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第25話 聖女の名は


「いや〜、それにしても冒険者ギルドで武器を売るなんて凄い度胸だよ! キミは勇敢な人なんだね!」


「は、はぁ……どうも」


 武器たちを物色している最中に色々と話しかけてくるこの男。ホントに元気すぎて対応に困る。

 なのに、真剣に見てくれていることを嬉しく思ってしまうなんて……これが親心というものなのだろうか。



「ふむふむ、なるほどなるほど……」


 この男が何者かは分からない。けれど、只者じゃないことだけは分かる。


「ほうほう、これは凄い。こんな大物今まで見たことないや……」


 だって、あの三人と似たような気配が漂ってるもの。強者の匂い的なやつがプンプンとさ。


「うーん、僕的にはもう少し小さい方が握り易いかも……」


 もしやこの男もBラ……ん? 確かにその子は大剣だからグリップを厚めにはしてるけど──


「──でもやっぱりニギニギしてみたいなぁ……そのおっぱい」


「こっちかい!」


 あ、しまった、ついツッコんじゃったよ……ゔぅ、これで機嫌を損ねなきゃいいんだけど……


 なんて心配していたのが嘘のように、この男は笑顔を見せて「キミみたいな強気なコ、僕好きだなぁ」とまさかの告白を……いや、ギリギリされてない……のか?


 どちらにせよ、急に告げられたことで慌てふためく私。

 すると突然「ゴチンッ」と打撃音が響き、男の頭上には鞘に納められた大剣が。


「全く、少し目を離したらこれだ」


 呆れた表情で現れたのは褐色の肌に菫色の長い髪を靡かせる女剣士。

 白銀に輝く軽鎧ライトアーマーが見た目をより一層際立たせている。


「まぁそう言いなさんな。これでも結構必死なんだからさ、彼も」


 続けて現れたのは水色の髪を持つ気の緩そうな男弓士。

 男にしては珍しく短弓の使い手のようだ。


「ねぇ、それより見つけたの? 例のアレ」


 最後に現れたのは桃髪サイドテールの可愛らしい女拳闘士。

 重金属ベビーメタルの胸当てや籠手までもピンクに染めたお洒落な女のコ。


「いてて……あっ、みんなどこ行ってたの? ったくもう、目を離すとすぐこれだもんなぁ」


「それはこちらの台詞だ! というか先程言ったばかりだが!?」


 なんか面白いのが始まった。

 でもこの人たちも強い。強者の気配がプンプカ匂う。


「あれぇ? そうだっけ……? ま、いっか。それよりここにも無かったよ、アレ」


 ……アレ? なんのこと? 何か探し物っぽいけど……


「あーもー! 全っ然見つからないじゃない! 一体どこにあるっていうのよ聖剣っ!」


「せっ、聖剣──ッ!?」


 咄嗟に叫んでしまった私を見て、キョトンとする四人。

 だがすぐさま目の色を変えた男弓士が「何か心当たりでも?」と私に問いかけ、同時に刺すような視線を寄越す。


 ──ッ!? な、なんなの急に……!? てか超ムカつく! 初対面なのにそんな目寄越すな!


 無性に腹が立ったため「んなもんあるか!」と強気で答えてみせると、男弓士は手の平を返したように「だよね〜、急にごめんね〜」と軽いノリで謝ってきた。


 当然そんなものでは気が収まるはずもなく、寧ろナメられていると感じた私は「聖剣っていうくらいなんだから聖女が持ってんじゃないの!」と適当な助言を言い放った、のだが……



「……!! うんっ、そうだ! それしかないよ! なんで今まで思いつかなかったんだろ!」


 微塵も疑うことなく鵜呑みにしてしまった男剣士。その翡翠色の瞳をより輝かせて。


 うっ、嘘でしょ!? 今の話信じちゃったの!?


