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心世界  作者: rin極
第一章 子供編
5/48

第5話 「その日」


なっ何だ。


俺、生きてる。

刺されたとこ、痛くない。


俺は、呆然としていた。


はっ そうだ、逃げなくちゃ。

俺は、生き延びるんだ。


なあ、ザフィル、テュポン…俺、もうあんなヘマしないから。

勝って、みんなで、

未来で過去の話をするんだ。


よし、まずは落ち着け。

ゲロが出そうなほど緊張している。

ていうかもう、セーターにゲロが付いていた。

ママが作ってくれたスパゲッティさ……。


ガシッ


あ、危っ。

俺はとっさ男の腕を掴んで腹に蹴りを一発入れた。


そして走る。逃げる。

しまった……。

ナイフを奪っておくべきだったな。


ヤバいヤバいヤバい。


俺は人混みの中、走り続けた。

知らん人にぶつかっても気にしない。

こっちは命かかってんだ。


落ち着け、お父つけ。

だいじょうぶ、俺は強い。

夜が明けるまで逃げろ。

神様も見逃してくれる。


ハア、ハア、ハア、ハア……。


やった、やったぜベイビー。

逃げ切った。

そう、俺は、逃げ切ったのだ。

いつの間にか日が差し込んでる。


朝日がとても美しい。

それにしても、あんな深夜でも人がいっぱい居るなんて、どんだけ栄えてんだよ。

さて、ひとまず仲間と合流しやすか。



--



俺は、取り敢えずアジトに向かった.

そこには、緊急部隊の人達が集まっていた。


「あ、あの。お前ら誰だよ」

「どうしたんだい少年、私達は救助部隊のものだよ」

「えっと、その、ステファとセレヌンティウスは居ますか?」


俺が、質問していたら。

ある男が、近づいてきた。


「あなたは、ステファのお友達ですか?」

「お前!ステファを知ってんのか。今何処にいる・・・!!」


その男性は、少し黙った後。

口を開いた。


「付いてきなさい」


それだけ言って、その人は歩き出した。

俺は、無言でついていき、遺体が並んでいる場所で止まった。


 すると、その男性は、遺体にの上にかぶっている白い布をのけた。


お、おい、嘘だろ…。


ステファ、セレヌンティウス…。


「おい…」

「おい、起きろよ」

「お前ら、いつまで寝てんだよ」

「なあ、薬草とりに行くんだろ?なあ!早くしろよ…!」


「・・・・・・・」

「・・・・・」

「・・」


「おい、何で誰も起きてくれないんだよ」

「返事しろよ」


そうやって…俺は、いつまでも待った。

もう、目が覚めないだって…分かっていても待った。

でもさ、結局は起きてくれないんだよ……。


何でさ、お前らは俺の前から消えていくんだよ。


仕方なかったんだ!

俺はあの時、逃げるしか無かったんだ!


お前らだって、俺に逃げろとか言ってたじゃん。

信じて逃げて、結果この様だよ。


最後に…。

お別れの挨拶ぐらいしたかったな。

って、そんなの今更、もう遅いんだよ…!


「あ゙…あ゙うあ」

「あ゙あ゙あ、ああああ”ああああ”ああああ”ああああ”ああああ”あ !!!!!」


その日、俺は絶望を知った。


お前さ、自分のこと弱いって…言ってたよな。

何だよ、、、クソ強えぇじゃん。

くそかっけえよ、あんた。

でも、そんなお前でも、負けることあんだな。


こんなもんかよ。

結局、俺達はこの程度だったのかよ。


くそっ。

あんた…どんだけ不器用なんだよ。

伝わらねえよ。

お前らの思いは、一体何だったんだよ。


俺は、それから、何も考えられなくなった。

ただの絶望だった。


「ガルムさん、この子…今まずい状態です」

「私が面倒を見ます」

「はい、分かりました。後は頼みますよ、ガルムさん」



--



…気づいたら、俺はベットに寝かされていた。 


「君、やっと落ち着いたかい?」 


どうやら、俺は、三日間。

寝込んでいたようだ。


少し、落ち着いた気がする。


「お前、誰だよ」

「ステファの実の父だ」


ステファの父?


「えっと、ここは?」

「俺の家だ」


「何で俺がここに居る…」

「ははんっ、少年よ、安心しろ、気絶しやがったから、俺の家で面倒を見てやってんだ」


あ、そうだ。


「あの、ステファは家を出たんですか」


「そうだ。実は、俺も家出してな、ここに来て妻と結婚し、あの子が生まれた。 俺が家を出たのは父に叱られるのが嫌だったからだ。 だから、俺はあの子には叱らないようにしたいと、考えたんだけどな。あの子を優秀な子にしようって、俺はそれしか考えていなかった。俺は、自分の息子の翼を…切り落とそうとしていたことに気づけなかった。 だから、あの子は家を出ちまった」


「そうなのか、でも、ステファは家出したこと気にしてた」


「それは無ェよ。あの日にした喧嘩、きっとあの子はまだ怒ってる。 時間で解決は出来ない・・・ 出来たとしても、それはダメなんだって、分かってはいた。 だけどよ、結局は謝れず、あの子が先に死んじまった。言葉にしてって言ったこと」


ガルムは頭を抱えた。

涙を堪えきれずに、歯茎に奥歯が食い込んだ。


「本当に…あの子には困らせてばかりだ。ごめんなって、繰り返し謝ったって、もう許してくれないよな… 今更だけど、あの時もう気づいたんだよ。ただ横にいて、くだらない話を。 どうすれば良かったのか、分からない… 答えが何年後になったって…」


