第21話 始動
「ふぅ……今日は色々あったしこのくらいにしとくか!」
なんて独り言を口にしたのは私ことルゥ。
たった今、本日最後の武器を造り終えたところでこれから片付けに入るつもり。
不思議と昨日よりも出来のイイものが多く、それには私自身も驚いている。
尤も、造る前から確信めいた何かを感じてはいたが。
それにしてもホント、今日は色々ありすぎて大変だったよ。はぁ……
就寝中の裏拳攻撃から始まって、スラム街では人助けしたりスキルが開花したり住人に襲われたりもしたし、その帰り道ではランニングハイになったり盗賊に襲われたり供養までもした。
工房に帰ってからは裏庭を見て泣いたり人の顔を見て泣いたり経緯を話したりメモを見て泣いたり……って、あれっ!? 私っ、泣いてばっかじゃない──!?
「ま、まぁ、それはそうと、あとはえーっと……あっ! 思い出した!」
あの後、トイレから戻るとみんなが食事の後片付けしてたから私も食器洗い要員として参加したんだけど、あまりにもトイレが長かったからウ◯チしてたと勘違いされたのはホント恥ずかしかった。
といっても、勘違い野郎はフェルムとエタンの二人だけだったけどね。
勿論、疑いはきっちりと晴らした……物理で。
それと私がトイレに篭ってた時、いつの間にか衛兵所から帰ってきてたゴルトがまたいつの間にか衛兵所にイルズィオールを連行してたのにはショックを受けたなぁ。
だって、あの男には色々と聞きたいことがあったからさ。
まっ、あとで面会にでも行けばいっか! ってすぐに開き直って食器洗いを再開したけども。
後片付けが終わってからは今後について話し合いしたんだよねぇ、みんなと。
先ずティナちゃんたち五人は暫くの間、この街この工房を拠点として〝王都に関する情報収集〟と資金集めのために〝冒険者活動〟をするって言ってた。
でもそれには二手に分かれる必要があって、誰か二人を王都に潜入させなきゃって話になったんだけど、その時……
「その役目、俺たちに任せてほしい」
そう言って居間の扉を開けたのは見知らぬ二人の男女。因みに声の主は男の方。
勝手に入ってきたうえに二人とも黒装束姿なものだから、てっきり新手の刺客かと思って身構えた……けど違った。
女の説明によると、どうやら例の隠れ家で尋問した時の刺客がこの二人。
依頼主である第二王子こと陰険クソ眼鏡の所に戻っても依頼失敗を理由に殺され兼ねないから王都には帰らなかったみたい。
で、このままじゃ路頭に迷うことになるからってこっそりと私たちの後を追って取り入る機会を窺ってた、というわけ。
初めは警戒してた私たちだったけど、あの二人からは殺気が微塵も感じられなかったし、何よりティナちゃんが優雅にお紅茶を飲んでるのを見て理解したんだ。あぁ、この娘は最初から分かってたんだなぁ……って。
そんなわけで王都行きは元刺客の『モンス』(男)と『フルーメ』(女)にお願いすることになり、その分みんなはこの街で冒険者としてお金を貯めつつ新たに〝味方を増やす〟というタスクを追加。
支持者とか支援者とかそういうの。貴族とか平民とか関係なく。
「よしっ、片付け終わり! いっぱい汗掻いたからシャワー浴びよっと!」
3Sを終え、作法であるお辞儀を2回。
それから作業場を出て廊下を歩き、そのまま脱衣所へ直行。
その最中、あまりの火照りと発汗にツナギを半分脱ぐと上半身はスポブラのみとなり、ピアスの付いた臍までもが露出された状態に。
とはいえ別に見られても減るもんじゃなし、全く気にする必要はない。
但し、胸を見られる確率が3倍ほど増えて男の視線が余計に鬱陶しくはなるが。
「はぁ……なんか魅力的なもんでも詰まってんのコレ。こんなの単なる脂肪の塊じゃん。重いし揺れるから走りにくいし重心持ってかれるし超肩凝るし」
なんて愚痴り、両胸を持ち上げながら歩を進める私。
脱衣所に着くなり全裸となり、気持ちよくシャワーを浴びながら今度は考え事を。
今頃みんなは部屋の掃除でもしてんのかなぁ……前に弟子どもが使ってたっていう忌々しい場所をさ。
てか、この際だし浄化でもした方がいいんじゃ……まっ、ティナちゃんがいれば勝手に浄化されちゃいそうだけどね!
「くくくっ、そりゃいいや……あっ、そういえば2階の部屋って確か6つだったような……」
……イリアさん、レオ、ティナちゃん、フェルム、プラータ、エタン、ゴルト、それから私……あれ? 二部屋足んなくない? 一体どうすんだろ……?