 驚きつつも罪悪感に駆られてしまい、ギルドから出ていこうとする男剣士の後ろ髪を引っ張ってそれを阻止。どうにか最悪の事態は免れることができた。


「いててて……う〜ん、なんで止めるかなぁ?」


「えっ!? あ、いや、そのぉ……」


 い、言えない、実は嘘なんですなんて絶対……だって、もし言ったらホラ吹き武器職人として名を広めることになっちゃうもん! そしたらみんなに迷惑掛けちゃうもん!


「……あっ、そうか! 聖女様の名前を聞き忘れてたから止めてくれたんだね!」


「……へ?」


 なんかおかしな展開に突入した。


「ははっ、そいつはいい。それでは教えてもらいましょうかね。その聖剣を持っているという聖女様の名を」


「──ッ!?」

《くっ、わざと乗っかってきたなこの男……ッ!!》


 男弓士の策略によって聖女の名を答えるよう迫られたため、自分でも分かるほどに目を泳がせながらも聞き覚えのある聖女の名を思い出そうと脳をフル回転。


 えーっと聖女の名前聖女の名前聖女の名前……あっ!


 この瞬間、偶然にも男剣士の携えた片手剣ショートソードが目に止まり、咄嗟に思い浮かんだ〝ある聖女〟の名を無意識に口にする。



「ジャンヌダルク……」


「えっ、ジャン……?」


 男剣士がその名を言い損なった刹那、片手剣が眩いほどの光を放ち、私と男剣士の頭の中に謎の知識が流れ込んできた。



【無銘の剣が〝ジャンヌのつるぎ〟に進化した】


【ジャンヌの剣:攻『+200%』・耐『+400%』・能力アビリティ『神聖光輝』】

【詳細:異世界の偉人『ジャンヌ=ダルク』が愛用していた片手剣の魂を宿すことで進化を遂げた元無銘の剣】

【神聖光輝:神聖なる光によって四種の効果を発揮できる。効果は『清浄』『浄化』『鼓舞』『解呪』】



 あ、またやっちゃった……って、ひぇっ!?


 さきの眩い光に全ての者がこちらを見て唖然とし、その光景はまるで時が止まったかのようで思わずたじろいだ。

 しかしそんな折、ハッと我に返った女剣士が第一声を上げる。


「い、今の光は……はっ! まさか呪い!?」


 意味不明イミフな台詞を吐いたかと思えば即座に大剣を抜く女剣士。その大きな刃の切っ先を私の顔に向けて殺気を放つ。

 すると辺りは一斉にどよめき、奇異な視線を浴びせ、あたかも私が悪役かの如く振る舞う。


「ちょっ、私はただ──」


「──問答無用ッ!!」


 叫んだ直後に女剣士は大剣を振り上げ、容赦なく私の頭上に振り下ろし──


「──イケる! これなら勝てる!」


 この緊迫した状況のなか、喜び燥ぐ男剣士により間一髪のところで斬られずに済み、更には両手を熱く握られては「ありがとう! 強気な聖女様っ!」と熱烈な感謝までも。

 それが嬉しくもむず痒く感じられ、斬られかけたことなど二の次となっていた。


 えへへっ、なんだか照れちゃうなぁ。まさかこんなに喜んでもらえる──って違う! それどころじゃないじゃん私っ!


 風向きが変わった今、呪いの容疑を晴らさねばと急いで策を講じる……が、全く思い浮かばず。


 このままじゃホントに呪いを掛けたと思われちゃう! それだけは絶対にイヤっ! そう強く焦りだすと、男弓士が徐ろに私を指差してこの一言を。


「きっとソレが誤作動を起こしたせいだね、さっきの光」


 透かさず指し示した先に目を向けると、そこにはおっぱ……ではなく、御守りとして首から下げていた閃光の魔導具が。


 つまり、コレが先程の光を放ったことにしようというわけか。中々どうして侮れない男……だが乗った!