「俺は… !! あの子と一緒に居たかった・・・・・・!!!!」


後悔。

とてつもない後悔が、彼の言葉から滲み出ていた。

だいの大人が泣くところなんて始めて見たもんだから、身に沁みて思った。


大人になっても、泣くんだな。


「あ、すまん。取り乱しちまって。年を取ると涙腺が弱くなんだ・・・」


そうか、そうだよな

辛い思いをしているのは、俺だけじゃ無いんだ。

そう、思った。


でもさ…。


「何でだよ…そんなふうに思ってたのなら、だったら何で!今まで謝らなかったんだよ・・・・・・!!!!」

「もう…死んじまってんじゃねえかよ・・・・・・!!」


「それは、俺には無理だった」

「したかった、言いたかった、出来なかった手遅れだもう死んじまったよクソッ」

「そうかよ」


「お前も、辛いだろ」

「俺に、心の念をぶちまけてみろ」


「あんたに、なんか言って、それで、何が変わるんだよ」

「聞くだけなら、俺にも出来る」


確かに俺は、誰かに聞いてほしかった。

辛い事。

俺の不満、怒り、悲しみ。

己の運命に、心底うんざりした。


俺は黙秘した。

長い事そうした。

見知らぬ奴に、俺の心根は、知られたくなかったし、言いたくもなかった。

そっぽを向いて、ベットにくるまって、でもそうしてるのも恥ずかしくて、無力で。

ただ悔しくて。

うずくまって。

消えたいって思った。

さっさと出ていって欲しかった。


俺がずっとそうしていても、ガルムはずっと俺のそばにいた。

やがて俺の方が根負けした。


「俺は… 」

「・・・・・」


自分の手のひらを上に向けて眺める。


「俺の手のひらに残った大切な何かが・・・」

「消えていくんだよ」


驚くほど、自然に、すらすらと言えた。


「…どんどん消えていく・・・ 俺の大切な記憶が・・・・」

「もう一度、思い出す為の時間が・・・ 俺にはもう無いんだよ・・・」



「確かに俺は託された・・・!! 」

「アイツらに・・・ でも俺は、アイツらが居なきゃダメなんだ・・・」

「俺一人じゃあ… 何も出来ないんだよ」


ステファの父さんは、俺の話をまじめに聞いてくれた。


「なあ、お前の大切な何かが消えていくなら」

「自分の大切な記憶が思い出せねえ、っつーなら」


「信じろよ」

「仲間なんだろ」


「もし、お前が、たとえ仲間の事を忘れたとしてもよ。お前の仲間は、ぜってえにお前を忘れないだろう」

「お前の仲間が自分に託したように」

「お前も、次の自分に託しなさい」


「お前の大事な記憶を思い出すための時間は」

「まあ、たっぷりあるんだ。ゆっくり思い出せばいい」

「こっから始めろ」


 この半年で、俺は…自分の家族を思い出さない日が増えてきた。

いや、むしろ自分の家族のことが思い出せなくなってきた。

もう、自分の母の顔を思い出せない。


速すぎるよな。

たった半年で忘れるなんて。


だから、怖かったんだ。忘れるのが…。

自分の家族と、仲間の事を。


そうだな、信じるんだ。

仲間を。


忘れるわけ無いだろ。

俺の仲間を。


俺は、もう死ねないな。


大体どんな顔して逝きゃいいってんだよ。

自慢出来ることなんて一つもないのに。


こうやって、いろんな事が終わっていくんだな。

いや、始まってすらいないか。


だから今日は、ありもしない未来について考えた。

俺の知る限り、時間ってやつは、戻ってくれたりはしない。

だから、あの日々は戻らない。


まあ別にそんなこと、当たり前なんだけどさ。


だからこそ今日は、あの日々を思い出して笑おう。

今日だけ、今日だけは、思い出して笑おう。


なあ、ステファ、あの時に言った言葉。


「残念な事に、食品用のクーポンじゃ、お前のオムツは買えねえよ」


あれ、どういう意味なんだ?

もしかして、俺は、赤ん坊に見られていたのか?


なあ、セレヌンティウス、あの時 俺に聞いたよな?


「なあ少年、欲しい物全て手にできる機会に出会ったなら、お前はどうするよ。」

「たった一つのチャンスで、もう二度と現れないとして」

「君は、それを掴むか? それとも、逃げちまうか?」


たしか俺はまだ答えてなかったよな、俺の答えは、掴むぜ。

そのチャンス。


なあ、テュポン… あの時、俺に話してくれたこと。


「太陽が沈めば、凍える寒さがやってくる」

「そしたら分かるんだ、冬がやって来たってな」

「ビトン・ロアスのベルトの為なら、やらかす野郎がいる。奴が知っているのは、それだけ、他は何も知らない」

「みんなに見せてやろうってさ、家族の事なんて、考えずによ」


その話はさ、テュポンがよくしてくれた。

なあ、奴って誰なんだよ。


いつか、そっちにいった時には、ちゃんと教えてくれよ。


ザフィルの奴は、特に無いな。


いつもしょうもない話してたよな。

うんちは何で臭いんだ?とか。

真面目に聞いてきたからあの時はマジで驚いたよ。

糞タイムかよ。


なあ、みんな。


天国で、

いつまでも俺を待ってんだろ?

もし… 俺がヘマして死んだら。

そんときは笑ってくれ。


じゃあな。



For the day to come someday

いつか来るその日のために

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