第7話 「喪失の予感」
ガルムおじさんに世話んなってから一週間たった。
最近になってガルムおじさんは敬語をやめたらしい。
どうやらガルムおじさんは初対面の人には敬語を使うらしい。
「タバコ臭・・・!」
「トイレでタバコ吸うなって言ったろ、喫煙所でウンコすんぞ」
「あぁ、すまん」
「お前も吸うか?」
「骨が腐る」
「ていうか未成年にタバコ勧めんなよ」
するとガルムおじさんは真面目な顔して
「人間… 何かに寄りかかってなきゃ生きていけねえよ」
「最悪だなオイ ガルムおじさんって意外と不真面目だな」
「ガルムおじさん、IQ どのくらいだ?」
「確か129」
「へ〜 わざわざ覚えているあたり、自慢に思ってそう」
「いいか、少年、この世は弱肉強食だ。 もし、お前がここを出て行った時、1人で生きていかなければならない」
スルーされた。
「お前は、もっと強くなれ、弱すぎだ」
「この世で強い人間は、大体 頭のネジがぶっ飛んでる奴が多い」
「・・・そして、まともな奴から死んでいく」
「なるほどな、つまりイカれた奴が生き残るってことか」
「まあ、大体そうさあ、勿論 例外もある。」
「そこで、人生の先輩からのアドバイス・・・!」
「少年… お前はまともだ、もっとアホになれ」
「あのさ、それアドバイスになって無いと思うんだけど」
「いいや、立派なアドバイスさ」
経験者は語る。
「腹へった」
ああ、何か食べたい…
ガルムおじさんもそれに反応し
「んじゃあ 何か食べに行こうか」
「おおマジか」
俺とガルムおじさんは街に行ってレストランに入った
「やっぱ人の金で食う飯はウマイっスね」
「たくよう、こっちは高血圧で金がねぇんだ」
「はあ、アドバイスすんじゃ無かった」
「過去最悪の態度だぞお前」
「今どんな気分だ?」
ガルムおじさんが質問してきた
「糞した後の気分… 」
適当に答えただけ
「糞がしたいなら帰って良いぞ」
「やだよ、タダ飯食えるのに何で帰んだ」
「ハハハッ」
「そういえばこの料理高いの?」
「ああ、そうさ、え〜と、いち じゅう ひゃく せん まん… 」
「おっと、数える指が足りないな」
「冗談だろ」
「まあな、嘘さ」
「よし」
「取り敢えず」
「前まで全然元気なかったから安心したよ」
「大丈 V 」
「はあ、これから先の事を考えないと刑務所に撃たれるのがオチだ… 」
ガルムおじさんは俺のことを心配に思ってたらしい。
「まあな、世界が俺を置いていくから負けずに頑張った。」
「それに、明日の俺は今日より頑張れる気がする」
「ありがとうや、ごめんなさいとかじゃ足りないけど」
「せめて言わせてくれ」
「俺は大丈夫です」と
確かに俺は託された、アイツラに。
だから俺も、次の自分に託す。
俺はこれからも抗う。
運命に…
たとえ、お前らが俺の事を忘れても、俺は、お前らを忘れない。
消えていく、俺の家族と過ごした大事な記憶。
もう一度、思い出すための時間を。
ここから始めるとしよう。
ま、きっと天国が楽しすぎてみんな帰って来ないだけだ。
深く考える必要は無い。
黒を差して虹を暴け
「そうか、それなら良かった。」
「それと、いつまで大丈夫なんだ?」
俺はニヤリと笑った。
「そりゃあ、何十年 何百年 何千年の時を超えても」
家に戻った。俺がレストランで食べた物はグラタンだった。
実に美味しかった
「マキさん、何でこんなに部屋が汚いんだよ」
「部屋は汚くないよ? 私が美しすぎるのよ」
へえ~ そうかい そうかい
「ていうか何だよその服、ダサいんだけど」
「全く〜 分かって無いんだから〜 雑誌には従わない、私の服装を見てみな」
「いやだからダサいんですけど」
あ、そうだ。
もっとこの世界のこと知る必要がある
「じゃあ俺 図書館行ってきます」
