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第27話 対等でいるために


「でっ、でもっ、私のせいでみんながっ!!」


 固く結んだはずの口を開き、興奮のあまり身を乗り出した。

 事実、地理を把握するためとはいえ通常依頼をみんなが熟す傍ら、あの四人はAランクへ昇級するために特別依頼を受けているのだから。


 それともなに? その事実を知ったうえで敢えて私に気を遣ってるの? そんなの要らない! 私はみんなと対等でいたいの! だから本音を言って! お前のせいだって怒ってよ!!


 感情が昂ってまた泣きそうになるも、エタンの瞳に向けて心の中で強く訴えかける。

 するとこの真剣な想いが伝わったのか、少し驚いた表情のエタンは察した様子で口を開く。


「あ、あぁ、そのことか……ふっ、それなら心配要らん。何故なら私たちは昇級できんのだからな」


「……へ? 昇級……できない……?」


 呆気に取られる私。まさかの真実を明かされたからだ。

 それでもどうにか食らいついて「どっ、どゆこと!?」と更に身を乗り出してエタンに詰め寄ると、顔を近づけすぎたからか急に顔を逸らし、耳を赤らめながらも説明してくれた。


 冒険者にも様々なルールやマナーがある。

 いかに自由職とはいえど、それらがなければ単なる荒くれ者の集まりでしかないからだ。


 例えば〝冒険者登録をするには満15歳に達していなければならない〟や〝パーティを組む際の人数は二名から六名までとする〟などが挙げられる。……で、その中の一つがエタンの言っていたコレ。



【移籍後、最低半年間は昇級を禁ずる】



 その理由は〝不慣れな土地での過大な依頼遂行は命を落としかねないため〟であり、こういった規定はこの国のみならず他国でも同様なのだそう。


「はぁぁぁ……よかったぁ……」


 説明を聞いて一気に安堵した。


 だってさ、てっきり永久に昇級できないものだと思い込んでたし、何より私の〝やらかし〟が原因じゃないって判明したんだもの。


「ホントよかったぁ、私のせいじゃなくて……って、ちょっとタンマっ! やっぱ全然よくない! 確かAランクに上がるための依頼って3つしかないんでしょ!? しかも激ヤバなやつ!」


 あの四人から聞いた〝危機的問題〟の原因がまさにこのこと。

 だが既にみんなも承知の上らしく、事前に特別依頼のリストを持ち帰っていたプラータがレッグポーチから取り出すなり見せてくれた。



【亜竜種『ワイバーン』の討伐:A+】


【悪鬼種『ブルーオーガ』の討伐:A】


【霊魔種『ゲシュペンスト』の討伐:A】



 うんっ、全っ然分からん!!


 羊皮紙に描かれたこの手書きのリストを見ても冒険者としての知識が皆無なので何が何やらさっぱり。

 これらの依頼がどれほど高難度であるかなど今の私には皆目見当もつかず。


 ただまぁ、名前からしてみんなヤバい魔物だろうけど……とか思っていたら、腹部を押さえながらフェルムがこんな提案を。


「なぁ、腹も減ったし帰ろうぜ?」


 本当は魔物の詳細を聞きたかったのだが、実は私もお腹ぺこりんなのでひと先ずは保留にした。


「そうだね。みんなも待ってるだろうし帰ろっか」


 というわけでリストをプラータに返し、空腹と戦いつつも帰路に就き、工房の明かりが見えたところで私提案の基、急遽みんなで駆けっこをすることに。


 何故そんな提案をしたのかは私自身も分からない……だけど、明かりが見えた途端にホッとしたのは間違いないんだ。


《きっと、私がキミのことを我が家同然に想っちゃってるからだよね》


 心にじんわりと温かいものを感じながら玄関先まで走り切り、息を切らしつつも速攻で順位を確認。



 一位:プラータ(ダントツ)


 二位:私(フェルムと僅差)


 三位:フェルム(私と僅差)


 ビリ:エタン(話にならん)