一旦は気にしたものの、「……ま、いっか。別に大したことじゃないし」と頭の隅に追いやり、シャワーを止め、下着を履き、部屋着に着替えつつ別の考え事に移る。
明日からは私も本格的に動かないと……でも何をすれば……今の私にできること……ううん、こんな私でもできること、か……
などと自信が持てずに悶々とし、ぐるぐると反芻思考に陥っている間に気づけば夜となっていた。
それも何故かベッドのド真ん中で仰向けの状態に。だがやたら狭い。
今思えば夕食後にきちんと後片付けもしたし、居間でみんなと談笑したり人生初のトランプで遊んだりもした。
あとついでにいうなら私を挟んで睨み合うあの二人と一緒に歯を磨いたのも記憶にある。
でもなんでこうなったのかまでは全然覚えてないや……まっ、いっか。てか狭っ!
明らかにおかしいと思い左右に目を向けると、右隣にはグーグーと大胆に眠るレオの姿、左隣にはスヤスヤと上品に眠るティナちゃんの姿が。
やたら狭い原因が分かったもののどうすることもできず、更には明日のことを考えていたからか全く眠くない。
というよりも、恐らくまだ寝る時間ですらないはず。この子たちに合わせてココにいるのだろう。
「ふふっ、二人して幸せそうな寝顔しちゃって可愛い♡」
あまりにも可愛すぎる二人の頬に軽くキスを。
その後は慎重にベッドから降り、足音を立てぬよう忍び足で居間へと向かった。
「……あれ? 明かりが点いてる……ってことは誰かいるってこと? 一体誰だろ……?」
気にしつつゆっくりと居間の扉を開けて中へ入ると、食卓の椅子に座って何かを眺めているイリアさんがそこに。
見渡しても他には誰もおらず、きっと四人とも自室で思い思いに何かをしているのだ。まぁ、ナニとは言わないけど。
「あら、ルゥちゃんどうしたの? もしかして眠れない?」
「は、はい……ちょっと考え事してて……」
余程浮かない顔をしていたのか、イリアさんは相対席に私を誘い、何かを見抜いた様子で「……そう。これからについて悩んでるのね?」とズバリ言い当てた。
「──ッ!? な、なんでそのことを……!?」
驚く私に対し、彼女は得意げに返答を。
「ふふっ、昨日も言ったでしょ? 貴方は昔の私にそっくりだって」
そう告げて意味深に微笑みかけるイリアさん。
世間話の如く駆け出し時代の体験談を語り始め、その面白さについ夢中となって耳を傾けていた私は完全に目から鱗。
話を聞き終える頃には〝できること〟を見出し、同時に自信さえも得ることができた。
イリアさん、まさかそんなことまでしてたなんて……それにこんな凄い人でも失敗してばかりなら私なんて失敗して当たり前じゃん! だからビビるな私っ! 当たって砕け……いやっ、当たり捲って砕いてやれ!
何故だか猛烈にやる気が漲ってきたので「ありがとうございます! お陰様で明日から頑張れそうです!」と勢いよく頭を下げて感謝の意を伝え、誠意を表すためにゆっくりと頭を上げる……とその直後、笑顔とともに彼女から「おやすみなさい」の一言が。
その首を傾げる仕草や心地の良い声音はまるで母のよう。だから、つい無意識に……
「……おやすみなさい。お母さん……」
「……えっ? い、今なんて……!?」
驚きのあまり唖然とする彼女を目にし、ハッと我に返った私は脱兎の如く逃走。
居間からレオの部屋まで全速力で駆けていき、そーっと扉を開け閉め。
ベッドで眠る二人の間へするりと入り、全力でサクゴエシープを数えだした。
やる気と恥ずかしさと明日への希望を抱いたまま、この二人の温もりに包まれながら……──
〜メイキング&NG集〜
スタッフ「今日から本章を撮りますんで皆さんおなしゃーす!」
みんな「おなしゃーす!!」
(中略)
スタッフ「んじゃ次は〝ほっぺにチュー〟のシーンいきまーす!」
ルゥ「ふふっ、二人して幸せそうな寝顔しちゃって可愛い♡」
ナレーション「あまりにも可愛すぎる二人の頬に軽くキスを。その後は慎重にベッドから降り……ることなどせず、貪るように二人の顔を舐め回して──」
ルゥ「──ちょっと待てぇぇぇーっ!!」
ナレーション「はぁ……何よもう。折角ノッてたのに」
ルゥ「いや勝手に改変すな! ……って、あれ? なんで二人して距離を置いたの? ね、ねぇ……」
ナレーション「ブフッw」
ルゥ「笑うなそこぉ!」
スタッフ「はいカーット! 一旦止めまーす!」
監督「ミス・クリスタっ! アドリブグッジョブっ!」
ナレーション(クリスタ)「ですよね〜!」
レオ・ティナ「ガクガクブルブル……」
ルゥ「もうヤダコイツら〜! ……あ、二人は違うから──ってそんなに怯えないでぇぇぇ〜っ!!」
クリスタ「ブハッww」
ルゥ「だから笑うなぁ!!」
スタッフ「んじゃ次のシーン──」
ルゥ「──いくなぁぁぁーっ!!」