「え〜 片付け手伝って」
「無理」
「ちょっと待って、君。図書館行くにはお金が必要なんだよ?」
「え、マジ?」
後で聞いた話だが、この世界では紙が貴重らしい。
ましてや、印刷技術の無いこの国では、本は全て手書き何だとか。
俺は図書館に行き、お金を払った。
「はい、丁度20銭銅貨頂きました」
「入場を許可します」
それから、扉を開け、中に入る。
おお、スゲー。
でっかいなオイ
なかなか豪華な造りなもんだ。
ちなみに、20銭は、まあまあ豪華な飯が買えるくらい。
日本で言ったら遊園地入れるぐらいだ。
結構するよな
俺はまず自分の首にある入れ墨みたいなのを調べた。
この世界で迷子になる前、朝起きたら突然刻まれていた。
思えばそこから異変が起きたんだよな。
おかげで自分の名前すら思い出せないし。
--
前に、うっかりネックウォーマーを外した時。
仲間に見られた。
「お、お前… それ」
「え、どうした?」
「お前、神様に喧嘩売ったのか?」
「何で?」
「お前、呪われてるぞ」
確か、みんな焦った様子してたな。
この模様は刻印「こくいん」と言うらしい。
調べた結果。この首元の刻印には、神様からの呪いがこもってるんだとか。
日本に居た頃。銀行強盗で殺人犯に殺されそうな母さんを助ける為に動いた時。
一瞬、自分の身体能力がとてつもなく上がった気がした。
それも、呪いの効果らしい。
実は、この世界に迷い込む前から呪われてた。
この首元の刻印は、人間に物凄い力を発揮させるらしい。
もしかしたら超能力を使えるとか。
その代わり、この刻印が首に刻まれると、寿命が減るらしい。
さらに、この力を使う度、代償として、もっと寿命が減るか、体の一部が機能しなくなるんだとか。
多分 後3回使ったら俺は死ぬ。
え?やばくない? 俺一回使っちゃったよ。
銀行強盗の時。
俺はさらに詳しく調べた。
それで、分かった事が。
俺の寿命は、後
数週間だった。
ドクッ ドクッ ドクッ
心臓がバクバクしている。
その時感じた俺の感情は。
ただこれだけ。
ヤバい
焦りの気持ち。
不安の気持ち。
怖い気持ち。
と、どんどん感情が蠢いている。
ヤバい…
図書館を出て、俺は走った。
今思えば俺は、ヤバいと感じた時、走り出す癖があるのかもしれん。
走ったって… 助かる訳でもないのに。
「はあ、はあ、」
「ぜえハア、ぜえハア」
俺はノアの町を囲む壁の門から出た。
門番の人が居たが、気づかなかった。
それくらい俺は焦っていたのだ。
--
どれくらい走っただろうか。
もう、夕方だ。
俺は疲れ切って地面に倒れた。
俺は、走るのが好きだ。
この世界に来る前は、俺は足が不自由だったので、走ったことがなかった。
それもあるが。
今走れるのは。
首元にあるこの刻印の影響だろう。
何か悩みがあった時、走って疲れた時には、悩みなんてどっか吹き飛ぶ。
だから、俺は走るのが好きだ。
「ふう、そろそろ帰るか」
よっこらしょっと体を持ち上げ。
起き上がった。
「ん?」
後ろに誰か居る・・・
俺はそんな気がして後ろに振り返った。
そこに立って居たのは、ローブ姿の少女。
「こんばんは、そして、さようなら」
な、なっ
何故だ。
おい、嘘だろ・・・
あのローブ、間違い無い 俺達を襲った殺人集団の物だ。
「何でここに居る。」
「何で俺の仲間を殺した・・・!! 」
「だって〜神様に言われたもん」
「は?」
バサッ
少女はローブを脱ぎ捨てた。
その少女は、ボロボロの白いワンピースを着ていた。
その白い布に、血が付いた跡がある。
その少女は、赤い目をしていて、口元にツギハギがあった。
髪は左右別々で色が違う。黒と、そして白色…
悪魔だ…
「へい、人間くん」
「あ!よく見ると可愛い〜顔! キスしちゃおかな♪ 」
何だコイツ変態か?