「はぁはぁ、プラータには負けちゃったけど二人には勝てたんだ……やったやったぁ! めっちゃ嬉しい〜!」


 まるで子どものように燥ぐ私を見て、思い思いの反応を見せる三人。


 先ずプラータは「何がそんなに嬉しいの?」ってな感じで不思議そうにしてて……


 一方のフェルムは「くそぉぉぉっ負けたぁぁぁ〜っ!!」ってすっごく悔しんでるし……


 で、ビリのエタンは「ふっ、ふんっ、今日は偶々調子が悪かっただけだ!」とか負け惜しみ言っててウケる……


 ……とまぁ、思いの外彼らが面白かったので更に面白くしようとあることを閃く。


「にひひっ、やっぱルール変更っ! 先に中へ入った人の一人勝ちってことで!」


「んなっ!? ズリぃぞお前っ!」


「なんてセコい……」


「わっ、私はもうやらんぞ!?」


 なんて文句を垂れる彼らに笑いかけ、私はいの一番に玄関扉の取っ手に両手を掛けた。



 それから間もなくして、予定よりも遅れて帰ったことを待っていてくれた四人に謝り、既に用意されていた夕飯をみんなで食べながら雑談を始めた頃、丁寧に口を拭いたティナちゃんがこちらを見て話を切り出す。


「ときにお姉様、本日の成果はいかがでしたか?」


「えっ、成果? 一体なんのこと?」


「あら、てっきり武器をお売りに行かれたのかと」


「あ、そうだった……色々あってうっかりすっかり忘れて……あ゙ぁっ! そういえば武器一本も売れてないじゃん!」


 あまりのショックに絶賛堪能中であるフィッシュブルーの味噌煮から箸を離し、あんぐりと口を開けて愕然。

 幾ら初めての商いとはいえ、よもや一本も売れずどころかタダ見の客すら来なかったからだ。

 尤も、元々売れない前提なので比較的早く立ち直ることができ、寧ろ売れない原因とその改善策を伏し目がちで考えてみることに。


 うーん……やっぱ赤き深紅(笑)との一件が影響してるから? それとも私まで王都産のBランク冒険者だと思われてるから? ていうか、そもそも私みたいな小娘が武器を売ってるからなんじゃ……って、もしそうなら改善もクソもなくない!?


 あれこれと考えた結果、改善策以前の問題なことに気づき、ならどうすればいいの……!? と焦りを覚えたその時、「ねぇ、ルゥちゃん?」とイリアさんに名を呼ばれ、その優しく包み込むような声に自然と顔を上げていた。すると……



「何も心配しなくていいのよ? だって私もそうだったもの。それに貴方ならきっと大丈夫。私が保証するわ」


「イリアさん……」

《ありがとうございます……》


 憧れであり目標でもある彼女に御墨付きをもらえたことで焦りは消え、嬉しい気持ちが込み上がり、不思議と大丈夫な気がしてきた。根拠など必要ないほどに。


「ふふっ、わたくしも同感です。そのうえでお姉様の御覇道を阻む輩がおりましたら遠慮せずに申しつけてくださいね? その者らを──いたしますので」


「ティナちゃん……」

《御覇道て……って、何その首斬る仕草っ!? 一体何いたしちゃう気なの!?》


 それでも嬉しいことには変わりなく、心強い味方がいると思ったら急に気力と食欲が湧いてきたため、再び箸を持ち、猛烈な勢いで食べ始めた。昨夜以上のやる気に満ちて。


 よ〜しっ、明日からもっと頑張るぞぉ〜! こんなダメダメな私を認めてくれるみんなのために! そしてっ、そんなみんなと対等でいられるために!


 口いっぱいに頬張りながらそう決意を固めていると、相対席に座るフェルムが「お前リスかよ」と呆れ顔でツッコミを入れてきた。

 故に負けじと私も「ふぇぇふぉぉふぉ? ふぁふぁふぃぃふぇふぉ?」と敢えて乗ってやった、つもりが……



「いや何言ってんのか分かんねぇし」


 見事に一蹴された。てか、みんな笑いすぎじゃない!?


