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第24話 初めての商い


「申し訳ございません。料金が足りておりませんので営業許可証をお渡しすることができません」


「え゙ぇ〜ッ!?」


 この時、雷に打たれたような衝撃が走った。


 あの赤き深紅(笑)とのくだらない一悶着が済み、昨夜見出した〝できること〟を成すためにショバ代を払うはずが、まさかの資金不足だと宣告されたからだ。


 そっ……そうだったぁぁぁ〜!! お財布の中身っ、2023マドカしか入ってなかったんだったぁぁぁ〜!!


 ショックのあまり茫然とする私に対し、クール系美人の女性職員『オセロア』は、先程と全く同じ無表情のまま先程と全く同じ台詞を放ってきた。

 加えて、「料金をお支払いいただけるようになられてからまたお越しください」と表情一つ変えずにトドメを刺してきたのには流石の私も「……はい、出直してきます……」と返すことしかできず、資金調達の目処もないため途方に暮れる羽目に。


 ど、どうしよう……武器職人が武器屋に武器を買い取ってもらうのはタブーだし……あとはお金を借りるとか? でも借りるにしても一体誰から……って! 今誰を思い浮かべたんだ私の馬鹿っ! 借りられるわけないだろあの人から! 寧ろっ、私がお金を稼いでこなきゃなのに! なのにっ、なのにっ……!!


 早くも〝できること〟を絶たれ、更には救うと誓ったはずのイリアさんに頼ろうとした自分自身に心底腹が立ち、そんな己の無力さと馬鹿さ加減により全身から怒気を漏らす。

 静かに俯き、身体を震わせ、下唇を噛み締め、爪が食い込むほど強く両手を握り締めながら。


 そんななか、突然カウンターテーブルの上にドサッと何か重量物を置かれたような音が耳に入る。

 どうやら私の隣に来た誰かが置いたようだ。もしかすると次の人かもしれない。


 あ……私、邪魔になってるのか……それより何置いたんだろ……とても重そうだけど……


 妙に気になったため上目で覗いてみると、そこには丸々と肥えた硬貨袋と見慣れた黒服に長細い指が。


「──!? コ、コレって……」


「コレが必要なのだろう? ならば使え。お前にはその権利がある」


「権利……?」


「そうだ。まぁ、その……色々と恩があるからな」


「エタン……でも──」


「──でももルーファもない! これはお嬢様のご希望でもあるのだ! なのでお前の言い分は全て却下とする!」


「お、横暴すぎる……けど、ありがと」


「ふんっ、お嬢様のご希望に沿っただけだ」


 そう言い残すとエタンは去っていき、この一部始終を眺めていたオセロアは、尚も無表情のまま硬貨袋の中身をあらためだした。


 さっきはあんな驚いてたのにもうなんともないのかな……見たところ私と同じくらいの歳っぽいけど、こんなクールなコ今まで見たことないや……


 ティナちゃんとエタンに感謝の念を抱きつつも、何故か目の前の彼女が気になってしまう。

 それは見ているうちに親近感を覚えたからかもしれない。

 例えば歳が近く、身長もほぼ同じ。だがそれ以上に〝黒髪〟を持つ者同士であり、恐らくそれが決め手。

 そう……実は私にもあるのだ。この後ろ髪をまとめているバレッタを外せば、ほら。


「……? 急にどうされまし──」


 私の持つ1束の黒髪。それを見せるために髪を解くと、父譲りの金髪と母譲りの桜色の毛先、そして頭頂部には黒いアホ毛がぴょこんと出現。


「──!! その黒髪……まさかっ、貴方も転生者──ッ!?」


「ひゃっ!? ビ、ビックリしたぁ……」


 案の定……いや、想定以上の反応を示したオセロア。

 カウンターテーブルに両手を叩きつけながら、勢いよく椅子から立ち上がっては目を見開いた。

 その表情は驚きの中に希望が見え隠れしているような、そんな感じ。だけど……



「てんせーしゃ……? 何ソレ?」


 私のこの一言を聞いた途端、彼女は落胆の表情を見せてこう返す。「あ……いえ、なんでもございません……」と。


 その後はまた無表情に戻り、「……どうぞ。こちらが営業許可証となります」とプレート型の営業許可証を差し出すとともに、余った銀貨の入った硬貨袋をその横に置いた。


「ど、どうも……あ、それで──」


「──ご利用ありがとうございます。では次の方どうぞ」


 ゔっ、取り付く島もない……まっ、仕方ないか。こんなに並んでるもんね。

 取り敢えずテーブルも貸し出してるみたいだし、あの場所を取られる前に早く移動しよっと!


 オセロアとはまた後で話せばいい。そう結論づけた私は、イリアさんの体験談にもあった〝物を売るなら依頼掲示板のすぐ隣にすべし!〟を実行するため、急いで掲示板の左隣を確保し、二台のテーブルを前後に密着させ、自前のテーブルクロスを敷き、その上に我が子とも呼べる武器たちをずらりと並べた。