「得体の知れない奴の唇 興味 無い」
「え〜ひど!」
「ま、いっか」
「神様はお前の心臓が欲しいんだって」
「悪いね♪ ノーベルの為に死んで?」
「お前のその頭んネジはぶっ飛んでんのか」
クソッ 訳の分からんこと言いやがって。
「大人しく人間様の味方しろ!!」
「無理、」
「取り敢えず死んで?」
「お前… 誰に向かって言ってんのか分かんねえのか?」
「えっと〜 何処かの御えらいさん?」
「ただの一般人で〜す」
逃げろーーー
コイツは間違いなくヤバい。
俺は全速力で逃げた。
ガブッ
「は?」
「あ”あ”あ”あ”あ”ああああああああああああああああああああああああ・・・」
痛い…
激痛のする場所に目を向けた。
お、おい、嘘… だろ
俺の右腕が…
ムシャムシャ
少女の方に目を向けた。
その少女は、俺の右腕を食べている。
「お、お前… 」
俺はとっさに止血をした。
ステファに教わっておいて良かったぜ。
「あ、自己紹介まだして無かった…」
「僕の名前は爆食のゼロゲイン=エルザディアン」
「てなわけでヨロシク! 」
「あ、殺すのにヨロシク言っちゃった」
ヤバいヤバい
超痛い
そういえばガルムおじさんが言ってたな。
頭がイカれてるやつは大体強いって。
俺は逃げるしか無かった。
不味い・・・このままじゃ死ぬ
ヤバいっ 追いつかれた・・・
その時、俺は思い出した。
人がどうやって跳ぶのかを。
「新技のお披露目式といこうか」
よく意識しろ…
俺なら出来る…
その時、全身の血液が熱くなるのを感じ。
首元の刻印がバチバチと言う音か鳴った。
全身に雷が落ちた時の衝撃が与えられた。
この衝撃で足の骨が折れそうだ。
どおおん!!!
地面が割れる勢いで思いっきり跳んだ。
そのまま上昇し、やがて森の上に落っこちた。
「痛ってえ〜」
足が骨折したのか?
いや、大丈夫だ。ちゃんと動く。
「あ、見〜け」
背後から声がした。
「うわっマジかよ」
「ストーカーが」
危っぶね!!
俺はゼロゲインの攻撃をとっさに避けた。
と思ったが攻撃を喰らった。
俺の肩から血が出ている。
おそらくあの爪で攻撃したのだろう。
俺は木の上から飛び降りた。
そして俺は着地に失敗して膝を着いた。
マズイ… ゼロゲインが俺に向かって攻撃しに来た。
こりゃあ、死ぬな。
やけに落ち着いている。
相手の動きがスローモーションのように見えている。
手も足も出ない、完全なる詰み
終わった…
ああ、最後に、家族に会いたかったな。
俺は、死を覚悟して目を閉じた。
--
「うぐっ!」
な、何だ。掴まれている。
俺は、目を開けた。
「ガ、ガルムおじさん・・・!?」
「間一髪だったなあ、少年・・・」
「ハハハッ」
「助けに来てくれたんスか」
「取り敢えず逃げるぞ!」
「ちっ アイツ速いな、すぐ追いつかれそうだ」
ガルムおじさんは俺を抱えて木々の間を華麗に跳び回っている。
そして、何とか逃げ切れた。
「あ〜あ、逃げられちゃった」
「ま、いっか」
「腹減ったし戻るか」
そして、少女も姿を消した。
「よし、いいか、少年」
「今日は取り敢えず木の上で寝るぞ」
「了解っス」
「おそらくまだ奴は俺達を探しているだろう」
「町に入る時に奇襲をかけられるかもしれん」
「まずはここで安静にしとくぞ」
「まっ、取り敢えずご飯食うか?」
「あぁ、もらっとくよ」
もう日が沈んで真っ暗だ。
俺達はパンを食べた。
「人を見下ろしながら喰う飯はうまいな」
「ここ人居ねえだろ」
