らせていただきます」


 毅然とした態度で椅子から立ち上がったレジーナ。

 ビールが並々と注がれたピッチャーを持ち上げ、遂にあの一言を口に。


「此度の魔物討伐と昇級を祝して……乾杯っ!」


「乾ぱ──ひゃっ!?」


 皆の盛大な声に驚いてしまい、またもや失敗。最後まで言えずのうえに変な声まで上げてしまうという奇行を晒して。


 わ゙ぁ〜っ、また失敗しちゃったぁ! カッコ悪いわ恥ずかしいわでもう最悪すぎるぅ!


 どうやら地獄の時間はまだ続いていたらしい……が、料理たちに罪はないので有難く頂戴した。




「おいおい、なんだよこの盛り上がりは……って、なんじゃこりゃぁぁぁ〜っ!?」


 宴会開始から1時間ほど経過して漸く到着した三人。

 全く、今の今まで何をしてたのやら……ヒック。


 それはともかく、大扉の前でフェルムが仰天したことによって三人の存在に気づいた私は、酔いでフラつきながらも中ジョッキ片手に彼らの元へ。


「お前ら遅いぞぉ? どこでナニやってたんだぁ? ヒック」


「ゔおっ、酒くさっ! ちょっ、こっち来んなお前っ!」


 そう言って距離を置こうとするフェルムに対し、酔った勢いで「んあ〜? そんな失礼なこと言うやつにはハグハグの刑だぁ! くらえ〜い!」と中ジョッキを手放して思い切り抱きつくと、意外なことに「まぁ、これはこれでアリかも痛ででででっ!?」と痛がりつつも素直に抱かれてくれた……が、すぐさまエタンに引き離された挙句、「お前ら少しは自重しろ!」と二人して怒られてしまった。



《ゴチンッ!!》


「──ッ!? いったぁ〜っ!!」


 その傍ら、何やら打撃音と痛がる声が聞こえてきたので振り向くと、そこには床に座ったまま頭を押さえているプラータとピスカ……と、二人の間に置かれた中ジョッキの姿が。しかも中身が零れた形跡はナシ。


 あはは〜、二人とも仲良すぎぃ! でもさぁ、なんでジョッキが真ん中にあるんだろぉ? 不っ思議ぃ〜? ヒック……あ。


 漸く察した。原因は私にあると。

 どうも落下した中ジョッキを床に落ちる寸前で受け止めた際、全く同じ動きをしていた二人の頭が丁度ぶつかってしまった模様。

 つまり、私が中ジョッキを手放したりさえしなければこうはならなかったということだ……うん、謝ろ。


 未だ痛がる二人に向けて「あはは〜、ごめんなさ〜い」と謝ったところ、プラータは呆れた様子で「はぁ……酒癖悪すぎでしょ」とため息混じりに呟き、一方のピスカも呆れ顔となって「はぁ……これで聖女とかマジあり得ないんだけど」とため息混じりに愚痴を。


「ごめんごめ〜ん、けど二人とも仲良さげだしぃ、どうせなら付き合っちゃえばぁ〜?」


「はぁぁぁ〜っ!? そんなのあり得ないから!!」


 二人にめっちゃキレられた……ヒック。



「あっ、いたいた! こんな端っこで何やってんのさ二人とも!」


 それからすぐ、顔をほんのりと赤く染めて駆け寄ってきたシリエス……と、彼の後を追ってきたレジーナとアノープス。この二人は酔ってなさげ。


 あんれ〜? みんな確かぁ、色んな人に詰め寄られてたはずだけどぉ? ……あ〜そっかぁ、ひょっとして逃げてきたなぁ〜?


 などと無粋な勘繰りをしてニヤけていたところ、「ったくもう! ズルいよ二人だけ逃げるなんて!」とシリエスは何故かお冠となり、その直後に「……ん? なんだい君たちは!」とこれまた何故か警戒モードへ突入。


「あ゙? そりゃこっちの台詞だ。ウチのモン酔わせて何しようってんだ、あ゙?」


 ガラわっる! って思ったけど、そういう雰囲気じゃないから言わな──


「──ガラわっる!」


 代わりにピスカが言った。

 ていうか、なんだか重苦しい雰囲気が漂ってるような……ヒック。


 不可視の火花を散らす四人。

 フェルム・プラータ対シリエス・ピスカという強者2組による壮絶な睨み合い。


 そんな一触即発の状況にも拘らず、つい目を奪われてしまったのは灰髪の男剣士が腰に下げている一本の刀。

 私の愛読書『異世界偉人名鑑』では見たことがあるものの、実際に見たのはこれが初めて。


 そのためか酔っていても武器職人魂に火が付いてしまい、睨み合う2組の間をヨロけながらも通過し、箸休めにキヴィ団子を笑顔で頬張る男剣士の隣に座り、刀に触れ、そして問いかける。


「キヴィ団子に刀といえばぁ、やっぱモモタロウだよねぇ? キミもそう思うっしょ〜? ヒック」


 男剣士が驚きのあまり喉を詰まらせた刹那、刀が眩いほどの光を放ち……──



       〜メイキング&NG集〜



スタッフ「今日は〝30話目〟撮りますのでおなしゃーす!」


みんな「おなしゃーす!!」


スタッフ「んじゃ本番いきまーす!」



ルゥ:ナレ「……ん? なんだかやけにオセロアちゃんの声が聞きやすいような……」


クリスタ「そう感じた折に気づく。この静寂が単なる偶然ではないことを」


          (中略)


オセロア「──以上のことから、この魔核はAランクの魔物から採取されたものと断定され──」


クリスタ「……ハラハラ、ドキドキ……」


オセロア「──ですので、討伐証明の確認として通例に従い魔物鑑定をさせていただき──」


クリスタ「……ウキウキ、ワクワク……」


オセロア「──故に今回は3度もの鑑定を行なったのですが、いずれも結果は同様であり──」


クリスタ「……ソワソワ、アセアセ…… 」


オセロア「──つまり、鑑定結果に一切の誤りや矛盾はなく──」


クリスタ「……ウズウズ、ムラムラ……って、あれ? なんか擬音エロくない? ……はっ! ひょっとして発情k──」


ルゥ「──違ぁぁぁう!! 全然発情してないから! 滅茶苦茶緊張してるシーンだから!」


クリスタ「あら、そうなの?」


ルゥ「そうなの! てか、そもそも擬音自体がおかしすぎでしょ! ねぇっ、そう思うっしょ!?」


オセロア「そうねぇ……あ、オルドさんに聞いてみたらどうかしら?」


ルゥ「オルド……? 誰それ知らん」


クリスタ「アンタ……はぁ、まぁいいわ。あのスタッフさんの名前よ」


ルゥ「あぁ〜! ネウちゃんのお兄さんってオルドってゆーんだぁ! 初耳初耳ぃ〜!」


クリ・オセ「はぁ……」


ルゥ「……ん? 二人してどったの……? まぁいいや。ねぇオルドさ〜ん! なんで擬音がムラムラなわけぇ〜?」


スタッフ(オルド)「おっ! ナイス質問きた! ……ふふっ、それはですねぇ……」


ルゥ・クリ・オセ「……!! そ、それは……(ゴクリ)」


オルド「全然分っかりませーん!」


ルゥ・クリ・オセ「おいっ」


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