第42話 「死闘を経て」
同盟を組んだその後…。
「で?何を話してたわけ?」
「ああ、まあ…早い話俺アイツラと手を組んだ」
「なんで?」
必要ある?と疑問そうな顔をしてムガロは俺に聞く。
「いずれ俺達は協力し合わなきゃならなくなると、あの女軍師は予測したんだ」
悪い話ではなかった。
どうしてそうなったのか、理由も聞いた。
ソルジャーというのはバディを組んでそれぞれが各々の仕事をこなすものだが、ときに別のバディ同士で、合同の仕事をすることもある。
共同作業、それが出来るかどうかを見る試験は必ず行われるとローエン・ファイドは雄弁に語った。
バトロワが終盤を迎える。
闘技場の端っこがどんどん迫ってきていた。
ものすごい圧迫感を感じるぜ。
ステージの縮小は淀みなく進み、いよいよ選別者達は行き場を失った。ステージ内の人工密度が急激に上がり、場内のボルテージはMAXに。
闘技場の舞台の周りに設置された動く鎧(攻撃的な危険すぎる銅像)から逃げてきた選別者たちは、60人弱で守りの陣形を組んだ俺達の集団を見て絶望する。
「どういことだ!」
「何だよおおおお~~~そおうれっ!ナンナンだよおお~、コレッ!え!?」
ゴージャスな悲鳴を上げる奴が現れた。
「なんでこんな人数で組んでやがんだ」
「終わりだ、どこに逃げればよいのだろうか!」
「逃げ場なんざねえってばよ!」
逃げ場を失った選別者が更に追い込まれた先では、俺達が待ち構えた。
振り返ってみれば、機械的に惨殺を繰り返す動く銅像。板挟みにされた選別者は、みるみるその人数を減らしていく。
というか、すり潰されていった。物理的に……。
「ずるいぞ!お手々を組みやがって!」
「くそ!嵌めやがったな♡」
「ずるい!?アハハは!そちが馬と鹿の馬鹿野郎なだけやろが!」
その時、突如として試験終了のアナウンスが闘技場内で流れる。
「試験終了~~~~!!!!!!」
「直ちに戦闘行為をやめてちょ~だい…!」
「みんないい子だろ、繰り返します、選別者の皆様は、直ちに戦闘行為をやめて頂戴!もしも戦闘行為を続行したものはお命頂戴!」
試験は終わった。
「終わった…はあ、よかった~生き残った…」
モニカが息を吐いて軽く安堵する。
それを見てローエン・ファイドは笑っていた。
「皆様、お疲れ様のところ大変心苦しいのですが、その場に転がっている死体をステージ中央に集め、まとめて処理してください!サボったものは減点します」
「死体処理を俺等にやらせるのか!?こういうのは運営がやってくれもんじゃねえのか?」
「苦と楽、苦楽を共にした玄人志向がソルジャーには必要ですよ」
女軍師は推論を言った。
「ソルジャーってのは、自分のターゲットの情報集めて下準備、実行に移すのを全部自分でやる。殺った後の処理まで含めたな」
「つまりソルジャーは仕事の自己完結を必要とする。死体処理ぐらいできなきゃ、話しになんないってことさ」
「ねえ、何体か貰って良い?」
ムガロが死体を指さしてヨダレ垂らしながら言う。
「好きにしろ、そういやお前、飯食ってなかったな」
「さて、四の五の言ってないでやりますか」
そして俺達はそこからさらに半日かけて6000ほどの死体を処理した。
かなりの重労働であった。
その後、ムガロの美食レポートが始まった。
【人間ソムリエ】
「ムガロさん、一番美味しい人間の肉はなんですか?」
「う~ん、やっぱ子どもの肉が旨いかな」
「いや、油の乗った30代男性も捨てがたいわね」
「女は?」
「20歳以下に限りね」
「それはどうしてですか?」
「女の賞味期限は短いのよ」
--
バトロワの報酬で100ポイントを貰った。
一人も殺してないローエン・ファイドはボーナス点で200点貰ったらしい。
くそ、やっちまった。
現在の得点数。
ショウ「211」
ムガロ「166」
ソーマ「571」←やりすぎ
今回の試合で405人が行方不明にったそうだが、全てソーマの仕業である。
壮絶な生き残り合戦を繰り広げたバトルロワイアルの次は、一対一で戦う決闘方式の試験だった。
一対一、ワンオンワン、つまりサシでやれってこと。
一通りワンオンワン試験の説明は受けた。
ルールを説明する。
このゲームは、3回勝つ必要がある。
そして、棄権は一回。
まあ普通の人はそう何度も殺し合いは出来ないだろう。
だから、3回連続で戦って重症を負わずに勝たなければならない。