 因みに何故左隣かというと、こちらの方が出入口に近いからだ。

 ここなら掲示板へ来る者と掲示板から去る者、そのどちらもが目の前を通る。まさにベストポジション。


「あっ、忘れてた。コレも出しとかなきゃね」


 ツールポーチから取り出したのは閃光の魔導具。もしもの御守りとして首から下げておこうかと。


「よーしっ、あとはじゃんじゃん売るだけだ! 武器と〝イリア〟の名を!」


 こうして人生初の商いを始めるも、そうそう客が来るものではないことなど初めから分かっている。

 なので、その間に〝できること〟を今一度確認しておこうと思う。



 昨夜、私が見出した〝できること〟……それは、商い。

 別に露天商でも良かったのだが、それだと競合相手が多くショバ代も高くつく。

 実はギルド内で営業可能なことを知っている者は意外にも少ない。

 そして何より、最も武器が必要な職種といえば冒険者以外にはない。だからこの場所を選んだ。

 これらの情報はイリアさんの体験談から得たものであり、私的にもできる気がしたので即実行に移した次第だ。

 しかし、ここからが重要。私が商いをする目的は大きく分けて三つ。



 一つ、〝イリア〟の一員として失った名声を取り戻すため。


 二つ、みんなの生活が豊かになるよう資金を得るため。


 三つ、ティナちゃんたちの味方を増やすため。



 どれも延いては〝成すべきこと〟への大きな足掛かりにもなると確信している。まさにパーフェクトプラン。



「成し遂げてみせる……!! 夢も復讐も絶対に……ッ!!」


 そう力強く宣言を口にした直後、依頼を受注し終えた仲良し三人組トリオが様子を見に来てくれた。


「おっ、やってんな? 初めはなんで付いてくんのか分かんなかったけどよ、まさか商売たぁな」


「むふふっ、まぁね! ……でもさ、来て早々に悪目立ちしちゃったから誰も寄ってくれないんだよねぇ」


「……そう。なら俺が連れてくるよ……力尽くで」


「やめい!」


「お前らもう行くぞ。今日は地理の把握もせねばならんのだからな」


「地理……? あっ、そっか。三人とも初めての依頼だもんね。私と一緒一緒」


「ふん、まぁそういうことだ」


「それじゃあいってらっしゃい! 私も頑張るからみんなも頑張ってね!」


「おう!」


「うむ」


「うんっ」


 三人の背中を見えなくなるまで見送った後、引き続き客が来るのを待つことにした私。

 上半身だけツナギを脱ぎ、両袖を前できっちりと結んで気合を入れて。

 とはいえ、ただこうして立っていても疲れるだけだと、貸し出しの椅子に座ってのんびりと気長に待つ。そして……




《……ひっ、暇すぎるぅぅぅ〜っ!!》


 あれから暫く立つも、誰一人としてこない。

 目の前を通る際、武器たちに視線を向ける者はチラホラといるものの、結局立ち止まるまでには至らず。


 はぁ……幾ら気長にといっても流石に長すぎるよぉ……てか、やっぱ悪目立ちしすぎたからかなぁ……はぁ……


 こんな具合にすっかり落ち込み、ふと眼前の人混みに目を向けると、その人混みから飛び出してきた何者かが瞳に映る。


「おわっ!? おっとっとっと……ふぅ、危うくコケるとこだったよ」


 突如現れた一人の金髪剣士。明るく元気な〝わんぱく小僧タイプ〟の男。

 すると周りは騒然とし、近くにいた者は皆距離を取って様子見を。

 その異様な雰囲気を察した私もまた、真顔となって様子を窺うことにした。

 この男の反応いかんによって、状況が良くも悪くもなる。そう感じたから……──



       〜メイキング&NG集〜



スタッフ「今日は〝24話目〟撮りますんでおなしゃーす!」


みんな「おなしゃーす!!」


スタッフ「んじゃ本番いきまーす!」



女性職員.(オセロア)「申し訳ございません。料金が足りておりませんので営業許可証をお渡しすることができません」


ルゥ「え゙ぇ〜ッ!?」


クリスタ「この時、雷に打たれたような衝撃が走った。あの赤き深紅(笑)とのくだらない一悶着がブフッw」


ルゥ「──!? なんだなんだぁ!? 急にどしたぁ!?」


クリスタ「くくくっ……だ、だって赤き深紅よ? こんなの笑わずにはいられないでしょw」


ルゥ「う〜ん、そりゃまぁそうだけどぉ……」


クリスタ「ていうかさぁ、どんだけ厨二病拗らせてんのよコレ考えたやつww」


ルゥ「ププッwそれ真理ww」


オセロア「ちょっ、今日〝原作者〟来てるから!」


クリスタ「え゙ぇっ!?」


ルゥ「うそマジっ!?」


オセロア「マジマジっ! ほらあそこっ、あの分厚いサングラスに黒キャップと黒マスクしてるいかにも怪しいおっさん! アレがそうよ!」


ルゥ「え゙っ、どこどこっ!? どこにいるの!?」


ネウ「……あ、いました……白のTシャツに四天王とプリントされた……あとは黒のハーフパンツと……雪駄?」


ルゥ「はぁ!? 何それウケるんだけどww」


クリスタ「四天王、四天王、四天王……あっ、いた! あそこにいるわ! 言われてみれば確かに怪しそう……って、なんか泣いてるわよ!?」


ルゥ「うわっ、ホントにいるじゃん! ウチらでなきゃ見逃しちゃうね!! てか、いい大人なのにボロクソ泣いててキモっ!」


オセロア「もうやめて! とっくに原作者のライフはゼロよ!!」


ルゥ・クリ「あははははっ!!」


ネウ「くふふ……」


クリスタ「もうダメw片腹痛いわww」


ルゥ「ちょっwソレ意味違うからw──って、あ゙ぁ〜っ!? ボロクソ泣いたまま帰る気だ! そしたら降板待ったなし!? どっ、どどどどどうしよネウちゃ〜ん!」


ネウ「……わ、笑えばいいと思います……」


ルゥ・クリ・オセ「……!! それだぁぁぁ〜っ!!」



《ぎこちない笑顔を見せる三人》



ネウ「……あ、もっと泣いて帰っちゃいました……」


ルゥ・クリ・オセ「……え?」


スタッフ「はいカーット! 三人とも降板でーす!」


ルゥ・クリ・オセ「──ッッ!? ごめんなさぁ〜い!!」


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