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第26話 帰り道


「おっと、そんなに警戒しないでおくれ」


 その声の主はなんと、先程冒ギルを退館したはずの弓士アノープス。

 突然の出現に驚き警戒丸出しの私に向けて、頭をポリポリと掻きつつ「はは……」と苦笑い。


 あ、別に何かしようって訳じゃなさそう……それに殺気もないし、特に警戒する必要ないかも……


 彼の困り顔を見たら急に安心できた。



「ふぅ、どうにか落ち着いてくれたようだね」


「まぁね……で? なんか用?」


「あ、そうそう。実はコレを渡したくてね」


 そう言ってアノープスが差し出したのは四つ折りにされた小さなメモ用紙。

 何が書かれているのかドキドキしながら広げて読んでみると、そこには彼らが寝泊まりしている宿屋の店名と各自の部屋番号が。



【仮宿専門宿屋:ヤドカリ亭】


【シリエス:202】

【アノープス:203】

【レジーナ:205】

【ピスカ:206】



「さっきはウチの大将がアレなもんだから渡しそびれちゃったけど、もしよかったら遊びに来てよ。僕らがAランクに昇級した後にでも、ね」


「へぇ〜、すっごい自信だね?」


「まぁ、ウチのメンバーはみんな凄いからねぇ……っと、そろそろ戻らないとまた女子らに怒られてしまうよ」


「またって……一体何回怒られてんのよアンタ」


 またもや頭を掻きながら苦笑いを浮かべたアノープスは、「それじゃあ、また」とだけ告げて去っていった。


「……あ、そういえばお礼するの忘れてた。あの時のやつ……ま、後でいっか」


 いつものように開き直った後、彼から貰ったメモ用紙をツールポーチに仕舞い、再び振り返──



「──ねぇ、アイツ誰?」


「ひゃっ!?」


 今度はプラータが突然背後に……てかっ、みんなして私を驚かせよう大会でもやってるわけ!? こっちの心臓が保たないんだけど!?

 などと怒りつつも振り返り、透かさずみんなを睨みつける……が、そこにはプラータしかおらず、躍起になって二人を探したところ、受付カウンターにエタンが、他の冒険者たちの所にフェルムがいることを確認。


 アっ……アイツらぁぁぁ〜っ!! 戻ってきたなら真っ先に逢いに来るのが仲間ってもんじゃないの!? ちょっとはプラータを見習ってよね!


 このように半ば……いや、全ギレしていると、プラータが平然とした表情で私に問う。


「ひょっとしてキレてる?」


「はいぃ!? 別にキレてませんけど!?」


「ふーん……で、さっきのアイツ誰?」


「そっちから聞いてきたのに興味ナシ!?」


 それからすぐ、呆れて私が「はぁ……まぁいいや。あの男は──」と話し始めたところで漸くあの二人が来て、それに合わせるかのように日暮マーニの鐘が鳴ってしまったため、大急ぎでみんなと店仕舞いを始めた。


 ギルド内での商いは9時から18時までと定められているため仕方のないことではあるが、まだまだ沢山の冒険者がいるのに勿体ないなぁと思う。今度、直談判でもしてみようかな……



