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リボンのかかった今日
「人生を、『今まで生きてきた分』と『これから生きる残り』のふたつに分けるとする」
そいつはふと隣で僕に言った。
「ああ、そういう分け方もできる」
僕は歩く速度を変えずに相槌を打つ。
「そしたら、『今日』という日は、残りの人生の、一番最初の日ということになるじゃないですか」
「そうだけど。それが?」
角を曲がると西日が顔を照らすので、僕は目を細める。
「つまり、残りの人生の中で一番若いんです。若いってことは、これから何度も訪れる『明日』の私たちに比べて、それはもう何でも出来るんですよ」
「だから走ろうって?」
僕は薄い目でそいつの顔を見るが、影になってよく見えない。
「そういうことです」
「いいよ。今日は付き合おう」
僕の答えに満足したかのようにそいつは得意げに笑う。ふと僕は足を止める。
「ちょっと待てよ、もしかして君は明日も同じ理論を展開して走り出そうとするのかい」
「人生、ずっと走ってるべきなんですよ」
「小賢しい理屈をこねる前に、その本音を一言言えばいいのに」
「真実でも、そのまま言ったら味気ない。現ナマより、リボンのかかったプレゼントの方が好きでしょう」
「間違いない」
僕はシャツの一番上のボタンを外す。
「それじゃ、よーいドン」