「ナイスツッコミっすガルムおじさん」
「いいか、少年 奴は物凄く速い。だから逃げるのは無理だ」
「じゃあさっき逃げ切れたのはまぐれってわけか」
「え、じゃあど〜すんだよ」
「なあ、少年」
「戦おうぜ」
「生き残るにはそれしか無い」
「あぁ、そうだな」
「一緒に戦って生き伸びるぞ」
俺とガルムおじさんは拳を合わせた。
これが男の友情って奴なのかな。
「もし、奴が悪魔だとしたら厄介だぞ」
「どういうことだ?」
「悪魔ってもんはなぁ、恐れられるほど強くなる」
「だから気をつけろ、悪魔は恐怖でどんどん力が膨れ上がる」
「いいか、少年… 敵に怯えるな」
「分かった」
「そういえばさ、悪魔って何だ?」
「お前さ、それ知らないって結構ヤバいぞ」
「ノアの方舟って知ってるだろ?」
「あぁ」
「世界に大洪水が起きた後、天使の慈悲で自然を蘇らせた」
「天使って言うのはいわゆる岩の巨人の事で、当時、見張りの天使って呼ばれてた存在だ、ある時、神を背いて人間に肩入れしたがために堕天使に見を落とした。」
「それが、時を経て悪魔となった」
「人々が悪魔を恐れているのは、かつて、神に逆らった存在だからだ」
「なるほど」
この話を聞いて俺は、気になる事があった。
あんまし関係無いかも知れないが…
「あの、ガルムおじさん。町とかに居る人間の形した化け物。明らかに普通の人間じゃ無い奴、あれって何なの?」
「マジか、そんな事も知らないのかアンタ」
「アイツらは亜人って呼ばれる存在だ」
「人間が7割、亜人が3割ってとこかな」
「ノアの町では特に亜人が多い、ここは亜人の町だからな」
「へえ〜、そっかあ」
「あ、そういやお前を襲ってた嬢ちゃん、亜人かも知れないな」
「まあ、亜人だとしても厄介さは変わらんか」
「え、何で?」
「亜人と呼ばれる存在は、産まれ付き悪魔の血を引くもの、いわゆる悪魔の血筋ってやつだな」
「後、魔獣{まじゅう}ってのは動物が悪魔に取り憑かれた存在の事を言う」
「そして、動物は絶滅したらしい」
「マジかよ」
「知らんかったわ」
へえ〜、そんな感じなのか。
「ガルムおじさん、アイツに勝ったら ほっぺにキスしてあげますよ」
「何だあ?急に」
「そっちの方がやる気出るだろ?」
「出るかアホ」
「人生初のキスがお前ってキツイわ」
「ま、約束な」
「なあ、ガルムおじさん、背中に付いてるサムライソード、戦いで使わないの?」
「あ? いいか、コイツはな、面食いだからイケメンしか使わしてくれないんだよ」
「え、じゃあ無理じゃん」
「大丈夫だ、イケてる爺さんでも使わしてくれる」
「え〜嘘っそだあ〜」
「ちっ、冗談だよ」
「この刀はもしもの時だけ使う」
「何故だ?」
「まあ、この刀は鞘に触れただけでも寿命が吸い取られる」
「え、マジかよ呪い刀かよ」
「そういう契約だからな」
「その代わり物凄い攻撃力がある」
「そりゃ大剣だから たりめえでしょ」
「いや、コイツは違う。まあ もしコイツを使った時に見てみなって。凄えんだぞ」
その後、俺達は明日に向けて作戦を立てた。
「よし、お前はもう寝ろ。俺は見張りをやっとく」
「分かったよガルムおじさん」
「後、ガルムおじさん。明日、頼むから死ぬなよ」
「フン、ガキは自分の心配だけしとけ」
俺は木の幹にもたれかかってから まぶたを閉じた。
そして俺は密かに祈った。
神では無く
精霊に
どうか、デットエンドに会いませんように。
Dead end
行き止まり