「えー、なんだってー、この閃光の魔導具がー、誤作動を起こしただってー、そんなバカなー」


「いや下手クソすぎでしょ」


 女拳闘士にツッコまれた。



 それから間もなくして、呪いの容疑が晴れた私は「誠に申し訳ない!!」と女剣士から猛烈な謝罪を受け、その流れで四人の正体及び聖剣探しの事情を知ることに。


 この四人はBランクパーティ【ブライテスタ】

 古代語で〝一等星〟を意味する、この街では稀少な上位戦力者たち。


 剣士『シリエス』、大剣士『レジーナ』、弓士『アノープス』、拳闘士『ピスカ』


 どうやらこの街にはAランクはおろかBランクの者も僅か八人しかおらず、その〝危機的問題〟こそが今回の聖剣探しに繋がっている模様。

 まぁ尤も、私がやらかしたお陰で聖剣を探す必要がなくなったみたいだけど。



「よ〜しっ、あとは夜になるのを待つだけだ! 待ってろよ〜亡霊ども!」


 張り切って冒ギルを後にしたシリエス……と、「やれやれ」とか言いつつも彼に付いていく三人。

 なんだかんだでバランスの取れた素敵なパーティだと思う。


 そんなイイ感じの四人を笑顔で見送った後、「さーて、またのんびり客でも待ちますかぁ」と再び椅子に座ろうと振り返った次の瞬間、誰もいないはずの背後から気配を感じ……──



       〜メイキング&NG集〜



スタッフ「んじゃ次は〝探し物〟のシーンいきまーす!」



シリエス「いてて……あっ、みんなどこ行ってたの? ったくもう、目を離すとすぐこれだもんなぁ」


レジーナ「それはこちらの台詞だ! というか先程言ったばかりだが!?」


クリスタ「なんか面白いのが始まった。でもこの人たちも強い。強者の気配がプンプカ匂う」


シリエス「あれぇ? そうだっけ……? ま、いっか。それよりここにも無かったよ、アレ」


ルゥ:ナレ「……アレ? なんのこと? 何か探し物っぽいけど……」


ピスカ「あーもー! 全っ然見つからないじゃない! 一体どこにあるっていうのよ聖剣っ!」


ルゥ「せっ、聖剣──ッ!?」


クリスタ「咄嗟に叫んでしまった私を見て、キョトンとする四人。だがすぐさま目の色を変えた男弓士が──」


アノープス「何か心当たりでも?」


クリスタ「──と私に問いかけ、同時に刺すような視線を寄越す」


ルゥ:ナレ「──ッ!? な、なんなの急に……!? てか超ムカつく! 初対面なのにそんな目寄越すな!」


クリスタ「無性に腹が立ったため──」


ルゥ「んなもんあるか!」


クリスタ「──と強気で答えてみせると、男弓士は手の平を返したように──」


アノープス「だよね〜、急にごめんねごめんね〜」


クリスタ「──と軽いノリでブフッw」


ルゥ「あ〜っ!? あとちょっとだったのにぃ! なんで笑っちゃうかなぁ!」


クリスタ「ちょっと!? 今のは私じゃなくてあのおっさんのせいでしょ!?」


ルゥ「はぁ? おっさん何も悪くないじゃん。自分のミスを人のせいにするとかないわぁ〜」


クリスタ「はぁぁぁっ!? アンタ正気ぃ!? さっきの芸人ネタみたいな台詞ちゃんと聞いてた!?」


ルゥ「芸人ネタ? ちょっと何言ってるか分からない」


ブラテスの四人「ブフッw」


クリスタ「ちょっwわざと知らないフリしてんでしょw」


ルゥ「んなこたぁない」


クリスタ「ブハッwもういいからw」


スタッフ「はいカーット! 〝Take2〟いきまーす!」


アノープス「ブホッw」


スタッフ「だめだこりゃ、次いってみよ〜!」


アノープス「だははははっ!!」


ルゥ・クリ「……え? 今笑うとこあった?」


シリ・レジ・ピス「さぁ〜?」


アノープス「あれぇ!? まさかのジェネレーションギャップっ!?」


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