 ……その後、歓談のなか食事を終えた私たちは後片付けを済ませ、交代で風呂に入り、各々の部屋に戻っては自由なときを過ごす。


 因みに私は今……ベッドの上で気持ち良さそうに寝ている二人に挟まれながら、視覚スキル『暗視』を駆使して天井のシミを数えているところ。……あ、27個目見っけ。

 まぁ、本音をいえば今すぐにでも武器造りをゴニョゴニョ。


「なんて、死んでも言わないけどね」


 レオとティナちゃん。

 この二人の可愛すぎる寝顔を交互に眺めては小さな幸せを感じ、同時に温もりも感じているうちにふと眠気が。


「ふぁ〜……明日もあるしもう寝るかぁ」


 二人の額に軽くキスをしてから眠りに就いた。〝あの四人〟の無事を密かに祈りつつ……──



      【オセロアのマメな豆知識】



スタッフ「オセロアさーん! 今日もミニコーナー撮りますんでおなしゃーす!」


オセロア「こっ、こちらこそお願いします!」

    《前回はやらかしちゃったから挽回しなきゃ!》


スタッフ「んじゃいきまーす! 5、4、3……」



オセロア「皆様、ご機嫌いかがでしょうか。わたくしは至って普通です。さて、本日二回目となりますオセロアのマメな豆知識。進行はわたくしオセロアが務めさせていただきます。それでは早速ですが、本日は〝スキルの枠組み〟についてご説明いたしますのでこちらの白板をご覧ください」



【共通スキル:親和性が最低値でなければ誰でも習得できる一般的なスキルの総称。習得難易度やスキル性能はピンキリであり、覚える価値があるのかと疑問視されるものから反則級のものまで幅広く存在する】


【職業スキル:適職に就きし者のみが習得できる限定的なスキルの総称。共通スキルとは反対に親和性が高くなければ習得不可のものが多く、習得難易度やスキル性能は職種により全く異なる。因みに転職でも習得は可能】


【種族スキル:該当する種族が生得している本能的なスキルの総称。親和性や習得難易度は一切関係なく、スキル性能は共通スキルと同様にピンキリである。一説によれば、古代時代より存在するとかしないとか】


【固有スキル:全ての生き物が個々に〝種〟を持つ先天的なスキルの総称。親和性は神だが習得難易度は鬼。スキルの開花方法は個々で違い、場合によっては開花させられずに一生を終える者も。だがその分スキル性能はとても優れており、もしもの切り札として使用する者も多い】



オセロア「以上の四種が一般的に知られているスキルの枠組みとなります。そしてこれより先は限られた者のみが知る大変レアな枠組みとなっておりますので興味がおありの方は目を凝らしに凝らしてご覧ください」

《ふふっ、今日は物凄く調子がイイわ。これなら主役交代待ったなしね》


スタッフ:カンペ【──!? ちょっ、それは次回のやつ!】


オセロア「えっ!? あっ、えっ!?」


スタッフ:カンペ【次はエンディングエンディングっ!】


オセロア「──!! た、大変失礼いたしました。前回に引き続きどうやらお時間が来てしまったようです」

《あ〜ん! なんでこうなるのぉ〜!》


スタッフ:カンペ【ここでキメ台詞っ!】


オセロア「はっ、はい! 了解しま──」


スタッフ:カンペ【──返事すな!】


オセロア「はi──そ、それでは次回またお逢いしましょう。白黒つけたいお年頃のオセロアでした」

《またこのパターン!? 完全にデジャヴってない!?》



スタッフ「はいカーット! お疲れ様っしたー!


オセロア「お、お疲れ様でした……」


スタッフ「今日も最後はちょっと……いや、かなりアレだったけど次もこの調子でおなしゃーす!」


オセロア「は、はい、すみませんお願いします……」

    《ゔうぅっ、途中まで調子良かったのに結局やらかしちゃった……今日も早くお風呂入って寝たい……》


クリスタ「……この日も前回同様、疲れ果てたオセロアは泥のように眠ったのだった……って、やっぱ私の出番これだけ!?」


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