「……はぁ、まーた碌でもないこと考えてるだろお前」


「ギクっ!? そそっ、そんなことないですけど!?」


「いやギクって言っちまってるし、そもそも顔に出て──」


「──おいお前ら! 早く片してお嬢様方の元へ帰るぞ! 全く……というか何故私までこのようなことをぶつぶつ……」


 うわぁ……なんかぶつぶつ言ってると思ったらホントにぶつぶつ言ってるぅ……うん、近寄らんとこ。


 軽くそう誓った。


 その後、店仕舞いを終えた私たちは営業許可証を返すため受付カウンターへと向かい、列に並ぶことなく用事を済ませ、スッキリとした気分でギルドを退館。

 どうやら列ができるのは営業開始時と終了時の前後1時間だけらしい……と、受付の男性職員からさっき聞いた。名前は知らんけど。


「そういやあのおっさん誰だったんだ? 妙な気配してやがったけどよ」


 冒ギルからの帰り道、唐突にフェルムが問いかけてきた。


「えっ? あの受付の人? まだおっさんって歳じゃ──」


「──ちげぇよ! あの水色の髪のやつだよ!」


「ふむ、確かにそのような男もいたな」


 えっ!? えっ!? なんで二人とも知ってるの!? と驚くも、すぐに答えを導き出す。


「ウソ……アンタたち気づいてたってこと!?」


「へへっ、まぁな」


「気づかぬ方がおかしいだろう」


 得意げな表情を見せる二人に対し、身体をワナワナと震わせ、思ったことをぶち撒ける。


「だっ……」


「……だっ?(×2)」


「だったら私のとこに来いやぁぁぁっ!! もし襲われてたらどうするんじゃい!!」


「ひぃっ!? ……じゃい?(×2)」


 あの時のことを思い出してマジギレする私……を見兼ねたのか、プラータは後ろから「よしよし」と頭を撫でて宥めてきた。不慣れな手つきで。


 そんなもので私の怒りが収まるとでも!? と思っていたはずが、このひんやりと冷たい手の感触を思い出した途端に右手が疼き、気づけば不思議と怒りは収まっていた。そして……



「……じゃ、行こっか」


 私の隣に来るなり左手を差し出してきたプラータ。今朝のように穏やかな表情で。

 その優しげな瞳に誘われるがまま、「うん、そうだね」と迷わず彼の手を取り──



「──お〜っと身体が滑ったぁぁぁ〜っ!!」


 私たちの間に割って入ったのはなんと意外にもフェルムだった。それもバレバレの嘘をついて。理由は分からないけど。


 それはともかく、本当に意外すぎて私とプラータは呆気に取られ、更には大声を出したことにより周囲の視線を一身に集めてしまう結果に。


「くっ、この馬鹿者どもが……仕方ないっ、走るぞ!」


 そう告げて駆け出したエタンの後を慌てて追いかける私たち三人。当然、好奇の目に晒されながら。

 なれど、走っているうちに段々と楽しくなってしまい、みんなの顔を見渡しては密かに独り笑いを。

 未だ賑わう街中を駆け抜け、人目の少ない街外れに至るまでの短い間ではあったが。


 ただそれでも、今まで経験したことのない私にとっては最高のひとときであり、送ることのできなかった青春の一部を味わえた気がしてとても、とても嬉しかった。

 きっと忘れない……ううんっ、忘れたくない!! そう願ってしまうほどに。



「あ〜楽しかったぁ! 夜にっ、しかも誰かと走るなんて初めてだったからすっごく新鮮っ! てか、これぞ青春!! って感じ!」


 程良く汗を掻き、両手を広げて満足げに笑う私。


「はははっ、なんだそれ? 大袈裟なやつだなぁ」


 そんな私を見て、冗談交じりに笑い返すフェルム。

 されど、この時に思う。全然、大袈裟なんかじゃないんだけどな……と。


 急に暗い顔を浮かべたせいでみんなに心配を掛けさせてしまい、それを心苦しく思った私は「そっ、そういえばさっ、みんなはあの男について知りたいんだよね!?」と誤魔化し、アノープスのみならず【ブライテスタ】の四人について話すことにした。


 彼らがAランクへ上がるために聖剣を探していたこと、私が聖女の名で武器を進化させてしまったこと、そして今夜、その武器の能力アビリティによって目的を果たすかもしれないということを。