こうして見ると、ものすごいハードだな。しかも、コロシアムであんだけ殺し合った後にすぐこれだ。
まあ確かに、半分傭兵みたいなソルジャーなら、こんぐらいできなきゃ駄目だよな。
俺たちが実際に戦う場所、縦横50メートルほどの正方形方リングだ。
リングアウトで失格のルールはもちろん存在する。
そして、ステージには障害物や、地形の凹凸などが一切ない人工的な場であり、実に戦いやすい環境だといえる。
もはやスポーツだな、これは。
見られるのは純粋な戦闘技術としての体の扱い方、思考力もとい心理戦などの駆け引き、といったところだろう。
「おお、すごい会場の数だ」
「200~300あるよ」
ソーマが即答する。
「すごいな、なんで分かるんだ?」
「即死性の高い競技だがら、長引くことはまずない。試合時間は、平均1分から3分ってとこだ。そして、当然だけどこのゲームは一試合ごとに勝者が一人、敗者が一人出る。敗者の中に戦闘不能者(再起不能)や死亡・降参・失格のいずれか」
「敗者の内訳は、見た感じ死亡率が2割、戦闘不能者が3割、降参3割、失格(降参3回超過、棄権2回目など)が2割だ。それを考えると、最終的な生存者は2000人ぐらい?」
「まあ、今までのソルジャー試験の傾向から見れば、だいたいそのぐらいの人数まで絞るのが目標になると思う。それを一日でやるには最低でも200の会場がいるって寸法だ」
これは驚いた。
この計算を今の一瞬で…。
「お前、そんな賢かったのか…」
「僕こういうのは得意だよ」
「……3勝到達者、つまりこの試験を通過できるのは1000人~1500人くらいかな」
【ムガロ、1試合目、瞬殺される】
概念系能力者とマッチ。
「あんた、弱そうっ」
ムガロが相手の姿を見て嘲笑う。
「見た目で判断するのはどうかと思うぜ?」
その通りだぞ、ムガロ君。
そいつはポケットから何かを取り出した。
ムガロは眉をひそめ、飛び道具か何かと警戒する。
「サイコロ…!?」
「そう、サイコロだ。コレが俺の武器」
「はははっ、それがあなたの武器?」
「侮っちゃいけないよ」
そいつはサイコロを頭上に投げ、キャッチする。
出た目を確認した。
ニヤリと顔を歪ませる。
「なによ、何も起こらないじゃない」
「今日の俺はツイてるぜ、コレで『勝てる』」
「は?私に勝てる?冗談言ってんじゃ…」
言いながらムガロはぶっ倒れた。
彼女の命は消えていた。
はて、何が起こったのやら。
説明しよう!
彼の能力は概念系即死能力H型。
『ダイス・イヤ・サイコロデス』
サイコロころころ転がして、出た目で相手の死に方が決まる能力。
人類最強のリンゴクでさえも殺せる危険極まりない能力だ。
一の目が出た場合は、『即心臓停止』or『脳みそ爆発』 「心臓が締め付けられる快感を味わうか、脳みその味噌の部分がかき乱されて気持ちよくなって死ぬかのどちらかだ。」彼にとってはノーリスク、つまりラッキー。
二が出たら、『絶頂即死』、「相手を性的に絶頂させることができれば即死」脳の神経がショートして死亡(快楽の果に逝く)、これはハズレ。
三、『恥ずか死』、「自分が最大級に恥ずかしい事を言うorすること。相手に「うわあ…」と思わせる必要がある。もしくは、相手を人生最大の恥ずかしい目に合わせる」死ぬほど恥ずかしい羞恥心による心臓発作。この目は、相手によっては当たりっちゃ当たり。
四、『言わせるゲーム』、「自分が設定した単語を相手に言わせることができたら即死」言葉を発した瞬間、快楽が極限を超え、脳がショートして死亡。※ムガロは『勝てる』と言わされて死んだ。
五、『純潔の崩壊』 「相手にこんなの『初めて』と思わせる」純潔を奪われた衝撃で肉体が耐えられず、死ぬ。かなりの衝撃的な始めてじゃないとだめ。難しい…。
六、『俺が死ぬ』 彼が最も恐れる目、相手じゃなくて自分が死ぬ。快楽とは反対の苦痛を味わって死ぬ。出たら最後の超リスキー。ロシアンルーレットみたいな感じ。
——以上。
死んでも生き返るからよかったね。ショウが当たってたら普通に死んでたよ。
「なんか気持ちよかった…」
「え?まじで?」
【ムガロ、2試合目、ちょっと善戦したのちあっさりとやられる】
今度の相手は目が良い剣士だった。
ムガロは前回の敗北から学び、初っ端から銃を撃つが、なんとコレをあっさり避けられる。
一瞬で間合いを詰められ大ピンチ!
ムガロはすかさず彼の剣を避けながら大鎌を一振りして威嚇する。
一旦落ち着こう。
互いに距離を取って、もう一度対峙する。
相手はムガロの重心の位置を見ていた。
ボディフェイントを入れ、ムガロの重心がズレた瞬間、その逆をついて動く。
ムガロはバランスを崩して尻もちをついた。
気付いたら剣を向けられていて絶体絶命。
ヤバいと思ったから氷我の力を使って相手を凍らせた。
一息付いて安心した。
っが、ムガロの首はいつの間にかハネられていた。
ムガロの負けである。
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俺はやけに苛ついているムガロに話しかける。
「…負けが込んでるな」
「ああ糞っ、ムカつく」
ムガロはだいぶイライラしていた。
「あ、次俺か…」
俺の名前が呼ばれ、ついに俺の初戦となる戦いが始まろうとしていた。
「ソーマはもう通過してさっさと先行っちゃったし、俺達も早いとこ上がろうぜ」
「・・・・・」
「おい、なんだよその顔は」
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俺は目の前の相手に集中していた。
奴は目を隠していた。
相手は能力者か?魔法使いか?それとも……なんだ?
俺は相手と目が合わなければそいつを見抜けないんだ。龍の目〝日眼〟の唯一の弱点である。
「お前、なんだ?その眼帯は」
「・・・・」
知りたがりの俺はまず聞いた。
「・・・・」
聞いたところで何も答えちゃくれない。
その女は終始一言も喋らなかった。
彼女はゆっくりと、その眼帯を手で取った。
初めて目を合わせるその瞬間に、俺の肉体に衝撃が走る。
眼帯の奥に隠されていたその目には、とても奇妙な模様が描かれていた。
「・・・・!?」
その目を見た瞬間、俺の全身が破壊された。
正直、何が起きたのかが分からなかった。
『破壊の目を持つ女』ドラゴンタトゥーのそれが今回ショウが対峙した相手であった。
「〝修繕〟!」
かなりのエネルギーを消費する代わりに通常の倍以上の回復力で全身を治す。
「あ゙あ゙ああああああ!!」
治せなかった。俺の眼球、迸る視神経。
目があったらとかじゃなくてただ単純に、その女に見つめられるだけで俺の身体は破壊された。
やばい、このままじゃ死ぬ。
なかなか死なないゴキブリの如く生命力の俺を見てその女は心底驚嘆する。
(なんだ…?この男。まだ死なないのか?キモッ!肉体が壊されたそばから瞬時に回復している。化物級の回復力だ。なんてタフな野郎だ)
「ぎぎぎぎぎぎっ!」
今までに体験したことのない痛みを味わいながら、なんとか思考回路を繋いで微かな電流を流す。
すごいよ俺!
「あああああああああああああ!!!!」
俺はなりふり構わず、全力でブレスを吐こうとした。
それを見た審査員が、なにか不味いと判断した。
嫌な予感がしたから背筋に冷や汗がぶわっと滝のように流れた。
「そこまでだ!やめろ!?」
んなこと言われても、今更もう止めらんねえよ。
「会場をぶっ壊す気か!?」
その審査員は叫んだ。
俺は雄叫びを上げる。
痛みで俺を苛つかせた怒りの咆哮。
「うおおおおおおおおおお!!!」
暴発する寸前だった超高出力ブレスを、俺は絞り込んであの女に向ける。
覚悟しやがれ!
俺はそれを放った。
女はそれを見て、それを破壊する。
(なんだ、この火力は…?人間が扱える力を超えている)
「・・・ン?」
(消えた…?)
「がッ!?」
俺は彼女が俺のブレスを打ち消すのに夢中になっている間に後ろを取る。
「ようはてめえに見られなきゃ良いんだろ?」
ショウは女の背後に周り、首筋に己の鋭い爪を押し当てていた。
(いつの間に私の背後に?はっ、私があのドラゴンのブレス並に馬鹿げた火力に目を奪われていた、その隙にか)
「降参しろ」
「・・・・・」
普通に殺すより、こっちの方が勝ったって感じするよな。
「参った」
「ふふっ…」
コレが勝利の優越感。
とりあえず大惨事にならなかったことに安堵した審査員は、試合終了を彼らに告げる。
ショウの初戦は無事、勝利に終わる。
--
二回戦目、今度の対戦相手は弱そうな見た目をした青少年だった。
始まった瞬間に顔面を思いっきり殴ったら吹っ飛んでリングの外にいった。
一秒もかからずに俺が勝利した。
まじで雑魚だった。
マジで何だったんだアイツ。
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三開戦目も無事通過、特筆すべきことは無いので割愛させて頂く。
まあ普通に勝ったよ。
これで無事に三勝到達、この試験もこれでおさらばだ。
残されたムガロは頑張ってくれ。
【その後、ムガロはショウが二回戦目で瞬殺した相手と当たり、同様にそいつを瞬殺した】
それからはムガロは連続で勝ち残りこれでショウと愉快な仲間達は無事に試験を通過したのであった。
ショウ「511」
ムガロ「466」
ソーマ「871」
ソーマが圧倒的リード。
Yeah
イェーイ