「──っていうわけなの……あっ、別にやらかしたことを隠そうとしてたわけじゃないからね!? ただ単に言い忘れてただけだから!」


「……」


 みんなに勘違いされたくない一心で弁明したものの、完全に足を止め、無言で険しい表情となった彼らを見て気づかされる。


《そっか……本当にやらかしちゃったんだ、私……》


 昨日、みんなで談笑してた時に話してたもんね……王都にいたときから三人もAランクを目指して頑張ってるって。

 それなのに、私がやらかしたせいでそのチャンスを不意にするどころか他の人たちにあげちゃったんだ。

 あの四人も決して悪い人たちじゃないけど、それでもチャンスをあげるならみんながよかった……あぁ、みんな……



「……ごめん……」


 己の愚かさを悔いては滲み出る涙。それも、みんなの顔が歪んで見えるほどに。

 だが今泣けば間違いなく困らせてしまうと、必死に堪えて叱責を受け入れることにした。震える唇を固く結び、俯きながらも耳を傾けて。ただ……


「……ん? 何故謝るのだ? お前は何一つ間違ったことをしてはおらんぞ?」


「……え?」


 エタンが口にしたまさかの回答に、思わず唖然とした私は……──



      【オセロアのマメな豆知識】



スタッフ「オセロアさーん! 今日からミニコーナー撮りますんでおなしゃーす!」


オセロア「こっ、こちらこそお願いします!」

    《物凄く緊張しちゃってる……けどっ、夢に見たメインだし頑張らなきゃ!》


スタッフ「んじゃいきまーす! 5、4、3……」



オセロア「皆様、ご機嫌いかがでしょうか。わたくしは至って普通です。さて、本日から始まりましたオセロアのマメな豆知識。進行はわたくしオセロアが務めさせていただきます。それでは早速ですが、記念すべき第一回目は〝世界の成り立ち〟についてご説明させていただきますので先ずは白板をご覧ください」



【メガロス・ドワーファ(偉大なるドワーフ族の意)】


【エオナス・エルファ(悠久なるエルフ族の意)】


【イェネオス・ビーマ(勇敢なる獣人族の意)】



オセロア「このように遥か古の種族たちが各々建国して現在に至るわけです。彼の者たちは三大種族と称され、それらの血は(わたくし)たち混血人種(ミクシス)にも等しく流れており、外見や内面に深く影響を及ぼしているとのこと。そしてその影響をまとめたものがこちらになります」



【ドワーフ族の血が濃い場合:琥珀色の瞳、低身長、ものづくりが得意、呑兵衛、加工・採取・建設など生産系のスキルを覚えやすく直感的】


【エルフ族の血が濃い場合:翡翠色の瞳、細身、手先が器用、野菜や果物を好む、感知・隠蔽・干渉など補助系のスキルを覚えやすく理論的】


【獣人族の血が濃い場合:瑠璃色の瞳、筋肉質、五感や身体能力が高め、肉や魚を好む、武技・体技など戦闘系のアーツを覚えやすく本能的】



「実はこれら以外にもごく稀に三種の血が均等な者もおります。例を挙げればルゥ様がそれに該当するのですが、正直なところ謎に包まれているためご説明ができません。ただ、彼女と行動を共にしているときにふと思うことがありまして……それは、とにかく酒好きですっごく手先が器用ですこぶる運動神経がイイ! ってことです。あとは──」


スタッフ:カンペ【──ちょっ、素が出てる素が出てる!】


オセロア「えっ!? あっ、えっ!?」


スタッフ:カンペ【もういいからエンディングに向かって!】


オセロア「──!! はい! 了解しました!」


スタッフ:カンペ【返事しちゃダメでしょうが!】


オセロア「はい! 了か──コホンッ、大変失礼いたしました。どうやらお時間が来てしまったようです」


スタッフ:カンペ【よしっ、そのままキメ台詞言っちゃって!】


オセロア「はi──そ、それでは次回またお逢いしましょう。白黒つけたいお年頃のオセロアでした」



スタッフ「はいカーット! お疲れ様っしたー!


オセロア「お、お疲れ様でした……」


スタッフ「最後はちょっと……いや、かなりアレだったけど次もこの調子でおなしゃーす!」


オセロア「え? あ、はい、お願いします……」

    《全然ダメなうえに物凄く疲れた……あぁ、早くお風呂入って寝たい……》


クリスタ「……この日、心身共に疲れ果てたオセロアは泥のように眠ったのだった……って、私の出番これだけ!?」


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